まず、CO2排出量から見ていきたい。
出典)温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイトより
こちらは2018年時点の数字だが、見ていただければ分かるとおり、1位中国、2位アメリカ、3位インド。この3ヶ国で世界の温室効果ガス排出の約半分を占めている。
国ごとの排出量を基準にすれば、これらの国々が受賞するべきだろうという意見はもっともだ。
実効的に気候変動対策を推進するためには、これらの国々がしっかり排出削減をしないといけない。
だが、こうした意見が出てくると、「いやいや、そもそも中国などは人口が多く、一人当たりで見るとそんなに出していないんだ」という反論が必ず出てくる。それでは一人当たりのCO2排出量を見てみよう。
出典)温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイトより
これは主要国の比較の図だが、日本は一人当たり年間8.5トンのCO2を排出している格好だ。
他国はどうかというと確かに中国は一人当たりに換算し直すと低いのだが、アメリカは15.1トンと日本の約倍。脱炭素先進国の顔をしているドイツも8.4トンとほぼ日本と同等だ。一人当たりの排出量でいえば、ロシアや韓国は日本よりも多くのCO2を排出している。
総量でも一人当たりでもアメリカ、ロシアは日本より上の数字になっている。
では、削減目標が足りないのか。日本は2050年カーボンニュートラル宣言をしたが、これは欧州、米国などと同じ年限の目標である。目標年限にいたっては中国、ロシアは2060年目標、インドは2070年目標だ。
2050年目標を引き合いに出すと、直近の目標が弱いという声が出てくるのだが、2030年目標に関しては以前解説したとおり、日本政府はかなり無理をして、2030年で2013年度比46%減という数字を今年出したところである。2030年について、アメリカや欧州は50%を目安にしているが、そこまで大きな差があるとも思えない。
加えて、石炭火力について日本はかなり批判をされてきた経緯があるが、こちらについてはどうか。過去の石炭火力輸出支援の方針については筆者としても相当ネガティブだが、今年G7で完全にその目は封じられ、先般発表したエネルギー基本計画でも、もう政府支援は行わない旨の記載がされた。
渋々であったことは間違いがないのだが、とはいえ、「もうやりません」と観念したわけであり、今年のCOPでは、大きなマイナス材料にはならないだろう、と個人的にも思っていた。
そもそもCO2を最終的に出す側だけが批判されるのもおかしい話であり、原油生産国や石炭産出国などが批判されるべき、というのもまた、正論である。
このように見ると、多くの人々の「他に受賞する国があるのではないか!」という指摘は、至極もっともではないか。
だが、この点に関しては、そもそも報道の仕方にも由来する誤解が生じてしまっている。そこで次に化石賞にまつわる大いなる誤解について解説したい。
化石賞にまつわる大いなる誤解とは・・・次ページ
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