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ハワイに住宅用蓄電池6,000台の巨大VPP構築で火力発電撤廃へ スタートアップのSwell Energyのシステム導入

ハワイに住宅用蓄電池6,000台の巨大VPP構築で火力発電撤廃へ スタートアップのSwell Energyのシステム導入

2021/02/03

2045年に再生可能エネルギー100%を目指す米国ハワイ州では、6,000台の住宅用蓄電池を導入し、VPP(仮想発電所)によるサービスを開始する。大規模な商用VPPを提供するのは、米国ベンチャーのSwell Energyだ。こうした先進的なシステムが導入される背景には、ハワイならではの事情もある。YSエネルギー・リサーチ代表の山藤泰氏が詳しく解説する。

ハワイ州で屋根上太陽光発電が急速に増えた理由

1891年に設立されたという長い歴史を持つハワイ電力は、現在ハワイ諸島全域に電力を供給しており、95%ほどのマーケットシェアを有している。総顧客件数は2019年末時点で465,466。その内、オアフ島に約306,000、マウイ島に73,000、ハワイ島に86,500という配分になっている。

同社は、これまで火力発電(および若干の水力)による電力の供給をしていたが、燃料である石油は本土から船で持ち込まざるを得ず、米国でも最も高い電気料金になっている。(米国本土の家庭向け電気料金は10~20セント/kWhだが、ハワイ州の電気料金は30セント/kWhを越える)。

そのため、太陽光発電が商品化されると、パネルを自宅に設置する顧客が急速に増えていった。

住宅用太陽光発電が普及し、ハワイ電力は収入が減りユーザーを失う

顧客が消費する電力よりも太陽光発電の発電量が多くなったときには、再エネ促進策としてネットメータリング(Net Metering)制度が適用されていたため、電力が送配電系統に逆流してしまう。その分の電力は、電力事業から購入する電力と相殺されるため、規模の大きい発電パネルを自宅に設置する顧客が多かった。

さらに、蓄電池の価格が下がってくると、太陽光パネルに大きめの蓄電池を取り付け、ハワイ電力の送配電系統から切り離して、太陽光発電だけで電力を賄うところも出てきた。

ハワイ電力から見ると、顧客を失い、電力収入が減ることになる。

電力収入という面では、ネットメータリング制度下では、系統に逆流する電力分だけハワイ電力の収入が減ることになるため、2018年10月から、新規に太陽光発電を設置する顧客からの逆流を認めない制度を導入している。

しかし、顧客の設置する太陽光発電の規模はどんどん拡大している。

下図で見るように、2019年には、顧客が設置する再生可能エネルギーによる発電設備規模の総数(若干の風力発電も含まれる)が、ハワイ電力が保有する再生可能エネルギー発電設備規模とほぼ同じにまでなっている。


黄色の部分が顧客側で発電した太陽光発電と風力発電。ほかはハワイ電力の発電設備 ハワイ電力ウェブサイトより

この図でみると、ハワイ電力管内にある変動性再エネ(太陽・風力)発電設備が再生可能エネルギー発電の全体に占める比率は79.5%にもなる(顧客の49.4%+ハワイ電力設備の21.3%(風力)、太陽光8.8%=79.5%)。

この発電設備からの出力は天候に左右されるのだから、電力需要と発電量をピッタリ一致させる必要がある送電系統制御は極めて難しくなる。それを行うのはハワイ電力だから、広域停電が起きないようにするのに必死の状況になっていた。

最大級の住宅向けVPP契約をカリフォルニアのスタートアップが締結

この電力安定供給が危機的状況にあるのをビジネスチャンスにしたのが、カリフォルニア州ベニスビーチにあるスタートアップ、Swell Energy社だ。

4億5,000万ドルを投じて6,000戸の建物に蓄電池を設置し、太陽光発電と併用させながら系統に接続し、全部の蓄電池を情報通信網で接続してハワイ電力の指令に応じた蓄電・放電制御をするという施策をハワイ電力に提案したのだ(ハワイ電力との契約金額は2,500万ドルとなっている)。

Swell Energyのサービス紹介

この系統制御を支援するアンシラリーサービスをハワイ電力が購入するのだが、これが可能となるためには、ハワイ州の電力事業規制当局の認可が必要となる。

ただ、2030年までに州内の電力の再生可能エネルギーを30%、2045年までに再エネ100%にする目標を設定しているハワイ州としても歓迎すべきことであり、このほど認可されたようだ。

25MWの太陽光発電と80MW/100MWhの蓄電池によるVPPが系統接続

これが完成すると、25MWの太陽光発電と80MW/100MWhの蓄電池で構成される仮想発電所(VPP)がハワイ電力の送電系統に接続されることになり、変動性再エネの出力変動を制御して需給バランスをとるのが容易になる。

ハワイの強烈な太陽を受けて急速に発電量が増え、電力需要を大きく上回っても、この蓄電池がその余剰分を蓄電し、夜になって太陽光発電が発電しなくなった時に、電力需要に対応して放電し、送電網に供給される。また、必要に応じて、風力発電の電気を吸収する。

ハワイ州内の火力発電所の全撤廃へ道筋をつける

この事業が実証されれば、ハワイ州内の火力発電設備を全てなくすというハワイ州当局の構想を実現することを可能とする道筋も見えてくるだろう。

この事業の第1フェーズは、住宅用太陽光発電会社のRevoluSunと提携してスタートするという。その後、どのようなテンポで進展するかについては不明だが、発電パネルを設置しようとする住民にも魅力的な条件を準備するだろうから、ハワイ州内で消費される電力に占める再エネ比率がさらに上昇することは確かだ。

一方、このプロジェクトの進展によって、ハワイ電力が供給する電力の価格がどのように推移するかは分からない。だが長期的に見ると、下がる方向に向かうのではないだろうか。今後の動向を注視したい。

関連記事
ハワイ州の再エネ動向について:アメリカ再エネビジネス最前線

参照
Swell Energy "Hawaii PUC Approves Swell Energy’s Grid Services Contract with Hawaiian Electric"

山藤泰
山藤泰

1961年大阪ガス株式会社入社。1980年代に40kWリン酸型燃料電池のフィールドテスト責任者、1985年ロンドン事務所長、1994年エネルギー・文化研究所長を経て2001年退社。2006年YSエネルギー・リサーチ代表。 最近の訳書に「スモール・イズ・プロフィタブル」(省エネルギーセンター 2005年) 「新しい火の創造」(ダイヤモンド社 2012年)。最近の著書では、「よくわかるスマートグリッドの基本と仕組み」(秀和システム2011年改訂)など、訳書・著書多数。

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