電取委、九州電力に業務改善指導 宮崎県延岡市による地域新電力の設立阻止の疑いで | EnergyShift

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電取委、九州電力に業務改善指導 宮崎県延岡市による地域新電力の設立阻止の疑いで

電取委、九州電力に業務改善指導 宮崎県延岡市による地域新電力の設立阻止の疑いで

EnergyShift編集部
2021年03月29日

電力・ガス取引監視等委員会は2021年3月29日、九州電力に対して業務改善指導を行なった。九州電力に対しては、宮崎県延岡市が設立を予定する地域新電力について、「容量拠出金の負担が多額になるので、赤字になる」などと関係者に説明し、設立阻止などの疑いがもたれていた。

九電「延岡市が設立する新会社の容量拠出金の負担は多額になるので、赤字になる」

九州電力は小売会社設立を阻止する目的で、2021年1月から2月までの間、「延岡市が設立する新会社の容量拠出金の負担は多額になるので、赤字になる」などと、関係者に対し説明して回った疑いがもたれていた。

宮崎県延岡市では、小売電力事業を行う地域新電力会社を設立し、低圧の一般家庭や中小事業者に対する低額できめ細かな料金プランにより地域経済の再生を図るとともに、それにより生まれる会社の利益を市に寄附することで新たな市の財源を確保すべく、約3年間検討を続けていたという。

今年2月には地域新電力の事業計画をまとめ、必要な予算案を市議会に提案する予定であった。

こうした最中、延岡市長である読谷山 洋司氏は2月24日、河野太郎規制改革担当大臣宛に「九州電力に対する調査のお願い」と題した意見書を提出するとともに、九州電力に対して厳重に抗議していた。

意見書には、下記のような記述がある。

「九州電力は「延岡市が設立する新会社の容量拠出金の負担は多額になるので、赤字になる」などと、根拠のない拠出金額を独自に試算した上、それを本市内の主な団体の長などに説明して回っています。

同社は、自社の拠出金額すら明らかにしておらず、また明らかにできる状況ではないはずにもかかわらず、設立されてもいない会社の拠出金額を試算した上で説明して回るという極めて不可解な行動をとっています。

小売会社設立を阻止する意図と思われますが、これは明らかに電力システム改革に真っ向から反する妨害行為であり、且つ地方自治を侵害する行為です」。

続けて、「その上、まだ会社設立すら行われていないため何らの基礎数値もない中、同社は本市の新会社と営業形態が類似していると思われる岡山電力株式会社(本社岡山市。低圧・小口の顧客中心に営業を行っている純粋の民間企業)のデータを無断で九州電力送配電から入手し、その供給構造を推測し、それを延岡市が設立する新会社と同様であると根拠もなく仮定して拠出金額の試算をしていますが、このデータ利用は岡山電力株式会社に何らの了解を得ることなく行われており、違法であるとともに、分社後の送配電会社から顧客データを入手するという、電力システム改革を完全に形骸化させ否定する行為です」と訴えていた。

電取委、九電は「容量拠出金の影響が加味されていない」などと説明したと認定

延岡市などの訴えを受けた電力・ガス取引監視等委員会は、九州電力に対して調査を実施。その結果、「2021年1月から同年2月までの間、宮崎県延岡市において、市内の関係者に対し、同市で設立が検討されている地域新電力の創業事業計画に関して、容量拠出金の影響が加味されていないことの説明等を行なった」と認定した。

そのうえで、電取委は「九州電力が九州地方において有する影響力に鑑みると、新規参入者の事業計画等について意見を述べ、又は説明等をする場合には、慎重かつ十分な配慮を要するものと考えられる」とした。

しかしながら、「本件は、電気事業法(昭和39年法律第170号)違反に直ちに該当するものとは認められなかったものの、以上の見地から、九州電力が実施した説明の内容も考慮し、電力の適正な取引の確保を図るため、指導を行なった」と述べている。

なお、延岡市が訴えていた「分社後の送配電会社から顧客データを入手した」疑いに関しては、電取委は、「九州電力が、九州電力送配電から他の小売電気事業者に係る情報を違法に入手し、容量拠出金試算に利用した事実は認められなかった」と結論づけた。

電力・ガス取引監視等委員会:九州電力株式会社に対する業務改善指導を実施しました
延岡市:九州電力株式会社に対する調査のお願い

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