神戸製鋼所 製鉄と石炭火力、脱炭素への二重の課題をどう解決するか? -シリーズ・脱炭素企業を分析する(6) | EnergyShift

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神戸製鋼所 製鉄と石炭火力、脱炭素への二重の課題をどう解決するか? -シリーズ・脱炭素企業を分析する(6)

神戸製鋼所 製鉄と石炭火力、脱炭素への二重の課題をどう解決するか? -シリーズ・脱炭素企業を分析する(6)

エナシフTVの人気コンテンツとなっている、もとさん、なおさん、やこによる「脱炭素企業分析」シリーズ、特に好評だった企業事例を中心にEnergyShiftではテキストでお届する。第6回は製鉄業であり発電事業にも積極的な神戸製鋼所である。

株価と業績

最近の株価は上昇傾向だが、過去10年では2015年をピークに下降傾向。2017年にはアルミ製品などの検査証明書のデータ書き換えが発覚し、株価は急落。現在も上昇傾向とはいえ、2019年1月のレベルに戻した段階。株価上昇の第一の原因はコロナからの回復と、鉄鋼需要が伸びていること。2022年3月期の業績予測の上方修正も行っている。

 2020年度は下期の持ち直しも含めて1兆7,000億円の売上を誇り、製鉄業としては5兆円を超える国内第一位の日本製鉄、第二位のJFEに続く日本第三位。

売上の内、鉄鋼やアルミの金属製品で約7,000億円、それらを用いた素形材で2,400億円、KOBELCOのパワーショベルのような建設機械で3,300億円。電力は800億円の売上だが200億円と利益は大きい。

電力の売上の上昇要因は栃木県真岡発電所のフル稼働と神戸発電所の減価償却。利益拡大の要因として一番大きいのは2021年冬の電力高騰。神戸製鋼は売電側なので電力価格の高騰が大きな収益となった。ただ2021年度の電力は冬の反動と真岡発電所の定期点検などから減収減益が予想される。

とはいえ、発電所は石炭火力の割合が高く、鉄鋼の生産にも石炭を使う。そのような神戸製鋼所がどのようにして脱炭素していくのか注目したい。

沿革

創立は1905年、鈴木商店が小林製鋼所を買収し神戸製鋼所と改称。

1911年に神戸製鋼所が鈴木商店から分離して設立。

戦前は鋳鍛鋼、鋼材、銅、アルミを扱う。戦後1962年から海外展開。

ポイントとなるのが1996年からのIPP参入(IPP=Independent Power Producerの略で独立系発電事業者の事)。この頃からすでに電力の自由化は始まっており、円高が進むにつれて日本の電気料金が国際的に高くなってきていた時代。

当時、電力会社よりも安く発電できるのであれば、発電所は入札制を導入してはどうか、といった論調から、発電事業は自由化された。電力会社は応札された発電所の計画のうち、安い発電所から約定するというシステムになる。これが現在の電力自由化に続いている。

神戸製鋼所は最初期に応札し、石炭火力70万kW2基の神戸発電所を落札、2002年に運開。

その後、2016年に電力事業部門をスタートさせる。今後、いろんな事業者へ売電していきたいとなったことに対し、石炭火力発電所であることが、神戸製鋼所の脱炭素に対する大きな足枷となってくる。

神戸製鋼所の脱炭素

神戸製鋼所の2021年度から3ヶ年の新たな中期経営計画に示された図を見てみると、まずは「安定収益基盤の確立」、そして「カーボンニュートラルへの挑戦」が最重要課題。その為に、事業の多様化を目指していく、とある。

経営環境では脱炭素、サステナビリティ、DX、コロナによる産業構造変化、そして鉄鋼業界の構造的問題が示されている。

一方、タイムスケジュールはどうなっているのか。

製鉄は石炭で行っているが、これを水素やスクラップを利用して脱炭素していく方針だ。

一般的に、製鉄では高炉に石炭を投入して、鉄を作っていく。高炉は鉄の生産には非常に効率がいいが、同時にCO2も多く出てしまう。

そこで、まずは高炉の省エネ技術を追求するとともに、スクラップ利用も拡大、鉄鉱石以外のスクラップも利用していく。スクラップは還元不要なのでその分CO2を減らすことができる。また、AI化なども進めていく。

