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豪政府が「2050年カーボンニュートラル」を表明 日本企業にビジネスチャンスはあるのか

豪政府が「2050年カーボンニュートラル」を表明 日本企業にビジネスチャンスはあるのか

2021年10月27日

オーストラリアのモリソン首相は、10月26日、「2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする」目標を表明した。石炭やガスを産出する豪州は、実質ゼロ目標を掲げていない、数少ない先進国だった。今回の表明には、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が迫ることでの、国際社会の圧力の影響があった。

これまで、豪州が二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス排出の実質ゼロ目標の表明に乗り遅れた背景には、世界で有数の石炭とガスの産出国であることが関係している。石炭輸出総額は一昨年時点で、550億豪ドルに上り、インドネシアに次いで世界第2位を記録した。また、国内においても2019年時点で、発電量の約76.9%を石炭とガスに頼っている状況だ。しかも、発電量の56.4%を担う石炭は、化石燃料の中でも特にCO2排出量が多い。人口1人当たりのCO2排出量は、2017年時点で世界第2位、世界平均の約3.5倍であった。

こうした情勢を踏まえ、豪州はこれまで「2030年までに、CO2を2005年比で26~28%削減する」としており、この短期目標については今後も修正しない構えだ。2021年4月に、同じく2030年までに50~52%削減するとした米国に比べると、半分の目標数値となっている。こうした米国との比較をはじめ、COP26を前にした国際的な圧力を受けたことで、今回の実質ゼロ目標の表明に至った形だ。

首都キャンベラにて、記者会見を開いたモリソン首相は、排出量ゼロに向けて、増税や電気料金値上げなど、国民に負担を強いる形を否定し、技術力の向上で対応すると示した。また、石炭やガスの生産・輸出、農業や資源産業の雇用に影響を与えないものとする姿勢を現地メディアが報じている。なお、これまでの豪州の石炭の主な輸出先としては、日本に加えて中国、韓国も名を連ねている。豪政府が発表した実質ゼロ目標は国内の排出が対象で、輸出先で排出されるCO2は含まないとしているが、すでに3ヶ国とも実質ゼロ目標を掲げているため、豪州の石炭資源産業が縮小していく見込みだ。

今後、豪政府は、脱炭素技術に対し、10年間で200億豪ドル(約1兆7,000億円)を投資することも表明。燃やしてもCO2を排出しない水素やアンモニアといったグリーンエネルギー技術や、CO2を回収して貯留する二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)などが対象となる。最近では、日本に液化天然ガス(LNG)を輸出するウッドサイド・ペトロリアムが、豪西部に大規模なグリーンアンモニア製造設備を建設する計画を発表。事業は、株式会社IHI、丸紅株式会社との協業で進められていく予定だ。実質ゼロ目標に向けて、アンモニアのような低炭素の水素キャリア・チェーン実現に向けた官民合同の取組みに、日豪で挑む形となる。また、日射量が多く土地が広大、なおかつ風量も多い豪州は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの安定確保が見込みやすい。日本でも、ENEOSと双日が豪州で太陽光発電事業に参画すると、6月10日に発表した。

化石燃料への批判が世界的に強まりつつある中、クリーンエネルギー事業を強化していく豪州の姿勢が日本にも影響を及ぼしている。

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ヘッダー写真:Australian Embassy Jakarta, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

EnergyShift編集部
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