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東北大学、3Dプリントで全固体電池を製造する、すごい技術を開発

東北大学、3Dプリントで全固体電池を製造する、すごい技術を開発

2021年12月13日

東北大学は、電気自動車(EV)の性能を飛躍的に上げると期待される全固体電池に関して、固体リチウムイオン電池を室温・短時間でオンデマンドに3Dプリントで製造する技術を開発した。

リチウムイオン電池は高エネルギー蓄電デバイスとして、スマホやPCなどのポータブル機器やEVの電源として幅広く普及している。

リチウムイオン電池は、正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで、電気が流れ、充・放電を繰り返すことができるが、リチウムイオンの移動に欠かせないのが電解液である。

だが、電解液は、リチウムが含まれているために空気に触れると激しく燃焼してしまうという課題がある。その解決策の1つとして、液体ではなく、燃えにくい固体の電解質を用いた全固体リチウムイオン電池の開発が進んでいる。

全固体電池は電池を燃えにくくするだけでなく、リチウムイオンの動きが速いことから、EVの航続距離や寿命を延ばし、充電時間も短縮できると期待されている。

一方、全固体電池は電解質が硬いため、充放電を繰り返すと電解質が収縮し、正極や負極などとの間に隙間ができ、リチウムイオンが通りにくくなり、電池性能が劣化するとの課題があった。

そこで東北大学は、リチウムイオン伝導性イオン液体、酸化物ナノ粒子の成分比を調整することで、柔らかいゲル状の電解質材料を開発。さらに紫外線をあてると硬化する樹脂を混ぜることで、この電解質材料とコバルト酸リチウム正極、チタン酸リチウム負極をもとに、3Dプリンタのみで全固体電池の製造に成功したという。

しかも、電極や電解質を圧着するのに高温下での加熱も不要で、室温で3Dプリント製造できるという。

東北大学によると、リチウムイオンが速く移動し、燃えにくくなるだけでなく、3Dプリンタ製造によって、全固体電池を高速かつ高い成形性でつくることができる。また、製造した全固体電池は、100回以上の充放電を繰り返しても、安全な動作を示したうえ、着火試験でも安全性が確認されたとしている。

室温での3Dプリント造形が可能となったことで、ポリマーなど熱分解性のあるソフトマテリアル状に造形ができたり、生体適合性マイクロ電池やフレキシブルデバイスへの応用も可能だという。また、3Dプリンタの設計によりミクロンオーダーからメートルオーダーまで任意の大きさ、任意の形状の電池を造形できるため、ウェアラブルデバイスや車載用電源など、固体LIBの幅広いニーズにオンデマンドに対応して製造することも可能だとしている。

研究チームは材料の組成を見直し、イオン電導度の向上を狙う。開発した電池をEVへ搭載することも視野に入れる。まずはセンサーやウエアラブル端末の電源などの用途で実用化を目指すという。


出所:東北大学多元物質科学研究所

 

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