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プラント業界のプロジェクトを止めるCOVID-19

プラント業界のプロジェクトを止めるCOVID-19

2020/05/07

新型コロナウイルス(COVID-19)による感染症の世界的な拡大は、プラント業界にも大きな影響を与えている。化石燃料の需要減と歴史的な価格低下、建設現場の感染拡大の恐れなどによるものだ。現場では実際にどのような影響が出ているのか。業界の将来はどうなるのか。エンジニアリングビジネス誌編集長・宗 敦司氏が解説する。

入札や投資決定に遅れ

新型コロナウイルス感染症“COVID-19”の拡大が、世界のプラント建設プロジェクトを止めつつある。需要の低迷から石油・ガスの新規案件は投資できず、建設現場も動かなくなってきた。こうした状況は、エンジニアリング企業の将来展望にも影響を及ぼしそうだ。

COVID-19のさらなる感染拡大を防ぐため、世界各国で都市封鎖や自粛要請が行われ、世界のヒト・モノの流通量が激減。ガソリンやジェット燃料、ディーゼル油といった燃料油の需要が低下し、石油価格が急落した。4月21日には原油先物価格が史上初めてマイナスとなる事態となった。こうした状況のなか、世界各地の石油掘削が次々に停止されている。

米国のBaker Hughesによると、同国における掘削リグ*の稼働数は4月24日で465リグとなり、1年前の991リグから半分以下にまで減少した。欧州の北海でも石油生産が激減しており、独立系のエネルギーコンサルティング会社であるRystad Energyは、前年比で50億ドル程度の市場縮小となる予測をだしており、これにより欧州の中小規模の油田サービス会社の20%が破産する可能性があるという。既にAker Solutionsなどは、6,000人の従業員の一時的なレイオフを示唆している。

Rig Count Overview & Summary Count

* 掘削リグ: 地下に眠る石油・天然ガスを採りだすための井戸を掘る装置

LNG価格の低下がプロジェクトに深刻な打撃

日本のエンジニアリング・コントラクターにとっては、原油価格低下に連動して、LNG価格も低下しており、足下のスポットでは100万BTU当たり2$台という価格にまで低下したことの影響が大きい。これにより、新規に計画されていた大型LNGプロジェクトが延期される可能性が出てきたためだ。

例えば2020年3月期で日揮の正式受注が期待されていた、モザンビークLNGプロジェクトも最終投資決定(FID)が遅れている。LNG液化プラント2系列で年産1,500万トン規模のプラントを建設する大規模プロジェクトであり、この遅れによって日揮の2019年度受注は目標を大きく下回ることとなったと見られる。

また、カタールLNGの拡張計画では、千代田化工建設と日揮が参加する予定の価格入札が当初予定の3月から5月に延期された。しかし、現状の中東全域でのCOVID-19の感染拡大の状況を考えると、さらに延期される可能性も否定できない。

COVID-19拡大以前から、世界のLNGプロジェクトは既に停滞の兆しを見せていた。

昨年(2019年)までに多くのLNGプロジェクトが進展したことで、未着工のLNGプロジェクトでは、生産開始時点で既に需給の大幅緩和が予想されているためだ。そこにCOVID-19によるLNG価格の大幅下落が起こり、プロジェクト採算性が見通せなくなった。

実際にChevronとWoodsideによる、カナダのKitimat LNGプロジェクトではChevronが投資撤退を表明し、Woodsideも出資比率を引き下げる方針を示した。また千代田化工建設の受注が有力だったパプアニューギニアのLNG拡張計画では、原料ガス生産での価格配分を巡ってデベロッパー側と政府との交渉が中止されており、進展が不透明になっている。

ここにきて更なるLNG価格の下落は、いくつかのプロジェクトにとっては致命的な打撃となってしまうだろう。

建設も進められない

既に着工したプロジェクトも止まりつつある。

エンジニアリング各社では「現場での感染者発生の防止・感染者が出た場合の感染拡大防止については一段と警戒レベルを上げて対応中」としている。通常、建設中のプロジェクトでは、建設サイト内に1日で数千人という労働者が働くことになる密な場所であり、そこでの感染拡大のリスクは高い。そのため米国でも建設のプロジェクトが次々に停止している。

例えば日揮などが建設を手掛けているLNGカナダの建設プロジェクトで、COVID-19陽性患者が確認された。感染拡大に対応して同サイトでは、建設に携わる作業員の数を減らしていたが、感染者の発生で労働者は激減。「労働者宿舎に住む従業員の数は、約1,800人から590人に減った」という報道もされている。感染が確認された作業員は、発症とともに自主隔離したと伝えられており、他者への感染を防ぐ努力をした。しかし今後のプラント建設工事が遅れて行くことは不可避となりそうだ。

他の海外プロジェクトでも、各国の対策により、工事の中断を余儀なくされている現場も多いという。工事が中断すれば、それだけ工事のコストも増加する。今回の場合は各社ともForce Majeure(不可抗力)を宣言することで費用負担を客先と調整しようとしているが、再開の目処が見通せていない。

韓国のエンジニアリング会社が手掛けているプロジェクトも同様だ。中央日報によると、大林産業がマレーシアのポートディクソンで建設中のウルサド製油所の建設現場が中断しているほか、現代建設がジョージアで受注した発電所プロジェクトでは外国人入国禁止により、実態調査を中断せざるを得なくなったという。

巨大プラントの建設では、1日工事が遅れただけで数億円規模の追加コストが必要となる場合もある。たとえコントラクター側の責任が問われないとしても、マイルストーン毎に支払いを受けるプラント建設プロジェクトにおいては、入金が滞ることになり、財務状況を圧迫することになる。

それに加えて、COVID-19収束後のマーケットの姿にも不安が出ている。これまでの様なハイドロカーボン(炭化水素、石油や天然ガスなど液体・気体状の化石燃料)大規模プロジェクトが復活するとは限らない。そうなると、これまでの事業の大黒柱を失うことに繋がりかねない。

エンジニアリング会社は昔から「脱ハイドロカーボン」が重要な課題ではあったが、いよいよ本格的に、クリーンエネルギーに関連する、環境適合性の高い事業領域へのシフトチェンジを早急に行っていく必要も出てくるだろう。

宗敦司
宗敦司

1961年生まれ東京都東村山市出身。 1983年 和光大学人間関係学科卒業。 1990年 ㈱エンジニアリング・ジャーナル社入社。 2001年 エンジニアリングビジネス(EnB)編集長

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