仮想通貨のマイニングに、どれほどの電気代がかかるかご存知でしょうか?実は、電気代節約の対策を立てなければ、日本で行う仮想通貨のマイニングはほとんど利益が出ません。
場合によっては赤字となり、電気代も回収できない状況になってしまうのです。また、マイニングによる多大な電力消費は、環境に負担をかけることが懸念されています。
ここでは、仮想通貨のマイニングにかかる電気代、ならびに電気代を節約するポイントについてご説明します。家計にも環境にもできる限り負担をかけないよう、本記事の解説を参考にしてみてください。
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マイニングとは、簡単にいうと「仮想通貨の新規発行」のことです。マイニングには高度な処理能力を持つコンピューターが必要となり、マイニングの作業にともなうエネルギー消費量も膨大です。
ケンブリッジ大学により発表された「ビットコイン電力消費指数」によると、ビットコインのネットワークに消費される推定電力量は年間109テラワットアワー(2021年6月1日時点)となっています。
これは、世界の電力消費量の約0.5%に相当し、日本の1年における電力消費量の12%(2019年度比)程度にのぼります。ビットコインのマイニングにともなう総消費電力量は、多くの国の消費電力量を上回っており、すでに仮想通貨は小国並みにエネルギーを消費する存在となっているのです。
マイニングにかかる電気代は、計算式にすると「ワット数×稼働時間×稼働日数×電気料金」で求められます。電気料金は契約先・契約プランによって異なり、年度によって上下があるため、ここでは1kWhあたりの電気料金を25円と仮定しましょう。
1か月間、24時間フル稼働させた場合を想定し、どのくらいの電気代になるイメージなのか計算しました。ワット数は本格的なマイニングのための高額機器ではなく、ゲーミングパソコンを想定した数値に設定しています。
項目 | 数値 |
ワット数 | 250W |
稼働時間 | 24時間 |
稼働日数 | 30日間 |
電気料金 | 1kWhあたり25円 |
上記をもとに計算すると、まずワット数・稼働時間・稼働日数から求められる「1か月の消費電力量」は18万W(180kWh)となります。ここに25/kWhを掛け合わせて求められる、今回の条件におけるマイニングの電気代は1か月あたり4,500円です。
一見すると安く思えるかもしれませんが、実は日本の電気料金では採算性が取りづらく、電気代をかけてマイニングをしてもほとんど利益が出なかったり、場合によっては赤字になったりします。
仮想通貨のマイニングは電力を大量に消費し、収益を上回る電気代により赤字になる可能性を解説しました。赤字の原因は電気代の高さであるため、マイニングを黒字化させるなら電気代の節約を検討しなければなりません。
マイニングにおける電気代節約の方法は、誰にとっても実現可能なものばかりではないため、各手法のうち取り入れられるものから検討することをおすすめします。
電力自由化により契約先・プランの種類は増えたため、いま契約しているプランよりも好条件な選択肢を探せば電気代の節約が可能です。ワット数や稼働時間が長くなるほど、1kWhあたりの電気料金が収益性を左右するので、契約プランの見直しがもっとも手軽な電気代節約だといえます。
なお、仮想通貨の認知拡大にともない、Looopでんきから「マイニングフラット」と呼ばれるマイナー(マイニングを行う人)向けの契約プランも登場しました。現状、マイナー向けプランの選択肢は多くありませんが、今後もマイニングが盛んに行われるなら新たなサービスが登場する可能性もあります。
国外であれば、日本よりも電気代が安い地域も多く、電気代を半分以下に抑えてマイニングを行うことも可能です。
ただし、多くの人にとってマイニングのコストを削減するためだけに、国外へ移住することは現実的ではありません。そこで、妥協案として挙げられるのが、国内で「より電気代を抑えやすい地域に引っ越す」という手段です。
なかでも、北陸電力のエリアは電気代が安いことで知られています。仕事や生活との兼ね合いもあり、簡単に自宅を移動させられない場合がほとんどですが、国内で本格的にマイニングを行う場合は移住も候補に挙がります。
