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環境アセスメント

最近よく耳にする「環境アセスメント」とは

2021年03月03日

「環境アセスメント」という言葉の意味をご存知でしょうか?ここでは、近ごろ耳にすることが増えた環境アセスメントについてご説明します。分かりやすくまとめているので、環境アセスメントの概要を知りたい方はぜひご参照ください。

環境アセスメントとは

環境アセスメント(環境影響評価)とは、開発事業が環境に与える影響を調査・予測・評価し、環境保全に悪影響のない事業計画を作る手続きのことです。環境アセスメントを省略し、環境アセスと呼ぶこともあります。
環境アセスメントは、特定の事業を開始しようとする事業者が自ら行うこととなっています。事業の開始を検討している事業者自身が、責任を持って環境影響へ配慮することが適当だからです。
環境アセスメントでは、以下のように調査・予測・評価を実施し、これら3つと並行して環境保全のための施策を検討。施策が講じられた場合における、環境影響を総合的に評価します。

環境アセスメント制度のあらまし

*環境省「環境アセスメント制度のあらまし

なお、環境アセスメントは規定の策定元や規模によっていくつかの分類があり、主な種類として以下が挙げられます。

項目概要
法アセス法令が定めた基準に基づいて実施される環境アセスメント
条例アセス地方自治体が定めた条例に基づいて実施される環境アセスメント
生活アセス廃棄物処理法に基づいて実施される環境アセスメント(別名:ミニアセス)
自主アセス環境配慮のアピールを目的に、自主的に実施する環境アセスメント

ここでは、法アセスに分類される環境アセスメントを中心に、解説を進めていきます。

環境アセスメントの目的

環境アセスメントの実施は、事業が環境に配慮して行われるよう導くことを目的としています。環境アセスメントの手続き後、環境アセスメントの実施によって得られた結果は事業内容に反映され、今後開始する事業によって起こり得る重大な環境影響を未然に防ぐ仕組みになっているのです。

対象となる事業

以下に分類される13種類の開発事業は、環境アセスメントの実施対象となります。

  • 道路
  • 河川
  • 鉄道
  • 飛行場
  • 発電所
  • 廃棄物最終処分場
  • 埋立て、干拓
  • 土地区画整理事業
  • 新住宅市街地開発事業
  • 工業団地造成事業
  • 新都市基盤整備事業
  • 流通業務団地造成事業
  • 宅地の造成の事業(住宅地・工場用地を含む)

これらは、さらに「第一種事業」と「第二種事業」に分類されます。第一種事業は、必ず環境アセスメントを行わなければならない事業。第二種事業は、個別に環境アセスメントの必要性を判断する事業です。
環境アセスメントの実施にあたり、基本的には第一種事業か否か判定するためのスクリーニングを行いますが、以下の事業は必ず第一種事業に分類されます。

  • 高速自動車国道の開発
  • 新幹線鉄道の開発
  • 原子力発電所の開発

上記以外の開発事業については、その規模に応じて第一種事業と第二種事業に区別されます。

手続きの流れ

環境アセスメントの手続きは、計画段階における配慮事項をまとめた「配慮書」の作成から始まり、主務大臣・環境大臣や都道府県知事、国民等とのやり取りを経て進められます。

以下は、環境影響評価情報支援ネットワークが公開している、環境アセスメントの手続きにおける一連の流れをまとめた図表です。

環境アセスメントの手続

*環境影響評価情報支援ネットワーク「環境アセスメントの手続

一連の流れに出てくる用語は、それぞれ以下のような目的・役割を持っています。

項目概要
配慮書環境保全のために配慮が必要な事項について検討し、結果をまとめたもの
第二種事業の判定 
 (スクリーニング)
環境アセスメントを行うか否かを決める手続き
方法書どのような項目に、どのような方法で環境アセスメントを実施するのか計画を示したもの
アセスメント(調査・予測・評価)の実施収集した情報をもとに、事業を実施した際の環境変化を予測し、環境への影響について検討すること
準備書調査・予測・評価の結果を示し、事業者が自らの環境保全に関する考え方をまとめたもの
評価書準備書に対して寄せられた意見内容について検討し、必要に応じて準備書を修正したもの
報告書工事中に実施した事後調査、および事後調査により判明した事項への対応をまとめたもの

上記のうち、事業者が作成した配慮書や方法書などに意見を出す形で、私たち国民は環境アセスメントに関わることができます。

環境アセスメントの現況と展望

環境アセスメント制度の現状と課題」では、環境アセスメントの課題として以下が挙げられています。

  • SDGs のような新たな環境政策上の課題との整合性の確保
  • アセス制度に対する関係者や市民の認識の改善
  • 環境基本法 20 条の制約による対象事業の限定の改善
  • 許認可要件の見直し(条例との整合性)
  • SEA の制度化あるいは現行制度への取り込み
  • 手続き時間の短縮や再アセスの規定の見直し

要約すると、制度内容が現状に即したものになっておらず、多くの点で見直しの余地があるのです。また同レポートの筆者は、他にも以下を始めとする複数の課題を挙げています。

  • 法と条例が制度的に大きく異なっており、アンバランス
  • 国民・事業者の「制度に対する理解」が不足している
  • ケースに応じたアセスを実施するための柔軟性の不足
  • 周辺住民に対して環境影響を説明する図書が難解

これらの多くは、制度上の問題であったり事業者側の問題であったりしますが、私たちにも環境アセスメントを理解しようという歩み寄りは不可欠です。私たち国民が「制度が現状に即したものになっていない」と認知することも、制度の更新を促す一要因になるからです。

おわりに

開発事業が環境を破壊しないよう配慮するうえで、環境アセスメントは重要な役割を果たしています。 ここまでご説明した内容を参考に、環境アセスメントに対して正しい認識を持っていただけますと幸いです。

EnergyShift編集部
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