難航する2030年46%削減 環境省、太陽光20GW上積み方針、それでも再エネ比率33% | EnergyShift

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難航する2030年46%削減 環境省、太陽光20GW上積み方針、それでも再エネ比率33%

難航する2030年46%削減 環境省、太陽光20GW上積み方針、それでも再エネ比率33%

2021年07月06日

2030年度温室効果ガス46%削減の達成には再生可能エネルギーの大量導入が欠かせない。だが、あと9年でどれだけ上積みできるのか。環境省は7月6日、経済産業省の審議会で太陽光発電の導入目標を20GW積み増す方針を示した。しかし、それでも2030年度の再エネ比率は33%にとどまり、委員からは46%目標達成には不十分だという声があがった。

2030年度の太陽光発電導入量108GW

7月6日に開かれた「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第34回)」では、2030年度のさらなる再エネ導入拡大に向けた議論が行われ、環境省から太陽光発電を中心に20GW以上を上積みする新たな導入目標が提示された。

これまでの国の導入目標は、2030年度の太陽光発電を64GWに設定していたが、今年4月、経産省が約88GWに引き上げ、各省庁と連携しさらなる上乗せを検討中だ。こうしたなか、小泉進次郎環境大臣は「公共部門、民間企業や住宅での自家消費、地域共生型太陽光発電の切り口から、最大限の導入に取り組む」という方針を掲げる。

この方針のもと、環境省は、太陽光発電を「公共部門」「民間企業」「地域共生」の3分野で導入を加速させることで、20GWの増加が可能だとした。実現すれば、太陽光発電の導入量は約108GWになる。

具体的には、太陽光発電が設置可能な国や地方自治体の建築物の約50%に設置することで、2030年度までに6GWの導入を見込んでいる。

また、民間企業の脱炭素化や、初期投資ゼロ円で太陽光発電を設置できる自家消費型PPA(電力購入契約)モデルなどの支援を通じ、2030年度までに少なくとも10GWの導入を見込む。

そして、2030年度までに約1,000市町村が公有地や脱炭素促進区域などに導入することで、4.1GWの導入を見通す。

このほか、陸上風力では環境アセスメントにかかる時間を短縮するなどの政策対応によって、1.8GW程度の上積みが可能だとした。

再エネ比率33%では、46%削減に不十分

環境省の試算に対し、委員からは「公共部門での導入は進んでも、民間企業の10GWはその達成が非常に怪しい」と妥当性に関する意見が複数出た。また、「自家消費型PPAは現状、投資回収期間が15年を超えたり、電気料金が高くなると受け入れられない。達成には政策支援が不可欠だ」という声もあがった。

さらに、「環境省試算の20GWを発電量に換算すると年間200〜300億kWhの上積みにしかならない。2030年度の再エネ発電電力量は、経産省試算の2,903億kWhから3,100億kWh程度まで増えるが、それでも再エネ比率は32〜33%にとどまる。46%削減達成に向けて相当のギャップがある」という意見が出され、複数の委員が「不十分だ」という認識を示した。

残り9年という時間の中で、どこまで再エネを拡大することができるのか。今回の審議会によって、46%削減の困難さが改めて浮き彫りになった。経産省は今回の意見を基本政策分科会に報告し、2030年度の再エネ比率をとりまとめる方針だ。

(Text:藤村朋弘)

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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