2022年1月11日、エネルギーに関する調査やコンサルティングを行っているウッドマッケンジーは、2030年に向けて再エネの化石燃料に対する競争力が向上するという調査結果を公表した。
2021年は、石炭と天然ガスの価格が高騰し、電力コストをそれぞれ19%および45%押し上げた。その結果、再エネの競争力を高めることとなったが、その再エネ自身も物流などのコスト増に見舞われた。しかし、ウッドマッケンジーのシニアアナリストであるリシャブ・シュレスタ氏によると、2022年以降は再エネのコスト増は解消されるという。
また、現在、アジア太平洋地域の再エネは火力発電の電力コストと比較して平均で約16%高くなっているものの、インド、中国、オーストラリアでは再エネが石炭火力よりも12%から29%も安くなっている。
さらに、2030年の段階では、主に太陽光発電について、石炭火力よりも28%程度安くなるとしている。
図は、原子力や再エネ、および蓄電池やCCS(CO2回収貯留)を組み合わせた火力発電のコストを、天然ガス火力および石炭火力のコストと比較したものとなる。原子力、水力、地熱、陸上風力はすでに天然ガス火力よりも安価な低炭素電源となっていることがわかる。
出所:ウッドマッケンジー
また、蓄電池を併設した風力発電および太陽光発電が、現在でこそ高価であるものの、2030年には天然ガス火力に匹敵するコストまで下がっている。これに対し、CCS付き火力発電は低コスト化が進んでいない。グラフには示されていないが、リサーチディレクターのアレックス・ウィットワース氏によると、2030年の日本における、20%のグリーンないしブルーアンモニア混焼の石炭火力の発電コストはおよそ150ドル/MWh(17.4円/kWh、1ドル=116円換算)もかかるが、それでも天然ガス火力の2倍のCO2排出量になるという。これは洋上風力と蓄電池併設の太陽光発電の組み合わせによる発電コストと同等となる。いずれにせよ、日本においてこうした方向で電源構成を組み替えていった場合、発電コストはおよそ2倍になる。
日本は将来の電力が高コストとなることが予想されているが、他の地域も同様で、再エネ+調整力としての天然ガス火力+蓄電池による電源構成では、2030年でも120ドル/MWhとなる。見通しとしては、2020年代に天然ガス、2030年代に石炭と競合できるようになり、2050年にようやく70ドル/MWhまで下がる。
経済的には、再エネの推進は続いていくものの、すべてが化石燃料にとってかわることはすぐにはできないというのが結論だ。
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