2020年11月6日、EC(欧州委員会)は、EUの国家援助規制に基づき、ルーマニアにおける再生可能エネルギー源(RES)のみを利用した地域暖房システムの建設および改修を支援する政策スキームを承認した。約1億5,000万ユーロの支援を通じて、地域暖房システムの燃料を化石燃料からバイオマスなどに転換していく。
ルーマニア政府は、地域暖房設備および配電網の建設および近代化(後者については投資総額の最大20%まで)に対して、最大およそ1億5,000万ユーロ(約185億円)の公的支援を提供する計画をECに通知しており、今回、その認可がおりた。公的支援は、ルーマニアが管理するEU構造基金の資金で賄われる直接補助金の形で行われる。
既存の地域暖房システムは、主に化石燃料である天然ガスや石炭を燃料とするボイラーで熱を供給している。しかし、気候変動対策として脱炭素化が進む中、熱需要においても再生可能エネルギーの利用が望まれている。
今回の支援は、熱源を化石燃料から再生可能エネルギー(バイオガス、バイオマス、地熱など)による熱生産への燃料転換を可能にし、熱量換算で合計60MWまでの地域暖房設備への投資を支援することを目的としている。
このスキームは2023年まで実施され、温室効果ガス排出の削減量は、最大48,000トン(CO2換算)、さらにその他の汚染物質の削減につながると期待されている。
ECが2020年1月に発表した欧州グリーンディール投資計画では、気候中立経済への移行に貢献する地域暖房の可能性を広げるために、加盟国が地域暖房発電に対して認められる支援の上限額について、柔軟に対応できるようになっている。ルーマニアは、欧州グリーンディール投資計画で導入されたこの柔軟性を利用して、地域暖房発電の建設・近代化投資に対する支援を設計することを決定したものだ。
競争政策を担当するMargrethe Vestager EC上級副委員長は「この1億5,000万ユーロのルーマニアのスキームは、地域暖房システムの建設やアップグレードを行うための投資を支援するものです。これにより、グリーンディールの目的に沿って、化石燃料によるエネルギー生産から再生可能資源による熱生産への転換が促進されます。この措置は、欧州グリーンディールの投資計画によって可能になりました。気候変動に左右されない経済への移行に貢献する地域暖房を促進するために、同投資計画は、EUの国家援助規制を順守しながら、加盟国が地域暖房発電への支援を行うことを柔軟に認めています」と述べている。
(Text:高森徹夫)
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