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10兆円市場に伊藤忠参入 二酸化炭素分離・回収技術を国内商用化へ 脱炭素実現に向けて

10兆円市場に伊藤忠参入 二酸化炭素分離・回収技術を国内商用化へ 脱炭素実現に向けて

EnergyShift編集部
2021年05月10日

大手商社の伊藤忠商事は5月6日、半永久的にCO2を吸収・固定化できると注目される「CO2固定化技術」を持つ豪州企業と、日本国内における商用化に向け協業契約を締結した。

CO2 の「分離・回収工程」を必要としない固定化技術として注目

「CO2固定化技術」は、製鉄工程で生じる副産物(スラグ)や火力発電所で生じる石炭灰、その他カルシウムやマグネシウムを含む様々な物質(廃コンクリートなど)にCO2を吸収させることで、炭酸カルシウム等を製造する技術である。

半永久的にCO2を固定化可能であるとして、鉄鋼業界や電力業界等から世界的な脱炭素の流れを加速させる技術として注目されている。また、製造された炭酸カルシウム等は、セメント、コンクリート、建設用資材等の原材料となり、幅広い用途での活用が見込まれている。

伊藤忠商事が協業契約を結んだのは、豪州企業のMineral Carbonation International社(MCi社」)である。

MCi社は2013年の設立以来、「CO2固定化技術」に関する研究開発を実施しており、同分野において世界有数の技術・知見を有しているという。

MCi社が研究開発するCO2固定化技術は従来、同種の技術において必須であった大気中のCO2を含む気体から、CO2のみを分離・回収する「分離・回収工程」を省くことができ、高い経済性を発揮すると期待されている。そのため同社の固定化技術を用いれば、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム)、シリカ、その他の製品を安価に製造することができるとしている。

さらに、CO2をスラグや石炭灰に固定・付着させる際に化学薬品を使う必要がなく、様々な用途での使用が可能になるという。

すでに豪州連邦政府及びニューサウスウェールズ州政府が支援する同社のパイロットプラントでの実証実験において、高い経済性を伴う技術として豪州国内で高い評価を受けており、MCi社は世界での商業化に向けて準備を進めている。

伊藤忠グループ、国内外での早期商用化を目指す

日本国内でも、政府が推進する「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 」において「カーボンリサイクルは、CO2を資源として有効活用する技術でカーボンニュートラル社会実現に重要」と位置づけられており、CO2固定化技術についても高いニーズが見込まれている。

伊藤忠商事は今回の協業契約締結を機に、今後日本国内におけるネットワークを活用し、MCi社の実証プラント候補地の紹介・選定を行い、早期の商用化を目指す。さらにMCi社技術で製造された炭酸カルシウム等や、これらを使用したセメント・コンクリート等の活用、また同技術と日本国内のCO2削減需要のマッチングを図り、取引先企業のCO2削減課題の解決に寄与したい考えだ。

CO2分離回収設備に関する世界市場は2030年に約6兆円、2050年には約10兆円になると予測されている。伊藤忠商事は、拡大が予想されるCO2分離回収市場において、MCi社への資本参加や日本国外への技術展開も視野に入れ、まずは早期の商用化を目指す。

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