脱炭素社会の実現に向けて、次世代蓄電池の開発が進むなか、「全樹脂電池」と呼ばれる次世代型リチウムイオン電池の量産工場が5月25日、福井県越前市に開所した。全樹脂電池の量産は世界初だという。10月に本格稼働し、太陽光発電や風力発電などの蓄電池として用途拡大を目指す。
次世代型リチウムイオン電池として注目される全樹脂電池を開発するスタートアップ企業のAPBと、APBに出資する京都の化学メーカー三洋化成工業は、世界初となる全樹脂電池の量産工場を越前市内に完成させた。
全樹脂電池とは、リチウムイオン電池の電極に使われていた金属をすべて樹脂に置き換えたもの。従来のリチウムイオン電池に比べてコンパクトかつ、2倍以上の電気容量があり、発火リスクが低く、さらに正極材などをリサイクルしやすいといった特徴を持つ。
APBを2018年に設立した堀江英明社長は、日産自動車で「リーフ」の電池開発に携わった経歴を持ち、全樹脂電池の開発を進めてきた。2020年12月には第3回目の資金調達を成功させ、累計100億円を調達。この資金をもとに、全樹脂電池の量産工場を建設・運営していくという。
工場の生産能力は年間200MWhでスタートし、3GWhまで増産する計画を持つ。
量産する全樹脂電池は、すでに川崎重工業が開発した海底ケーブルを検査する無人潜水艇の動力として採用が検討されているほか、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの蓄電池として需要が見込まれている。
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