しかし、製鉄業にとって最も重要なのは、水素還元製鉄など水素を使った技術の開発だ。

水素はもはや、鉄鋼会社が本格的に取り組まないといけない時代になってきている。

こうした課題に対し、神戸製鋼所は1980年代にMIDREXという会社を買収していることが、優位性となっている。

MIDREXが有する技術は、石炭を使わず、天然ガスから製鉄を行うというもの。同じ化石燃料でも、天然ガスの方が石炭よりはCO2を減らすことができる。

この技術を応用し、天然ガスから製鉄できるのであれば、同じガスである水素からもできるのではないか、といった観点から天然ガスの水素化を進めていくことができる。

なお、この他にも水素還元については、欧州最大の製鉄会社であるアルセロール・ミッタル社と実証プラントを製造、2023年頃から実証実験を開始予定。

こうした努力を進めていくが、今回の決算発表時の記者会見では弱気な部分も見えた。

「メインで使用している高炉をいつまで使うのか、そろそろ電炉を作らないのか?」と記者から質問された際に明確な答えが出せず、「高炉を使っていくなかでどうにもならなくなったら電炉も考える」、といった弱気な回答になっていた。

一方、パワーショベルなどエンジニアリングの部分では燃料電池で電化、そしてエンジニアリングの技術自体も省エネに繋がってくるので、こちらの分野はあまり問題はないだろう。

 製鉄と石炭火力、二重の苦しみ

現在ある発電所では神戸発電所は石炭火力、真岡発電所がガス火力だ。

真岡発電所の優れたところは、東京ガスが北関東のパイプラインを使用して真岡市の工業団地に供給しているガスを利用して発電していることで、電気の地産地消が行われている点だ。石炭よりはガスの方がCO2は少ないので評価できるが、送電ロスも少なくて済む。

一方、神戸発電所は70万kWの石炭火力が2基あるが、新たに65万kWの石炭火力を2基建設している。3号基、4号基は効率がいいと言われているが、石炭火力であることには変わりはない。

ここからどうやってCO2を削減していくかが神戸製鋼所の課題となってくる。足枷となりかねない。

火力発電の脱炭素化はどうするのか

神戸製鋼所では、石炭火力については、高効率化やアンモニア混焼、バイオマス混焼などにより、CO2を減らしていくとしている。一方、ガス火力については、当面は現状の運用をしつつ、ガスをカーボンニュートラルなものに転換していくとしている。しかし、そこには限界がないだろうか。しかも、神戸製鋼所の発電のポートフォリオには、わずかな風力発電以外に再エネがほとんどない。

世界の潮流から見ても、ここまで再エネが少ないのは厳しいところだろう。

今後の展開

新設される神戸発電所3、4号機は、石炭火力に対する将来的な需要減の可能性があり、このまま長期間運転していくのは難しくなる可能性がある。したがって、アンモニア、バイオマス混焼などでCO2を削減しながら運転していくことになるが、どこまで採算が合うのかは未知数だ。投資回収ができない可能性もある。

とはいえ、考えるべきは発電所が作る短期的な売上を、次の事業にどのように投資していくか、というところが大事になってくる。

一方、真岡発電所も天然ガスからカーボンニュートラル天然ガスに変換していく。カーボンニュートラル天然ガスを使用することでコストが高くなるので、いかに回収していくかは重要なところ。

鉄鋼に関しては他社と同様、電炉の拡充と水素還元技術の確立の二つが軸になっていくだろう。

エンジニアリングなどの部分でも脱炭素の可能性はあるので期待していきたい。

いずれにしろ、短期的な利益をどのように持続可能な事業に投資していくのかが問われている。その意味では、会社として正念場を迎えているといってもいい。

日本を引っ張ってきた製鉄会社だけに、神戸製鋼所がいかに脱炭素していくのか、注目していきたい。

(Text:MASA)

もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798059020.html