変動する再生可能エネルギーの増加にともない送電網の需給調整などフレキシビリティを提供するサービスの必要性が高まっている。英国のエネルギープラットフォームベンチャーKaluzaは、英国南西部の配電ネットワークオペレーター(WPD)に、蓄電池とEVによるフレキシビリティの複合サービスの提供を行う。
2020年8月24日、英国のエネルギープラットフォームベンチャーのKaluzaは、英国南西部の配電ネットワークオペレーターである、Western Power Distribution(WPD)を対象に、フレキシビリティを提供する。エネルギー資源としては、蓄電池と電気自動車(EV)をはじめ、スマートホームデバイスを組み合わせたもので、英国では初めての複合サービスになるという。
フレキシビリティは調整力としてエネルギー市場を管理するNODES(イギリスのインディペンデントな再エネ電力市場)を通じて供給される。また、サービスには地域の配電網へのV2G(EVから送配電網への電力の供給)も行う、複合的なフレキシビリティのサービスとなっている。
Kaluzaは英国の小売電気事業者であるOVO Energyのグループ会社で、AIを活用したエネルギーのインテリジェントプラットフォームを提供している。主なサービスは、EVへの充電などを、AIにより自動的に、電力価格や再エネの稼働状況に応じて行うことで、電気料金の削減やCO2の排出削減を行うというものだ。英国では、OVO Energyとともに、日産リーフとV2G機器を利用した実証試験を行っている他、フランスのEni gas e luceとも提携し、OVO Energyとともにヨーロッパ市場への展開を進めている。
今回提供するサービスは、V2G機器に加え、sonnenの蓄電池も対象として、電力ピーク時の放電とオフピーク時の充電を自動的に行うものとなっている。また、このサービスを通じて提供される調整力は、NODESの市場でリアルタイムに近い形で取引される。
Kaluzaのフレキシビリティ担当責任者であるConor Maher-McWilliams氏は、「フレキシビリティを持った低炭素技術が一般家庭に普及している一方、送配電網の需給バランスをサポートするためのデバイス間で充電を調整する効果的な方法がなかった。このサービスはそれを変え、新にスケーラブルなフレキシビリティを可能とし、数百万台のデバイスが将来的に環境負荷の小さい手ごろなエネルギーを貯蔵できるようにする」と語っている。
また、WPDの配電網システムおよびプロジェクトマネージャーであるRoger Hey氏は、今回のサービスがテクノロジーを通じて「よりクリーンで安価なエネルギーに向けて進むものである」としている。
NODESは、分散型エネルギーとフレキシビリティを取り引きできる市場を運営しており、独立した市場運営者として再生可能エネルギー発電の拡大や需要側の急激な変動への対応などの課題に取り組んでいる。
NODESのCEOであるEnno Böttcher氏は、「さまざまな種類のフレキシビリティが平等な条件で競争できる市場をつくることで、適切な価格で適切な柔軟性を適切なタイミングに提供できる市場設計を確立していく」と語っている。
(Text:本橋恵一)
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