世界的に『脱炭素』の動きが加速し、以前よりも見かける機会が増えた電気自動車(EV)。今後、自動車業界の主流になることが予想されています。
しかし、電気自動車と聞くと、「何となく電気代がかかりそう」「ガソリン車よりもコストがかかるのでは?」などと手を出しにくいイメージを持つ方が多いようです。
そこで今回は、電気自動車とガソリン車の価格や維持費に焦点を当て、電気自動車の費用について解説します。「電気自動車に買い替えるか迷っている」「コストを抑えられる方を選びたい」そんな方はぜひ参考にしてください。
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電気自動車の本体価格は約300〜400万円ほどで、100〜300万円で新車を購入できるガソリン車と比較すると値段は高いです。
しかし国や自治体による補助金制度を活用すればもっとお得なお値段で購入できます。例えば環境省が行っている補助金制度では、最大支給額は80万円です。お住まいの地域によって補助金制度の内容は異なるものの、ガソリン車とあまり大差ない価格で手に入れることができます。
電気自動車とガソリン車のランニングコストの違いについて、航続距離と燃料代の2つの観点から見ていきましょう。ただし、充電スタンドはサービス・プラン内容によって費用が異なるため、今回は自宅で充電する場合の費用のみを比較対象としています。
ガソリン車はフルに給油した状態だと600~1,500㎞ほど走行可能です。その一方で、電気自動車はフル充電をしても200~600㎞ほどしか走れません。
車種によって航続距離に違いはあるものの、ガソリン車の方が平均して長く走ることができます。
次に、電気自動車の充電費用とガソリン車の燃料代を比較してみましょう。1kWhあたりの電気料金単価を27円/kWh(※1)とし、フルで充電するのに40kWh(※2)かかると想定した場合、計算は以下になります。
27(円/kWh)×30(kWh)=1,080(円)
電気自動車の1回あたりの給油費用は1,080円です。
※1 参考:東京電力・従量電灯契約B・第2段階料金で計算
※2 参考:日産リーフ
次に、ガソリン車の1回あたりの給油費用を見ていきましょう。ガソリン単価を1Lあたり130円とし、30Lの軽自動車に給油すると、ガソリン代は以下になります。
130(円/L)×30(L)=3,900(円)
ガソリン車の1回あたりの充電費用は3,900円です。
航続距離で比較すると、ガソリン車の方が1.5〜3倍ほど長いです。電気自動車が同じ距離を走るためには1.5〜3回ほど充電する必要があります。それぞれの充電代を見ると、1.5回充電を行った場合は1,620円、3回充電を行った場合は3,240円です。ガソリン車1回あたりの給油費用は3,900円なので、ランニングコストで比較すると電気自動車の方がお得だということがわかります。
車を乗り続けるためには、メンテナンスなどの維持費用が必要になります。ガソリン車の場合は、エンジンのオイル交換が必須です。
実際に年間で見てみると、小型車で1万円程度、外国車や乗用車で2~4万円程度かかってしまいます。それ以外にも、ガソリン車には以下のようなメンテナンスが必要です。
【ガソリン車にかかるメンテナンス費用の目安】
メンテナンス(交換)内容 | 交換年数 | 交換にかかる費用 (本体代含む) |
ラジエーター本体 | 【軽自動車】6~10年 【普通車】8~12年 | 約30,000~110,000円 |
冷却水 | 【LLC】2年に一度 【スーパーLLC】新車で16万kmか7年に一度 (2回目以降は8万kmか4年に一度) | 約7,000~8,000円 |
ラジエーターキャップ | 年に1回 | 約1,000~2,000円 ※本体代のみ |
ラジエータータンク・ホース | 10万㎞前後 | 約25,000~45,000円 |
エアフィルター | 2~3万㎞前後 | 約4,000~5,000円 |
Vベルト | 5万㎞前後 | 約10,000円 |
タイミングベルト | 10万㎞前後 | 約70,000円 |
ブレーキパッド | 4万㎞前後 | 約14,000~21,000円 |
その一方で電気自動車はこれらの維持費用がかかりません。電気自動車にはエンジンがないのでエンジン周りのメンテナンスは不要ですし、フットブレーキをあまり消耗しないのでブレーキパッドなどのこまめな交換も不要です。維持費で考えると、電気自動車の方がコストメリットが大きいといえます。
電気自動車のコストを抑える一番の方法は、充電費用の節約です。充電費用を安く抑えるだけで電気自動車はかなりお得になります。自宅充電と外出先での充電の両方でコストを抑えるポイントを見ていきましょう。
コスパが一番いいのは自宅充電です。充電器のタイプによって設置費用は異なりますが、普通充電器であれば数千円から数十万円ほどで用意できます。急速充電器は数百万円以上と高価ですので、一般家庭では普通充電器を設置される方が多いです。以下の取り組みをすれば、さらに充電費用を安く抑えることができます。
電気自動車の充電スタンドの数は21000箇所ほどです(2021年7月現在)。高速道路のサービスエリアや道の駅、ショッピングセンターなどの商業施設やホテルのような宿泊施設などに設置されています。事前に充電スポットを確認しておくことをおすすめします。
充電スタンドはいくつかの種類があり、料金は運営する企業によってさまざまです。充電に必要な時間は自宅充電とそこまで違いはありません。
定額で充電のみの利用を行いたい場合は、合同会社日本充電サービスが提供する「NCS」がおすすめです。定額で日本全国のNCSの充電器を使用できます。この運営会社はTOYOTA・HONDA・日産・三菱自動車が合同で設立した企業ですので、充電器の数も非常に多いです。充電だけでなくEVやPHEVに関するサービスを受けたいとお考えの方は、日産やTOYOTA、HONDAなど各自動車メーカーが提供しているサービスをおすすめします。また、ホテルやショッピングモールにある充電器は無料で使用できるものが多いです。費用を抑えたい方はそちらを利用するといいかもしれません。
先ほども述べましたが、電気自動車を購入する際は国や自治体の補助金制度を積極的に活用しましょう。国の補助金は環境省が実施するものと経済産業省が実施するものの2種類があります。最大支給額は環境省が80万円、経済産業省が60万円です。補助金額はクリーンエネルギーの自動車区分によって上限額が決まるため、前もって条件を調べることをおすすめします。
各地方自治体によって、補助金制度の有無・補助金の対象・補助金額などが異なるため、事前に確認しておきましょう。
電気自動車は、「何だかハードルが高い」「ガソリン車よりもお金がかかりそう」などなかなか手が出しづらいと思われがちです。しかし、充電費用を節約したり、お得なプランを選んだり、国や地方自治体の補助金制度を活用したりすることで、ガソリン車よりもコストを抑えることができます。
環境にもお財布にも優しい電気自動車が、当たり前になる時代はそう遠くないかもしれません。
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