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第6次エネルギー基本計画の会議についての意見

第6次エネルギー基本計画の会議についての意見

2020年11月11日

シリーズ:エネルギー基本計画を考える

2020年10月13日、経済産業省資源エネルギー調査会基本政策分科会(第32回)において、第6次エネルギー基本計画に向けた議論が本格的にスタートした。若い世代から見て、エネルギー基本計画はどうあるべきなのか、何を期待し、何を要望するのか。Fridays For Future Tokyo の黒部睦氏にご寄稿いただいた。

少し希望も見えたが、やっぱりやばい

10月13日に行われた政府の審議会における第6次エネルギー基本計画をめぐる議論について、端的に感想を述べると「少し希望も見えたが、やっぱりやばい」といった感じだ。

私たちFridays For Future Japan(以下FFFJ)は、気温上昇を産業革命時から1.5度以内に抑えるために、政府への働きかけや学生などへの世論喚起をしている若者ムーブメントだ。FFFでは常に政府が気候変動対策をどのように取り組んでいくかに注目しており、このエネルギー基本計画に関しては今年(2020年)の5月頃からプロジェクトチームを立ち上げ様々なアプローチをしてきた。

環境問題に詳しい方や政府の動向に詳しい方などからお話を伺ったり、SNSで関連する内容を投稿したりしてきた。そして、8月には二つの大きなアクションを起こした。一つは、日本政府に対して声明文を出したこと。「①1.5度目標の達成と早急な対策の実施 ②公正な政策決定のプロセス  ③若者の意見の尊重」の3つを求める内容である。

そしてもう一つが、声明文と同じ内容で、本気の気候変動対策を求める署名を開始したことだ。この署名は、会議までに2万5,000名を超える方に賛同していただいた。

そして10月13日に審議会が開催されるとの知らせを聞き、当日は実際に会議が行われる建物の前にメンバーが集まり、スタンディングデモを行った。会議中はメンバーが通信をつないで会議を視聴した。SNSでも会議のユーチューブライブ配信を見るように呼びかけをした。

2020年10月13日のスタンディング

このままでは、今までの世代の「当たり前の生活」は保証されない

冒頭でも述べた通り、会議を見終えて一番はじめにメンバーから揃って出た言葉は「やばいね」だった。FFFJのツイッターに、良い意味でも悪い意味でも「やばい」と思った発言は文字起こしをして投稿したので、気になる方は是非見ていただきたい。

この会議において一番嬉しかったのは、村上千里委員の「今日、この建物の前にはFridays For Futureの若者たちがスタンディングをしています。気温上昇を1.5度に食い止めるための方向性を打ち出せるかどうか、まさに自分ごととしてここでの議論に注目をしています。彼らがウェブサイトで行っている本気の気候変動対策を求める署名には2万5,000件を超える署名が集まっていると聞いております」という発言である。

私達若者の声は少なくとも数人には届いており、会議に圧力をかけることができていたと分かり、アクションを起こし続けてきて良かったなと思えた。この発言を受けて、ここからさらに署名数を伸ばしこの会議に多くの若者が注目していることを伝えたいと思い、現在も署名の呼びかけに全力を尽くしている。

他にも、松村敏弘委員による「もっと(再エネを)入れるというのを本来考えなければいけないのに、2030年で思考が停止してしまっている」など、未来を見据えた意見も出ていた。

このエネルギー基本計画によって引き起こされた影響を受けるのは私たち若者だ。目先の経済に囚われず、もっと先を見てほしいというのは政府に対して常に感じているところだ。

今のままの政策では、今までの世代が過ごしてきた「当たり前の生活」は若い世代に保証されない。今の日本のエネルギー政策が大きく影響を及ぼす若い世代の将来に対して責任ある政策をとり、地球環境に最大限配慮した長期的な社会のあり方を目指した内容にすることをこれからも強く要求していきたい。

日本のエネルギー政策の重要な会議のメンバーは、平均年齢65才、約3分の2が男性というデータがあり、この偏りを政府は今すぐに自覚するべきである。未来ある選挙権のない層も含む若者全体の意見を汲み取る制度を設けることも強く求めたい。希望ある発言をした方が今後もこういったことを提案していってくれることを願う。

日本は経済面を最優先にする考え方から抜けていない?

その一方で、秋元圭吾委員による「再エネで100%賄うのは不可能だと思います」という発言や、柏木孝夫委員による「天然ガスと再エネしかないわけですから、それでやっていけるわけないわけで」など、やはり脱炭素化に消極的もしくは強く否定的な意見は多く見られた。

気温上昇を1.5度に食い止めるためには、日本が掲げる温室効果ガスの削減目標を今すぐに大幅に引き上げることが必要なのは明らかである。そのため私たちは、再生可能エネルギー100%実現に向けた抜本的な政策転換を強く求める。

会議を見ていて強く感じたのは、日本は経済面を最優先にする考え方から未だに抜けられていないということだ。世界中の国々が脱炭素化に全力で取り組む中で、日本はまだまだ石炭火力に頼り、この遅れに気づかずにむしろ誇りを覚えている人もまだいることに大変焦りを感じる。

経済優先のこの従来の構造から脱却し、各省庁・内閣府で気候変動対策を最重要課題と捉え、省庁横断的な議論を進めるための体制を整えてほしい。温暖化への対応は経済成長の制約ではなく、むしろ大きな経済成長につながるという発想の転換が早く浸透することを願っている。

菅首相の2050年カーボンゼロ(脱炭素)への期待と不安

菅首相は、10月26日に行った所信表明の中で2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを宣言した。この宣言は大きな政策転換に繋がるのではないかと大変期待している。

ただ、所信表明には2030年までの具体的な目標についての言及はなく不安要素も多い。小泉大臣も首相の発言を受けて、来年11月のCOP26まで「温室効果ガス削減目標を引き上げ、再設定する」と述べた。この目標や具体的な政策転換を決めるのはこのエネルギー基本計画の会議である。なので、今後もしっかり動向を監視しつつ、さらに多くの若者の声を届けられるよう努めていく予定だ。


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黒部睦
黒部睦

国立音楽大学 演奏・創作学科2年。高校生の頃にSDGsに心打たれ、様々なイベントや研修に参加。2019年度少年少女国連大使として活動する中で環境問題の深刻さを知る。現在はFridays For Future Tokyoのオーガナイザーとして活動中。 https://fridaysforfuture.jp

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