現在、プラスチックごみによる海洋生物への影響が深刻な状況となっており、また地球温暖化への影響も懸念されています。これらの問題を解決するには、プラスチックごみを減らす取り組みが必要不可欠です。
ここでは、その一歩として導入されたレジ袋有料化の制度について、スタートした理由や制度の概要から、レジ袋有料化後に見えてきた課題まで詳しく解説していきます。
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2020年7月1日より、経済産業省推進のプラスチック製買物袋(レジ袋)の有料化がスタートしました。この制度が導入された背景には、海洋プラスチックごみ問題や地球温暖化の進行などがあります。
現在人々が生活していく上で欠かせない資源のひとつであるプラスチック。そんなプラスチックが、海に住む生物に大きな影響を与えているのをご存じでしょうか。手軽で安価に生産できるプラスチックですが、利用後の処理がきちんと行われず、海へと大量に流れ出してしまっている問題があります。そのごみが海に住む生物を傷つけたり、時には死因となったりしてしまう事例がいくつも報告されています。人間の生活をより便利にしたプラスチックが、不適切な処理によって海洋の生態系を崩しつつあるのです。
経済産業省はこうした実態を危惧し、レジ袋の提供を無料から有料に変えることで、消費者にプラスチックの過剰な使用を控えるよう求めています。消費者1人ひとりがプラスチックを賢く使い、普段のライフスタイルを見直すことを目的として始まった制度なのです。
有料化の対象となるレジ袋は、購入した商品を持ち運ぶために利用される、持ち手付きのプラスチック製買物袋です。紙袋や布製の袋、持ち手のない袋などは、本制度の対象外となっています。
他にも繰り返し使用可能な厚手のレジ袋や、微生物によって海洋で分解される生分解性プラスチックでできたレジ袋など、環境性能が認められたものも対象外です。
対象かどうかの判断基準として以下の4つが設けられています。
レジ袋の価格や売上の使いみちは制度では決まっておらず、事業者自らが制度の趣旨・目的を踏まえて設定するものとされています(ただし、1枚当たり1円以下になるような価格設定は有料化に当たらない)。
レジ袋有料化の対象となる事業者は「小売業を行うこと」が判断基準となっており、フリーマーケットなどは継続性がないためこれに当たりません。しかし対象外の業種であっても、自主的な取り組みとして有料化を実施することが推奨されています。
日本トレンドリサーチが実施した「レジ袋の有料化に関するアンケート」も元に、レジ袋有料化がスタートしたことでライフスタイルがどのように変化したのか、消費者目線の意見を紹介していきます。
アンケートによると、レジ袋有料化で変化が「あった」と感じる人は51.3%で、全体の過半数を占める結果となりました。
「変化があった」と回答した人にどのような変化があったかを聞いた結果、「エコバッグを持つ習慣ができた」という回答がいくつかありました。レジ袋有料化によりエコバッグを常備する人が多くなったようです。
またレジ袋を自宅でごみ袋として利用していた人からは、「レジ袋がなくなったことでごみを減らそうという意識が芽生え、食品トレイなどをリサイクルに出すようになった」というような回答もありました。アンケートへの回答からは、レジ袋有料化によりごみのリサイクルや分別への関心が高まっていることや、自宅から出るごみ自体を減らそうとする人が増えていることも読み取れました。
レジ袋有料化から1年が経過し、消費者が本制度をどのように感じているのか調査した結果、「成功だった」が38.3%、「失敗だった」が23.1%、「どちらとも言えない」が最も多く38.7%となりました。
「成功だった」と思う理由には、「環境問題を考えて子どもに話す機会が増えた」「地球問題を考えるいい機会になった」などの回答があり、環境問題への関心の高まりが読み取れます。また「マイバッグを持ち歩くようになったことで、結果的に必要のない買い物が少なくなった」というような回答もありました。このことからレジ袋有料化により、環境問題への影響だけでなく買い物の質や量にもいい影響を感じている人がいるとわかります。
