米国の大手電力会社の1つであるExelonが、2021年2月24日、送配電会社と発電会社の2つに分割することを発表した。その背景には厳しい発電市場の競争で原子力が負担となっている可能性が指摘される。
米国の大手電力会社の1つであるExelonが、2021年2月24日、送配電会社と発電会社の2つに分割することを発表した。アメリカでも大きく報道されている。
安定した収益が期待できる送配電会社Exelon Utilitiesと、ゼロカーボン電源を多く持つExelon Generationに分割することで、それぞれ独自の戦略をとれるようにしたということだが、背景には厳しい発電市場の競争で原子力が負担となっている可能性が指摘されている。
Exelonは、2022年第1四半期に、送配電事業と6つの小売電気事業の子会社で構成されたExelon Utilitiesと、原子力発電、太陽光発電、風力発電、水力発電、天然ガス火力発電などゼロカーボンないしはローカーボン電源を主体としたExelon Generationの2社に分割される。
ExelonそのものはExelon Utilitiesが引き継ぎ、Exelon Generationがスピンアウトし、株式公開を行う。
Exelonは送配電事業において、過去4年間に220億ドルを投資して送配電の近代化を進めてきたが、今後4年間でさらに270億ドルを投資する計画だ。これにより、太陽光発電や蓄電池などの送配電網へのアクセスが拡大することになる。
一方、Exelon Generationは31GWを超える発電設備を持ち、米国のゼロカーボンエネルギーの12%を供給する企業となる。脱炭素を目指す企業などにとって不可欠なパートナーになるだろう。
とりわけ、2020年には原子力発電だけで150TWhを供給しており、米国最大の原子力発電事業者となっている。こうした発電設備を通じて、米国に引き続きクリーンな電力を供給するということだ。
Exelonは、イリノイ州を拠点とするCommonwealth Edison(ComEd)の親会社であるUnicomと、ペンシルバニア州に拠点を置くPECO Energy(PECO)が2000年に合併してできた電力会社だ。現在、ComEdとPECOはいずれもExelon傘下の小売電気事業者となっている。とりわけComEdは410万人の顧客を持つ、米国有数の電力会社だ。
Exelonを急成長させたのは、原子力発電事業だ。当時、不採算だった原子力発電所を買収し、発電事業を効率化することで設備利用率を向上させ、採算がとれる事業へと転換させてきた。2000年以降、米国の原子力をリードしてきた存在といっていいだろう。
しかし近年は、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーが拡大すると同時に発電コストが下がり、原子力発電の競争力が失われてきた。また、原子力発電そのものの老朽化も進んでいる。イリノイ州にある2基の原子力発電に対しては、閉鎖の可能性が高まっているということだ。
こうした背景から、Exelonは公益事業として安定した収益が見込めるExelon Utilitiesを残し、発電事業をスピンアウトさせたという見方ができるだろう。
一方、Exelon Generationは残された原子力を安定して運用しつつ、再生可能エネルギー事業を拡大していくという戦略をとることになる。つまり、原子力から再エネへの移行が、今後は問われることになる。
(Text:本橋恵一)
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