2021年6月21日、アムンディ、HSBC、グローバル・アセットマネジメント、シュローダーなどを含む28ヶ国168社の機関投資家は、環境影響の大きい企業1,320社に対し、環境情報開示システムを運営する国際環境非営利団体のCDPを通じて情報開示を行うように要請した。
エンゲージメントの対象となった企業は、ネットフリックスやアリババ・グループなどが含まれる。時価総額にして28兆ドル強、年間の温室効果ガス排出量はEU全体の排出量を超える47億トンとなる。日本企業としては、ABCマート、DeNA、JR東日本などがある。
今回のエンゲージメントの要請は、CDPの2021年のノン・ディスクロージャー・キャンペーンを介して行われるもので、CDPを通じてこれまで開示を行っていない企業、もしくは開示をやめた企業が対象となっている。
一方、キャンペーンに参加する機関投資家の数は増えており、2021年には56%増となった。これはCOP26を前にした、ネットゼロ宣言やサステナブル投資の勢いを反映したものだという。
また、直近ではネットゼロを目指すグラスゴー・ファイナンシャル・アライアンス(GFANZ)が立ち上がっている。GFANZは賛同署名機関に、2050年以前のネットゼロ達成にむけてSBT(科学に基づく目標)の設定を求めている。こうしたコミットメントを満たすため、金融機関は投資先の環境インパクトの理解と管理が必要となったことから、企業に対して環境情報開示を求めることになる。
エンゲージの対象となった企業のうち20%はすでにCDPの気候変動、水、森林のいずれかについては開示を行っているものの、他の分野についての開示を求めたものとなっている。また、58%の企業は気候変動についての開示が求められているということだ。
対象企業の内訳は、サービス業が21%、製造業が17%、鉱業が12%、インフラ産業が11%、化石燃料業が6%となっている。
2020年のノン・ディスクロージャー・キャンペーンでは、前年度比で2倍以上の企業が開示を行なうという過去最高の反応があったという。さらに投資家から直接のエンゲージメントがあった際、CDPへの開示が2倍以上になることも示されたという。
CDPキャピタルマーケッツ グローバルディレクターのエミリー・クレプス氏は、「投資家のエンゲージメントは開示を促す上で極めて重要であり、開示は環境行動の第一歩です。気候変動、水セキュリティ、森林減少は投資に大きなリスクをもたらし、それらの影響の開示を怠る企業は資本調達において競合他社に後れをとるリスクがあります。この年次キャンペーンの継続的な成長と成功が示しているように、投資家は、一貫性があり、比較可能で、包括性のある決定的なデータを求めています。
これを実現し、投資家自身のネットゼロ目標の設定および達成を支援するために、投資家は、企業にTCFDに完全に準拠した環境情報開示を期待しています。私たちは本年度のこのキャンペーンが投資家から過去最高の支援を受けていることを嬉しく思います。コロナパンデミックは、投資家の気をそらすどころか、気候変動のようなグローバルなシステミックリスクへの対応の必要性をきづかせ、その波はそうした投資家の要請に気づかない企業に対して急速に向かいつつあります」と述べている。
また、アレクタ コーポレート ガバナンス兼サステナビリティ責任者のカリーナ・シルバーグ氏は、「アレクタは、国連のネットゼロ・アセットオーナー・アライアンスの創設メンバーの1社であり、2050年までに投資ポートフォリオのカーボンニュートラルを目指すことを誓約しています。透明性のある堅牢な気候情報開示へのアクセスはそれを目指す上での前提条件であり、投資先キャンペーンが環境情報の非開示企業を対象としていることから、この目的を達成するための優れた機会を提供するものと考えています」と述べている。
ノン・ディスクロージャー・キャンペーンはCDPの主要な投資家イニシアティブの1つで、キャンペーンの目的は企業の透明性をさらに高めることだという。また、投資家はCDPのオンライン回答システムが運用されている夏の間に、企業に働きかけを行う一方、企業はシステムを通じて投資家に応えることが求められることになる。
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