脱炭素に向けた取り組みが加速するなか、大手生命保険や損害保険において投資先の企業が排出するCO2の実質ゼロ化や、中小企業の脱炭素化を目指す取り組みが広がっている。
約35兆円の資産を保有・運用する住友生命は、2050年度までに投資先の温室効果ガス排出量を実質ゼロにする方針を掲げている。同社は、脱炭素実現に向け6月29日には、2030年までに投資先の排出削減目標を2019年度比で42%減とする新たな目標を設定した。
達成に向けて、投融資先との対話(エンゲージメント)などを通じた脱炭素への移行を促すとともに、再生可能エネルギーの開発・導入などに資金を供給する計画だ。
これら施策を通じても脱炭素が促進されなければ、投資撤退などにより、投資先の入れ替えを行うことも辞さないという。
大手企業を中心にサプライチェーンまで含めた脱炭素が進むなか、損害保険大手の三井住友海上は今年6月から、中小企業向けの脱炭素支援を開始した。中小企業であってもCO2排出削減が遅れれば、取引先から外される可能性があるためだ。
三井住友海上では、資本力が決して厚くない中小企業に対して、CO2排出量の把握や削減目標の設定、そして脱炭素に向けた取り組み手法などを提供していく。
また、同社は普及が進むEV(電気自動車)の充電設備の故障に対して補償する、新たな自動車保険の販売も6月からスタートさせた。衝突事故によって、充電設備が故障した場合の損害補償とともに、その間の充電費用を補償するというもの。業界初だとし、EV普及の後押しにつなげたい考えだ。
大手損保の1社である損保ジャパンは、プラスチックや食品廃棄物などを原料に電気をつくる、新たな実証実験を始めた。
損保ジャパンではグループ会社とともに、オフィスから出る用紙やインクカートリッジ、あるいはきのこ培地や水草、さらに一般廃棄物などの有機廃棄物を原料にした可搬型の発電装置の開発に取り組んできた。この可搬型発電装置が完成し、6月からは長野県諏訪市での実証実験に入った。実証実験は、今後、複数の場所で行うという。
損保ジャパンでは、廃棄物発電による再エネの普及拡大とともに、国内外での装置販売など新たな事業展開を目指している。
脱炭素をめぐり、投資先企業の選別が一段と進む一方、新たな成長につなげようとする取り組みが加速している。
ニュースの最新記事