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リスク支援と技術開発で「地熱革命」へ

リスク支援と技術開発で「地熱革命」へ

2020/03/10

岩手、秋田と地熱発電所の運転開始が立て続けに行われた。地熱発電は、再エネの一翼を担うものとして、改めて注目を集めつつある。しかし、そこには課題も多い。現在における地熱発電の開発状況、リスク、今後の可能性について、エンジニアリングビジネス誌編集長・宗 敦司氏が解説する。

地熱発電の規制緩和と進まない開発

2019年1月に岩手県八幡平市で、出力7,499kWの松尾八幡平地熱発電所が運転開始した*1。続いて5月には秋田県湯沢市で46,199kWという大型の山葵沢地熱発電所が、1万kWを超える設備として実に23年ぶりに運転を開始*2。さらに、8月には国内最大のバイナリー発電となる北海道函館市の南茅部地熱発電所(仮称、6,500kW)が着工、2022年春の運転開始を目指している。

松尾八幡平地熱発電所全景

一気に動き出したかのようにも見える地熱発電だが、実のところこの規制緩和にも拘わらず、その開発はなかなか進んでいない。進まない最大の理由は事業開発リスクが高いということだ。だが、政府は地熱発電の支援や技術開発を拡大している。今後の展開によっては「地熱革命」も夢ではない。

資源確保が最大のリスク

地熱発電のしくみは、発電に必要な蒸気量を確保するため複数の蒸気井を掘削し、発生した蒸気をタービン発電機に注入して発電する。途中に、蒸気を集めるギャザリング設備、熱水と蒸気を分離するセパレータ(気水分離器)があり、これらを通じて蒸気がタービンに送り込まれる。

蒸気タービンメーカーには富士電機、東芝、三菱日立パワーシステムズの3社があり、この3社が世界の地熱発電タービンの67%のシェアを持っている。一方、ギャザリング設備やセパレータなどの前処理設備は日本ではJFEエンジニアリングと日鉄エンジニアリングの2社がほぼ手掛けている。いずれの企業も、地熱発電建設に深く関わっており、実績もノウハウも充分に持っている。従って、地熱発電の建設段階には殆どリスクは無い。

地熱発電のリスクは「発電に適した蒸気がどこから出るのかわからない」ということに尽きる。地熱発電の有望地点はおおよそ解っているものの、実際に発電に使える地熱資源を掘り当てるまで、地道に掘削を続けていかなくてはならない。 資源調査開始から運転開始まで10年以上の時間が必要であり、掘削費用も、一本の井戸で数億円もの費用がかかる。掘り当てられなければ事業は頓挫し、莫大な調査費用が純損失となる。

2012年には、有望地域の多い国立・国定公園内でも一部区域において、小規模の発電設備の建設、および公園外縁部からの掘削も認められるようになった。しかし、公園外縁部から地熱資源までは「傾斜掘削」が必要となる。掘削距離が長くなり、その分掘削費用は上昇する。従って、この規制緩和でもリスクは実質低減されず、具体的な開発にまでは、なかなか繋がってこなかった。

JOGMECが掘削調査へ

資源調査のリスクを低減するため、日本政府は支援を拡大している。事業者が実施する地表での調査や掘削調査など、初期調査に対する支援を行ってきた。2019年には新たに7地点を加えた24地点を対象として認定し、資源調査の補助を実施していく。

さらに、2020年度からは独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)自身が掘削調査を行うスキームもスタートするという。これまでは、あくまで事業者が行う資源調査への補助、という位置づけであったが、石油・ガス資源開発のノウハウを持つJOGMEC自身が掘削を行い、地熱資源量を把握することで、事業者のリスクを大きく減らす事ができると期待されている。30億円の予算を確保しており、特に国立公園など開発の難易度が高い有望地点の調査を行い、新規の地熱開発の加速化を図っていく考えだ。

夢の超臨界地熱発電

一方、新たな地熱発電技術の開発も進められている。これまでも低沸点媒体を使って、熱水でも発電できるバイナリー発電や、地上から水を注入し地熱で蒸気を発生させる高温岩体発電といった技術が開発されてきたが、今、特に注目されているのは「超臨界地熱発電」だ。

超臨界地熱発電技術研究開発のイメージ(NEDO)

通常の地熱発電は地下2,000m程度に存在する地熱蒸気を利用する。それに対して超臨界地熱は、さらに深い、5,000m程度の大深度地下に存在する、約500℃の超臨界水を使って発電を行う。従来よりも高温高圧の条件となるため、発電効率が高くなり、一つの発電所あたりの出力も大きくなるだけでなく、その資源量は膨大なものと見られている。

現在、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)において、超臨界地熱ポテンシャル調査を実施中で、2050年の実用化を目指している。現在、日本の潜在的地熱資源量は2,347万kW*と言われているが、超臨界地熱発電が実現すると地熱の潜在能力はどこまで拡大するか解らない。「実現できれば、日本の電力は全てこれで賄うことができる潜在力を持つ」とも言われる、いわば夢の地熱発電技術である。

またその他にも、資源調査リスクを低減するための探査技術の向上や、発電時の設備利用率向上のための技術開発も進められている。日本は石油やガスなどの資源が無く、地下資源利用に関する技術や知見がこれまであまり積み上げられてこなかった。地熱探査技術の開発は、地下資源探査の高度化そのものであり、他の地下資源開発とも共有化可能だ。

米国で起こったシェール革命は、地下資源開発に対する知見、および技術の向上が、税制改革など国の制度とのシナジーによって起こった。地熱発電も技術開発と政府支援、FITを含めた制度をうまくマッチングしていくことで、CO2排出も出力変動も、資源輸入の心配もない「地熱革命」を起こしていく可能性がある。

* 村岡洋文,阪口圭一,駒沢正夫,佐々木進(2008):日本の熱水系資源量評価 2008.日本地熱学会 平成 20 年学術講演会講演要旨集,B01.

宗敦司
宗敦司

1961年生まれ東京都東村山市出身。 1983年 和光大学人間関係学科卒業。 1990年 ㈱エンジニアリング・ジャーナル社入社。 2001年 エンジニアリングビジネス(EnB)編集長

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