三菱重工グループが世界初アンモニア焚き4万kW級ガスタービンシステムの開発に着手。カーボンフリー発電のラインアップを拡充、2025年以降の実用化目指す。
三菱パワーは、世界中で高まるエネルギーの脱炭素化に対する機運の高まりを受け、アンモニア(NH3)をガスタービン発電の燃料として100%直接利用する4万kW級ガスタービンシステムの開発に着手する。今後、燃焼試験などを経て2025年以降の実用化を目指す。
アンモニアを専焼する方式は、燃料利用時に二酸化炭素(CO2)が発生しないことから、発電におけるカーボンフリーを実現するものになる。
4万kW級の出力規模におけるアンモニア100%燃料を用いた直接燃焼ガスタービンの実用化は世界でも例がなく、産業分野や離島などといった中小規模の発電所における脱炭素化の推進に貢献することができるという。
三菱パワーは、高効率な発電技術の開発による環境負荷軽減に取り組み、火力発電の中で現在最もCO2排出量の少ないガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)の燃料を、天然ガスから燃焼時にCO2を排出しない水素に転換する技術の開発を進めてきた。
また、アンモニア利活用の一環として、ガスタービンの排熱でアンモニアを水素と窒素に再変換し、水素ガスタービンへ適用するシステムの開発*を行ってきており、今回のアンモニア直接燃焼方式の開発によりカーボンフリー発電システムのラインアップをさらに拡充する。
アンモニアの直接燃焼では、燃料中の窒素が燃焼により酸化することで発生する窒素酸化物(NOx)への対応が課題であり、世界で豊富な運転実績を有する同社のH-25形ガスタービン(出力:4万kW級)を対象に、NOx排出量を低減する燃焼器の開発と脱硝装置を組み合わせたガスタービンシステムの実用化を目指す。
水素と窒素の化合物であるアンモニアは、水素を効率良く運ぶことができる媒体(キャリア)の一つであり、かつ燃料として直接燃焼することも可能。近年、水素社会への移行を通じたカーボンニュートラルの実現や、既存エネルギーの低環境負荷化などといった観点からアンモニアが注目され始めており、電力会社やIPP(独立系発電事業者)などの発電設備へ早期に導入することにより、将来のカーボンフリー燃料としての活用が期待されている。
* 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業である「水素社会構築技術開発事業:JPNP14026」の一環として実施。
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