コロナ禍で厳しい経営環境が続く航空業界にあって、巨額赤字を抱えてもなお、脱炭素の取り組みが加速している。ANAホールディングスは6月17日、2050年度までにCO2排出量を9割減らせる廃油や藻類などを原料とした次世代航空機燃料に全量切り替える構想を明らかにした。今年7月からは次世代燃料を使った定期便運航を行う予定で、燃料転換を急ぐ。
2021年3月期決算で、過去最大となる4,046億円の赤字に陥ったANAホールディングス。コロナ禍は収束せず、いまだ厳しい経営環境が続くなか、ANAは巨額赤字を抱えてもなお、脱炭素に向けた取り組みを強化している。
6月17日、CO2排出量実質ゼロの実現に向け、2050年度までに廃油や藻類などを原料とした次世代航空機燃料に全量切り替える構想を明らかにした。
次世代燃料はSAF(持続可能な航空燃料)と呼ばれ、従来のジェット燃料に比べてCO2排出量を最大9割削減できるといわれている。
ANAではユーグレナと組み、SAFの製造開発を進めるとともに、2020年にはフィンランドのSAFメーカー、NESTE社と提携。2020年11月に国内航空会社で初めてSAFを使った定期便のフライトを実施した。2021年6月17日には、SAFを燃料に羽田―伊丹間のフライトを行った。
7月からは羽田・成田発の定期便にSAFを使用する計画だ。
なぜ、ANAは脱炭素を急ぐのか。
背景には世界で加速する脱炭素がある。航空機は鉄道などの交通機関と比べCO2排出量が多い。「飛び恥」ということばが瞬く間に浸透したが、ヨーロッパなどでは「航空機に乗ることは恥ずべきことだ」という考え方が広がっている。
航空業界は国際社会から厳しい批判を受けており、脱炭素に乗り遅れれば経営基盤を大きく揺るがすとの危機感がある。
ANAでは、SAFを使った定期便運航を始めることで、製造コストの削減やサプライチェーンの構築を目指す。そのうえで、2050年度までに全量SAFに転換し、脱炭素を実現したい考えだ。
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