英国では、再生可能エネルギー企業のDraxによる、世界最大のBECCS(バイオマスエネルギーCO2回収貯留)プロジェクトが進められている。
BECCSとは、カーボンニュートラルなバイオマスエネルギーを発電などで利用した上で、発生したCO2を回収・貯留するシステムで、カーボンマイナスとなる。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書などにおいては、こうしたカーボンマイナスの技術なしには、カーボンニュートラルの達成は難しいとされている。
2021年9月23日、Draxは事業におけるサプライチェーンの80%を英国内から調達することを発表。また、これに先立つ9月20日には、英国の全国農業者連合(NFU)と協力して、燃料用の作物の栽培を拡大することを発表した。
Draxは英国内で、バイオマスの他に、揚水発電を含む水力発電などを運用する、再エネ大手企業の1つで、北米にも進出している。また、イングランドのノースヨークシャーにある石炭火力発電所をバイオマス発電所に転換した実績を持っている。同社が近年取り組んでいるものが、BECCSだ。
バイオマス事業の場合、日本では輸入バイオマスの利用が増加しているが、輸入にあたって輸送などによるCO2排出や、燃料生産国での環境破壊が懸念されている。
これに対し、Draxは食用作物に適さない土地などでエネルギー作物を栽培し、農業振興につなげると同時に、バイオマス燃料を国内で確保することにもなる。エネルギー作物としては、ススキなどが挙がっている。
また、燃料にとどまらず、数十億ポンドとなる、エネルギー設備の開発にあたっての鉄鋼や断熱材などの建設資材や電気など、サプライチェーンの80%を国内からの調達にすることで、およそ1万人の雇用が創出されるという。
DraxによるBECCSプロジェクトは、早ければ2024年に建設が開始され、2027年に稼働するという。また、2番目のプロジェクトについても、2030年に稼働する計画だ。これにより、年間800万トンのCO2を大気中から除去できるという。
計画そのものは、2022年に発表される予定だ。
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