アップル共同創業者、スティーブ・ウォズニアック氏、エネルギー&ブロックチェーンのスタートアップを創業 | EnergyShift

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アップル共同創業者、スティーブ・ウォズニアック氏、エネルギー&ブロックチェーンのスタートアップを創業

アップル共同創業者、スティーブ・ウォズニアック氏、エネルギー&ブロックチェーンのスタートアップを創業

米アップルを故スティーブ・ジョブス氏とともに創業した、スティーブ・ウォズニアック氏が、ブロックチェーンを活用し、省エネルギーサービスを提供するスタートアップ企業、Efforceを設立した。同社によると、省エネルギーあるいはエネルギー効率化の市場は2,410億ドルだが、まだ十分ではないという。では、Efforceはどのようなビジネスモデルによって、この市場を拡大しようというのだろうか。

進まない省エネルギー投資

Efforceの事業は、一口で言うとESCO(省エネルギーサービス事業)サービスをユーザー事業者に提供するためのプラットフォーム事業だ。

省エネルギーあるいはエネルギー効率化の可能性は、多くの事業所や施設にある。例えば、LED照明への切り替えや、エネルギー計測機器の設置、断熱化などの設備改修などを行い、エネルギー消費量を削減する事業所もある。

ESCOサービスとは、こうした事業所や施設をユーザーとし、設備改修やコンサルティングなどを提供。より効率的な省エネルギー施策を行い、節約された光熱費などの一部をサービス料として受け取るものだ。ユーザーとなる事業者にとっては、初期投資が不要なことも魅力だ。

ESCOサービスの問題点は、ESCO事業者側の初期投資が負担となる点だ。ESCO事業への融資を受けようとしても、金融機関は専門知識に欠けているため、なかなか融資が受けられないこともある。

省エネルギープロジェクトの市場は全世界で2,410億ドルに達しているにもかかわらず、こうした問題から十分な規模には達していない。IEA(国際エネルギー機関)によると、脱炭素社会を目指すためには2025年までに省エネルギープロジェクトへの投資額は5,840億ドルに倍増する必要があるという。

Efforceのビジネスモデルと「WOZX」トークン

Efforceの事業は、ブロックチェーン技術を活用し、こうした省エネルギープロジェクトの資金調達と実施のプロセスを合理化する。ESCO事業者と投資家とをトークン「WOZX」を使い、結びつけるイメージだ。このサービスはEfforceプラットフォームを通じて提供される。

実際の事業は以下の流れで進む。

  • ESCO事業者は、まず省エネルギープロジェクトを(プロジェクト単位で)プラットフォームに登録する。Efforceのチームは、登録されたプロジェクトを検証する。すなわち、投資ニーズの評価や予想収益の計算などを行い、「エネルギーパフォーマンス契約」を作成する。
  • Efforceプラットフォームには、検証されたプロジェクトがリストとして提供される。
  • 投資家としての参加者は、EfforceのWOZXというトークンを使用して、プロジェクトに参加する。このトークンは交換所で、USDTというステーブルコイン(価値の安定した仮想通貨)との交換で手に入れることができる。
  • Efforceは、ブロックチェーンに接続されたスマートメーターを通じて、各プロジェクトにおける省エネルギー量を測定する。この省エネルギーによる利益が、投資家であるトークン保有者に配分される。

ブロックチェーンを使うことで、プロジェクトとの間でスマートコントラクト(契約)が交わされ、透明性のあるエネルギー節約量が示されることになる。何より、ブロックチェーンと結びついたトークンを利用することで、金融機関に頼らない投資が可能になったということだ。プロジェクトの検証は、収益性の高いESCO事業を10年間経験してきたベテランによって運営されている。

今後、10億WOZXが発行され、そのうち4.5億WOZXが私募にあてられる。また、価格はこの私募によって決まるという。

ウォズニアック氏は、Efforceのプラットフォームについて「誰もが参加して世界的な省エネルギープロジェクトから経済的な利益を得て、有意義な環境変化をもたらすことができる」と語っている。


ウォズニアック氏(右から3人目)と共同創業者メンバー

Efforce

(Text:本橋恵一)

もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798064949.html

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