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ゼロエミッション達成に向けたソーラーシェアリングのポテンシャル

ゼロエミッション達成に向けたソーラーシェアリングのポテンシャル

2021/01/15

将来のカーボンニュートラル社会において、太陽光発電や風力発電はインフラとして大きな役割を担うことになるだろう。その太陽光発電のうちでも、ソーラーシェアリングは高いポテンシャルがあるのではないだろうか。千葉エコ・エネルギー代表取締役の馬上丈司氏が、あらためて考察する。

2030年太陽光発電をさらに2億kW追加へ

2020年は振り返れば日本史にも人類史にも刻まれる激動の1年となり、エネルギー政策の面から見ても変化の大きい年となった。

何よりも、2050年のゼロエミッション達成という国家目標が掲げられたことは、もはやわが国においてもこの方向に向かうことが不可逆の道となったことを示すものであり、その達成に向けた取り組みを積み上げる以外の道を歩むことはないだろう。

この記事を書いている最中にも、地球温暖化対策推進法への定量目標導入を図るという報道がなされており、我々現役世代は不退転の決意を持って将来世代のためにこの課題に取り組むことになる。

さて、今後10年程度のスパンで再生可能エネルギー導入量を大幅に増やそうとすれば、太陽光発電がそこに大きな貢献を果たすことは言を俟たない。

過去8年間のFIT制度下における導入量を見ても、年間導入量が最大となった2014年度や2015年度には年間900万kW以上が設置されている。この実績と、現在規制改革議論が進んでいる送配電網への接続問題が解消されていけば、年間1,000万kWペースの導入を続けることは十分に可能である。

しかしながら、そのペースを10年続けてもせいぜい1億kWの導入量にとどまることから、追加的に得られる再生可能エネルギー発電量は年間1,000億~1,100億kWh程度となる。

これでやっとわが国の年間発電電力量の10%であるから、再エネ大量導入に向けたマイルストーンとなる2030年の非化石電源比率44%を達成していくためには、更に目標を上積みしなければならない。

既に政府目標となっている洋上風力発電1,000万kWなど、あらゆる再生可能エネルギーの最大限の導入を目指した上で、それでも残る不足分は太陽光発電が埋めていくことになるだろう。そのためには、最低でも2020年時点の導入量から更に2億kW程度を設置し、2030年時点で国内の発電電力量の20%以上を太陽光発電が賄うようになる必要があると考えている。

日本の農地の2.2%にソーラーシェアリング導入で1億kWが導入できる

では、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)はその中でどのような役割を果たし得るのだろうか。

その導入ポテンシャルを評価していくと、農業生産に支障のない合理的な設計から検討した場合には、1haあたり1,000kWのソーラーシェアリングを設置することができる。

単純に計算すれば、農地10万haで1億kWのソーラーシェアリングが導入できるということになる。

農林水産省の「耕地及び作付面積統計」によれば、2019年時点で国内には439.7万haの耕地と9.1万haの再生利用可能な荒廃農地が存在しているので、これらの農地の2.2%にソーラーシェアリングが導入されれば1億kW分の太陽光発電が導入できることになり、国内の発電電力量の10%程度の再生可能エネルギーが得られる。

耕地面積及び作付延べ面積

 令和元年
耕地面積439.7
(うち田)239.3
(畑)200.4
(かい廃面積)3.2
(拡張面積)0.9
作付延べ面積402.0
耕地利用率(%)91.4

単位:万ha 資料:耕地及び作付面積統計(農林水産省統計部) 注:令和元年の「作付延べ面積」及び「耕地利用率」については概数値である。

荒廃農地

 令和元年
荒廃農地28.4
(うち再生利用可能)9.1

単位:万ha 資料:荒廃農地の発生・解消状況に関する調査(農林水産省農村振興局) 注:「荒廃農地」とは、現に耕作に供されておらず、耕作の放棄により荒廃し、通常の農作業では作物の栽培が客観的に不可能となっている農地をいう。「再生利用が可能な荒廃農地」とは、抜根、整地、区画整理、客土等により再生することにより、通常の農作業による耕作が可能となると見込まれる荒廃農地をいう。

1億kWのソーラーシェアリング導入には累計12~15兆円程度の投資が必要となるが、同時に年間1兆円程度の売電収入が生まれることにもなる。国内の農業産出額が年間9兆円程度であるから、農業と共存するソーラーシェアリングの農村地域にもたらすインパクトの大きさが推し量れるだろう。

ソーラーシェアリング
ソーラーシェアリングが新たなエネルギーと農業の時代を拓く

この数値を着実に達成していくためには、ソーラーシェアリング下における多様な作物の生産研究を重ねていくことも重要であるし、既存の生産技術に適合したソーラーシェアリング設備の開発と共に、ソーラーシェアリングの存在を前提とした農業機械体系を組み立てていくことも必要となってくる。

既に隣国の韓国では、日本から学び取ったソーラーシェアリングの知見を導入し、2017年には各地の農業研究所にソーラーシェアリングの実証設備を設置して作物の栽培研究を重ねてきており、わが国はこの分野で大きく遅れを取り始めている状況にある。

今後世界的にも拡大していくであろうソーラーシェアリング発祥の地であるわが国が、その立場を固め各国をリードし続けられるかどうかは、この2030年までの10年に向けた取り組み如何にかかっていると言っても過言ではない。

再生可能エネルギーの大量導入とゼロエミッションの達成に向けて、あらゆる手段を動員した迅速なアクションをスタートさせるために、まずは早期に関連する個別政策目標を固めていくと共に前例に囚われない施策を展開していくべきである。

従来の政策の延長線上でFITやFIPの制度設計を悠長に続けるのではなく、「どうすれば再生可能エネルギーの大量導入による持続可能な社会を作れるのか」という大前提に立ち返り、あらゆる選択肢と手段を並べ立てて必要な手段を講じるという意識を持たねばならない。

もはや今後、1年1年が貴重な時間であることを肝に銘じ、全ての関係主体が総力を挙げてこの時代の転換期に向き合おう。

馬上丈司
馬上丈司

1983年生まれ。千葉エコ・エネルギー株式会社代表取締役。一般社団法人太陽光発電事業者連盟専務理事。千葉大学人文社会科学研究科公共研究専攻博士後期課程を修了し、日本初となる博士(公共学)の学位を授与される。専門はエネルギー政策、公共政策、地域政策。2012年10月に大学発ベンチャーとして千葉エコ・エネルギー株式会社を設立し、国内外で自然エネルギーによる地域振興事業に携わっている。

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