企業が海外のマイニングファーム(マイニングを専門とする工場)と個人の橋渡し役となり、日本にいながら海外のマイニング機器を間接的に運用できるサービスがあります。たとえば、株式会社ディーカレットにより2021年に公表された、マイニングマシンの販売・運用サービスは以下の流れでマイニング事業を始められるサービスです。
上記のような手順でマイニングに参入できるサービスを利用すれば、基本的にはマイニングが自宅の電気代として負担となることはありません。
ただし、仮想通貨の価格下落や運用経費の高騰など、マイニングによる報酬を諸経費が上回った場合には、赤字分の負担が求められる場合がある点には注意してください。
電力は、その半数以上が火力発電により生み出されているものです。火力発電に使用される石炭や石油、天然ガスによる発電は二酸化炭素を排出し、地球温暖化を進める要因となります。
また、発電効率が良いとされている原子力発電も、生物や自然環境に悪影響を及ぼす放射性物質を生み出します。私たちの生活環境に影響を及ぼさないよう、放射性物質を固形化して地下深くに処分されることが計画されていますが、現状では処分の候補地が決まっておらず最終処分は保留となっている状況です。
マイニングにより電力を大量消費すれば、それを賄うために火力発電や原子力発電を稼働させることとなり、結果として環境に負担をかけることも念頭に置いておかなければなりません。
マイニングが盛んになるなか、今後はマイニングによる環境への負担を軽減する取り組みが求められます。現状では、以下のような対策が具体案として挙げられます。
日本の事例であれば、株式会社Locofiや株式会社TRIPLE-1が、従来の機器よりも消費電力を抑えつつ、高いパフォーマンスを発揮するマイニング機器を開発・販売しました。それぞれ提供しているマイニング機器は、公表時点で平均的な従来の機器よりも50%以上の電力削減を実現しています。
たとえば、株式会社Locofiが提供するPercival Mark-1の場合、1台あたり100万円近くの販売価格となっており高価な印象はありますが、公式ページにて「平均的従来マシンと比べて消費電力が1/3」であると公表されています。
投資対収益の良し悪しは一概に判断できませんが、少なくともパフォーマンスに対する電気代とそれにともなう環境負荷は小さいと判断できるでしょう。ハイパフォーマンスなマイニング機器の導入は、本格的なマイニングの実施を検討する場合に、環境に配慮した対策として個人でも現実的に取り入れることが可能です。
昨今では再生可能エネルギーによる発電を駆使し、マイニングに使用する電力を賄う施設の建設も増えつつあります。2021年6月には、アメリカのSquare社がブロックチェーン技術プロバイダーと提携し、太陽光発電を用いたビットコインマイニング施設を建設すると公表しました。
また別件ではありますが、同年4月には100%の電力を再生可能エネルギーで賄うマイニング事業を進めるため、約15億円の資金を調達した事例もあり、消費電力の多さに対する対策として「再生可能エネルギーによりマイニングの電力をカバーする」という方向へ向かいつつあります。
再生可能エネルギーによりマイニングの電力をカバーする取り組みは、個人でも再現が可能です。
たとえば、家の屋根に太陽光発電設備を設置することで、発電した電力をマイニングに充てられます。当然、発電した電力はマイニング以外にも使えますし、余剰分の電力はFIT制度(固定価格買取制度)によって一定価格で電力会社へ売電できます。太陽光発電設備は個人事業としてのマイニングから撤退したあとも使えるため、長期的な環境対策として無駄の少ない取り組みです。
仮想通貨を手に入れられるマイニングは、個人規模でも始められる魅力的な取り組みですが、その一方で電気の大量消費による経済面・環境面への負担が生じます。そのため、マイニングを行う以上は電気代を節約する工夫が不可欠だといえます。
ぜひ、本記事をマイニングの電気代を抑える際の参考にしてください。
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