昭和電工 化学メーカーの脱炭素は半導体材料で成長、モビリティで進化 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(16) | EnergyShift

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昭和電工 化学メーカーの脱炭素は半導体材料で成長、モビリティで進化 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(16)

昭和電工 化学メーカーの脱炭素は半導体材料で成長、モビリティで進化 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(16)

エナシフTVの人気コンテンツとなっている、もとさんとやこによる「脱炭素企業分析」シリーズ、特に好評だった企業事例を中心にEnergyShiftではテキストでお届する。第16回は、半導体材料で成長し、新たにモビリティ部材でさらなる成長を目指す、昭和電工を紹介する。

エナシフTV「脱炭素企業分析」シリーズ

株価と業績

昭和電工という社名は、電機メーカーのようだが、実際は化学メーカーだ。近年は半導体材料での事業が注目されてきたが、さらに2020年度はモビリティなど新しい分野を拡大した。

早速、株価を見てみよう。

2020年秋以降、それまで下落傾向だった株価がやや上昇傾向に転じたが、2021年6月以降は再び下落傾向となったあと、9月に入り、わずかに上昇している。

株価のピークは2018年であり、現在の株価はピーク時の半分となっている。2018年度決算(12月決算期)では過去最高利益を記録したが、2020年度には赤字に転落したことが、株価に反映されているのかもしれない。

事業内容だが、石油化学を筆頭にさまざまな化学品をはじめ、セラミックスや電極などの無機製品、アルミニウム、半導体材料やハードディスクなどを幅広く取り扱っている。

2020年度の業績は売上高が9,737億円で、営業利益はマイナス194億円、前年比で増収減益となっている。

セグメント別の業績は次のようになっている。

石油化学関係の売上高は1,934億円だが、573億円の大きな減収、化学品の売上高は1,558億円だが、これも17億円の減収だ。

エレクトロニクスの売上高は974億円で、こちらは10億円の増収となっている。

アルミニウムなど無機の売上高は829億円だが、1,472億円という大幅な減収となっている。そのうちアルミニウム関連は、売上高は802億円で174億円の減収となっており、今後、製品事業など一部を除き、売却が予定されている。

減収となった事業が多い中、大幅な増収をもたらしたのが、新規事業となる昭和電工マテリアルズという子会社で、売上高が3,027億円となっている。

昭和電工マテリアルズは2020年6月、日立化成を完全子会社化し、昭和電工マテリアルズと改称した会社だ。この会社の半年分の売上が3,027億円ということだ。ただ、買収等に関わる費用が大きかったため、決算では赤字となった。

昭和電工マテリアルズは電子材料、電子部品、モビリティ(自動車)部材、モビリティの部材である蓄電部材などの事業を行っており、昭和電工の既存事業との相性はいいが、それ以外にもライフサイエンス事業という、まったく新しい事業にも取り組んでいる。

2021年度の売上高予想は1兆2,800億円、営業利益は450億円を見込んでいる。売上増の要因は、昭和電工マテリアルズの売上が通期でおよそ6,000億円が見込まれることによる。

長期ビジョンと脱炭素

昭和電工の設立は1939年、アルミニウムの会社である日本電気工業と肥料の会社である昭和肥料が合併し、昭和電工となった。その後、ハードディスク事業や黒鉛電力事業などを買収し、事業ポートフォリオを組みかえながら成長してきたと言える。その延長が、日立化成の買収につながったといえるだろう。

長期ビジョンということでは、図に示したように、今後も事業ポートフォリオを組み替えて成長していくということだ。安定収益事業で利益を出しつつ、成長事業、次世代事業を育て、枠組みに入らない事業は、売却していくということだろう。とりわけ、現時点では半導体材料市場で重要なポジションを確保していくことが、重要なものとなっている。

具体的には、高純度ガスや溶剤などだが、現在2,000億円ほどの売上となっているが、うち8割は新たに加わった昭和電工マテリアルズによる事業となっている。

その先にくるのが、モビリティ関連だ。まだEV(電気自動車)の生産台数は少ないが、確実に増加していくものである。

同時に、製品を通じてSDGsに貢献していくものであると位置づけられていることにも注目だ。

では、脱炭素はどうなっているのだろうか。

2050年カーボンニュートラルを受けて、2030年の削減目標を上方修正している。以前は2030年に11%の削減目標だったものを、去年のカーボンニュートラル宣言やパリ協定の目標変更を受けて、2030年に30%削減、2050年にはカーボンゼロとして、目標設定を大きく変更した。

カーボンゼロに向けて昭和電工としてはさまざまな事業に取り組む中、ここまで紹介したもの以外で、注目すべきものを一つ取り上げたい。それがプラスチックのケミカルリサイクルだ。

プラスチックの材料は石油だが、単純に石油を使ってプラスチックを製造、使用後に焼却していてはCO2を排出するだけで終わってしまう。だが、プラスチックを集積して再度プラスチックとして活用できれば、新たに石油を掘る必要も無く、CO2は排出されない。

もちろん、様々なプラスチックがすぐにリサイクルできるわけではない。しかし、プラスチックのケミカルリサイクルをいかに効率的に行ない、CO2削減していくことは、持続可能な事業として非常に重要なものになるだろう。

まとめ

アルミと肥料の会社からスタートし、ハードディスクを経て、ハイテク、半導体材料の会社へと成長を続ける昭和電工だが、さらに今後はライフサイエンスまで展開していくという。これまでの事業とのシナジーを発揮するのは難しいかもしれないが、大きなチャンスのある分野として、期待したい。

脱炭素という視点で見ると、半導体材料そのものが脱炭素に不可欠なものとなっているという点で評価できる。半導体材料の分野は今後も成長させ、業界のリーダーシップを発揮できるといいだろう。さらに、プラスチックのケミカルリサイクルも脱炭素に貢献していくことになる。

合併して創業し、M&Aで成長してきた会社として見ることができる昭和電工にとって、

大事なことは、経営者が未来を予測し、見極めていくことだ。どういう事業が将来成長していくのかを、的確に読みとる経営が、この会社の将来を決めていく。そのことが、この会社の価値を左右している。

(Text=MASA)

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もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798059020.html