脱炭素社会の実現に向けて、住宅から排出されるCO2の削減が課題となるなか、野村総合研究所は2030年度の脱炭素住宅の着工戸数などの市場予測を発表した。それによると、2030年度の脱炭素住宅ストック数は、政府目標の313万戸に遠く及ばぬ159万戸にとどまり、目標達成は困難だと示唆した。
CO2排出量を2050年までに社会全体としてゼロにするという目標達成には、住宅の脱炭素化が大きな課題となっている。
環境省によると、2019年度実績で、国内で排出されたCO2のうち、戸建て住宅やマンションなど家庭部門からの排出量が全体の15.5%を占めている。
政府は新築住宅などに太陽光パネルの設置義務化を検討するが、負担増などから反対する声が多く、見送られる公算が高い。
そこで重要となるのが、新築住宅で使うエネルギー消費量を省エネや太陽光パネルなどの再エネ導入によって、実質ゼロにする「ゼロ・エネルギー住宅(ZEH)」の普及拡大だ。
政府は2030年度のZEHストック数を313万戸にするという目標を掲げている。
しかし、この政府目標が未達に終わる可能性が出てきた。
野村総合研究所が6月8日公表した予測によると、2030年度のZEHストック数は159万戸にとどまり、「目標達成には遠く及ばない見込みだ」とした。目標との乖離は154万戸もある。
なお、単年のZEH着工戸数は、2019年度6.8万戸から増加し、2021年度は10.5万戸と初めて10万戸を超え順調に推移するが、2024年度の13.7万戸をめどに停滞すると予測する。
野村総研の予測を見る限り、現状の施策では住宅の脱炭素はほぼ達成できない見込みだ。
住宅の脱炭素を進めるためには、太陽光パネルの設置義務化などさらに踏み込んだ政策の強化、そして費用負担の軽減が欠かせないのではないか。
野村総合研究所リリースより
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