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中国が変電所設計で3Dモデリングを駆使、企画策定を進め、全土でデジタル・ツインを推進

中国が変電所設計で3Dモデリングを駆使、企画策定を進め、全土でデジタル・ツインを推進

2020/10/13

エネルギー分野のデジタル化というと、VPPやP2P取引のようなエネルギーテック事業のイメージがあるが、建設の分野でもデジタル化は威力を発揮している。中国では3D設計の規格の策定を通じて、大幅な建設コストの削減などを実現している。この取り組みについて、日本サスティナブル・エナジー株式会社の大野嘉久氏が紹介する。

3Dデジタル・モデリングで建設コストを大幅削減

中国国営の送電最大手「国家電網」は、変電所の建設や管理をデジタル化するために設計を3次元で行うための規格づくりを進めており、そのパイロット・プロジェクトとして湖北省武漢市にあるMiluo 220kV変電所に1億2,000万元(約18億円)が投じられた。

同変電所は2019年5月に運開したばかりの新しい設備。建設から運転、そしてメンテナンスに至るすべてにおいて、3Dデジタル・モデリングが採用された、中国で初めての案件となっている。従来の2次元設計にもとづく建設計画エンジニアリングと比べて、大幅なコスト削減や効率化が実現できたことで、今後の中国における変電所建設のモデルとなっている。

このMiluo地区では電力需給が逼迫していたため、国家電網は短期間のうちに人口が過密した都市部に新しい変電所を作る必要に迫られていた。しかし従来の技術では、周辺を住宅などに囲まれている中で、16万人に電力を供給する220kVの超高圧変電所を安全に建設することが困難であることが判明した。

そこで3D設計にもとづく工事を進めることとなった結果、従来の2次元による設計と比べて、必要面積が22%(0.94ha)縮小できるようになった。建設に伴い撤去される住居が6軒も減ることとなり、また配線レイアウトの最適化などによって、コストも259万元(約4,000万円)も削減することとなった。

変電所の課題

  • 課題① サイトが都市部にあるため、住居の撤去も余儀なくされるほど敷地が狭い
  • 課題② 屋内型2階建てのビルであるため、屋内のケーブル配線が複雑になる
  • 課題③ 引き出し線のレイアウトも困難

https://www.bentley.com/en/project-profiles/hubei_miaoshan-substation

「デジタル・ツイン」がもたらす建設技術力の底上げ

このプロジェクトにおいて大きな効果をもたらしたのが、3D設計によって実現される「デジタル・ツイン」である。というのも2D設計から3D設計へと変わることで、ただ図面が立体的になるだけでなく、実物をコンピューターによって再現することで、実際の稼働状況を正確に予測できるようになるからだ。

これにより、シミュレーションの精度が各段に向上し、最適な機器や配線のレイアウトを割り出すことができるようになった。

例えば、デジタル・ツインのシミュレーションで計算された鉄骨枠の誤差は、図面と完成した変電所の差を1%以内に抑え、関連する材料費を12万元(約186万円)も削減することができた。さらに地下ケーブル室の工事では、同じくデジタル・ツインにおけるシミュレーションによって設計ミスをすべて事前に修正していたため、現場での設計変更が1件も起こらず、工事日数は30日も削減された。

加えて3D設計では現場での作業効率が著しく進歩した。というのも図面は現場においてタブレット型の端末で確認できるうえ、画面上で操作すれば上空や横などから見たアングルから、あらゆる設備の細部まですぐに拡大することができる。また従来の図面は白黒の場合も少なくなかったが、3D図面は適切に色分けされており、設計・工事・検査・運営など様々な場面において作業の質が向上できるようになっている。

表示方法も電気配線図面、220kVケーブル配線図面、110kVケーブル配線図面、建築用図面、排水管図面など自由に切り替えが可能となっており、且つ変更があればすぐに全員の端末で反映されるので、情報の共有という観点からも大きく進歩したと言えよう。紙ベースでたくさんの図面を持ち込む必要もなく、作業で汚れたり破れたりすることもないので、中国の最新工事現場は20世紀と比べてとてもスマートになっている。これを中国全土へと展開するようになるので、今後は変電所建設の技術力が大きく底上げされることになるだろう。

期待されるスマートグリッドの系統解析への応用

Miluo変電所のエンジニアリング、管理を入札で獲得したのは、パワーチャイナの子会社である「湖北電気エンジニアリング社(Hubei Electric Engineering Corporation、HEEC)」だが、3D図面の制作やデジタル・ツインにもとづくシミュレーションなどは、すべて米国ベントレー・システムズ社が開発したソフトウェアで作成されている。

このベントレー・システムズは3D解析の世界的な大手だが、今回のようにゼロからの設計のみならず、既に完成した設備の3D図面も作りあげる技術「ContextCapture」を開発し、米国パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック・カンパニー(PG&E)は、変電所の改修工事に役立てている。

完成した設備の3D図面を作りあげる方法とは、地上の機材だけでなく、ドローンを飛ばしたり、昇降機を使って設備に関する画像データを取得し、ポイントクラウド(点群データ)を作成することでテクスチャマッピング(立体を構成する多角形の表面に特定の素材の見た目を模した画像を重ね合わせて表示すること)を完成させ、自動データ処理によって3次元の図面を作りだすやり方だ。

従来の2次元図面から3次元図面を作ろうとすると、人為的なエンジニアリングに大きく依存することになり、長い時間がかかるうえ不正確なものになるが、このContextCaptureは実物のデータをもとに3次元図面を自動的に作成しているので、品質の差は歴然であり、今後は国際的にこうした3D図面にもとづくエンジニアリングが主流となるであろう。

デジタル・ツインは今回のような変電所のみらず、再生可能エネルギーの分散電源を多用した系統解析でも大いなる威力を発揮するので、スマートグリッドの発展に寄与してゆくことが期待される。

大野嘉久
大野嘉久

経済産業省、NEDO、総合電機メーカー、石油化学品メーカーなどを経て国連・世界銀行のエネルギー組織GVEPの日本代表となったのち、日本サスティナブル・エナジー株式会社 代表取締役、認定NPO法人 ファーストアクセス( http://www.hydro-net.org/ )理事長、一般財団法人 日本エネルギー経済研究所元客員研究員。東大院卒。

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