反対に「失敗だった」と思う理由には、「ごみ入れに使うためにわざわざごみ袋を購入しなければならない」というような意見がいくつかあり、ごみ箱の袋としてレジ袋を利用していた人の中には、レジ袋の代わりにプラスチック製ごみ袋を購入して使うようになった人もいるようです。また店でレジ袋の有無を聞かれるようになったことを不便に感じている声もありました。
レジ袋有料化を「成功だった」と考える消費者がいる一方、制度をスタートしたことにより顕在化した課題も存在します。レジ袋有料化に伴い環境問題への関心が高まっている今、直面している課題を知り、地球問題への考えをより深めていきましょう。
レジ袋有料化により、確かにレジ袋辞退率は増えています。しかし、レジ袋有料化の対象外の中には「バイオマス素材の配合率が25%以上」の袋が含まれており、この点が指摘される要因となっています。
バイオマス(生物由来の資源)素材について注意したいのが、「バイオマス素材のプラスチック=生分解性プラスチック」とは限らない点です。バイオマスは再生可能資源であるため、環境性能は認められていますが、必ずしもすべての製品が生分解されて自然に還るわけではありません。これにより、バイオマス素材のごみ袋が無料のままであるため、プラスチックごみの削減には直接つながっていないと指摘されているのです。
レジ袋有料化でエコバッグの使用率は高くなっていますが、自宅のごみ袋へ再利用する目的でレジ袋を購入している人も一定数いるのも事実です。また、制度を「失敗だった」と思う人の回答にもあった通り、レジ袋の代わりにプラスチック製ごみ袋を購入する人もいます。
プラスチック製買物袋が有料化しても、プラスチック製の袋への需要はまだまだ高く、消費者への負担が増えたのみのように思えます。しかしレジ袋有料化で政府が目指しているのは、あくまでライフスタイルを見直すきっかけ作りです。
例えばプラスチック製の袋ではなく、生分解性プラスチックの袋を使用するなど、環境問題を考えてライフスタイルを見直していくことはできます。レジ有料化で顕在化した課題は確かにありますが、そこから一歩踏み込み、個人ができる取り組みについて考えてみることが大切です。
現在日本のプラスチック廃棄量は主要な国・地域の中で2番目に多いといわれています。レジ袋以外にも、日常生活から出るプラスチックごみはまだまだ数多くあるのが現状です。
プラスチックごみの中でも代表的なのが、使い捨ての容器や食器です。スーパーやコンビニでは、プラスチック製のスプーンやストローが無料で提供されています。また店内の商品に使用されている食品トレーやパッケージ等にも、使い捨てできるプラスチック製品が多く使われています。普段使用しているシャンプーや洗剤の容器なども、プラスチックごみのひとつです。
個人の行動でプラスチックごみを減らすためには、「3R」を意識することが求められます。3Rとは、Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)の頭文字を取ったもので、それぞれ発生抑制・再使用・再生利用を意味しています。
例えばできる限りプラスチック製のスプーンやストローの使用を控えることで、プラスチックごみの発生を抑制することができます。またシャンプーや洗剤を毎回ボトルで購入せず詰め替え製品を賢く利用すれば、再使用が可能です。
積極的に再生プラスチックを使用することや、プラスチックを適切に分別することを意識すれば、再生利用につながります。このようにプラスチック製品を意識しライフスタイルを見直すことで、個人でもプラスチックごみを減らしていくことができます。
レジ袋有料化がスタートし、人々の間では徐々に環境問題への意識が高まりつつあります。その一方で「プラスチックごみ問題」という課題が残されているのも事実です。
日本はプラスチックごみの廃棄量が世界で2番目に多く、レジ袋だけでなく数多くのプラスチック製品が日常生活で欠かせないものとなっています。レジ袋の有料化はあくまでライフスタイルを見直すきっかけ作りであり、そこからより深く環境問題について考えることが今求められています。
個人でも「3R」を意識した行動をすることで、家庭から出るプラスチックごみを減らすことが可能です。まずは個人でできることから、環境問題への取り組みを始めてみましょう。
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