集合住宅の屋根はこれまで、太陽光発電の設置がなかなか進まなかった。そうした中、株式会社マメディオは、住民が太陽光発電の電気を使うことができる賃貸マンションの開発に乗り出す。太陽光発電事業を展開し、ダイレクトパワーのブランドで小売電気事業を行うメディオテックのグループ会社として、どのような事業展開を構想しているのか、開発事業本部の野島州平本部長に話をうかがった。
― 最初に、どのような賃貸マンションなのか、ご説明ください。
野島州平氏:基本は1棟あたり3階建て9戸の、木造による環境を意識した集合住宅です。屋根には太陽光パネルを設置し、発電した電気は、一括受電による電気とともに共用部と各戸に供給されます。不足する電力はダイレクトパワーが供給します。
IoT機器も標準搭載しており、スマートリモコンやセキュリティカメラ、スマートロック、温度や湿度のセンサーなどを導入し、スマートフォンのアプリと連動させます。いずれはHEMS(住宅用エネルギー管理システム)も導入していく方針で、これにより、入居者が節電できるようになります。
― 御社が賃貸マンションを運営するのでしょうか。
野島氏:そうではありません。我々が開発して、オーナーに販売することになる、いわば不動産投資です。とはいえ、建てて売っておしまい、というものではなく、オーナーと二人三脚で運営していく物件です。我々は電力供給も行いますし、太陽光発電設備についても、オーナーが所有する場合だけではなく、我々が所有する、いわば第三者所有モデルによるPPAという選択もあります。
株式会社マメディオ 開発事業本部本部長 野島州平氏
― なぜ、こうした事業に取り組むのでしょうか。
野島氏:会社として、VPP事業を指向しているということがあります。ですから、将来は蓄電池の導入ですとか、余剰電力を近隣の需要家へ販売することなども行いたいと考えています。
―1号物件はめどがたっているのでしょうか。
野島氏:何ヶ所か、土地の仕入れは終わっています。これから建築し、施工物件としてオーナーに販売していきます。
― エリアはどこでしょうか。
野島氏:関西地域、大阪や兵庫から始めています。東京は土地が高すぎるので、もう少し先になります。
― 不動産投資というと、必ずしもいいイメージではないと思う人もいるのではないでしょうか。
野島氏:1棟あたり1億円程度になりますが、例えば、サラリーマンなどを対象に、頭金ゼロで販売するような、リスクの大きい売り方はしません。最低でも頭金の1割は出していただきたいし、そのような方ではないと販売しません。
毎月手元資金の持ち出しをしないと銀行に対して借入返済が出来ないというようなものではなく、確実にお金が残るような物件にしますし、少なくとも17年間は当社が電気を供給するので、後ろめたい気持ちではお付き合いを続けられないと思います。
また、想定賃料等も周辺相場より低めに設定することで、事業計画としてはかなり手堅いものにしてあります。
我々としては、利益の薄いビジネスになりますが、再生可能エネルギー事業で利益を出していこうと考えています。
― 既築のマンションにも太陽光発電を設置することができるのでしょうか。
野島氏:メディオテックにおいて、ソラシェアダイレクトという商品を、不動産ファンドやデベロッパーに提案させていただいています。全入居者の同意を得た上で、一括受電とし、太陽光発電と新電力からの電気を供給します。17年契約のPPAということになります。
― これまで、集合住宅では太陽光発電の導入は進んでいません。太陽光の電気を各戸に供給することは難しいのではないでしょうか。
野島氏:しくみとしては難しくありません。既存の集合住宅であっても、電力会社のスマートメーターをメディオテック仕様のものに交換し、あとは既存の配線を使うだけです。むしろ、全入居者の同意を得ることの方が難しいですね。
そういう意味では、新築の方が、オーナーに対して付加価値を提供できるという点でご提案しやすいです。
― お客様の反応はいかがでしょうか。
野島氏:今年になってから、引き合いが強くなっています。ESG投資を進めたいというモードがあるからだと思います。また、無償で太陽光発電を設置するというポイントには、大手デベロッパーからも反応があります。
― 不動産投資もESG投資になっていくというのは、大切なことだと思います。こうした取り組みが、定着していくことを期待しています。
野島氏:期待に応えたいと思います。
(Interview & Text:本橋恵一、Interview & Photo:生田目美恵)
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