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脱化石燃料だからこそ、次のビジネスチャンスがある カーボンニュートラル時代のプラント・エンジニアリングとは

脱化石燃料だからこそ、次のビジネスチャンスがある カーボンニュートラル時代のプラント・エンジニアリングとは

2021/07/19

油田やガス田、発電所、石油化学など、化石燃料とはきっても切り離せないのが、プラント・エンジニアリング業界だ。したがって、2050年カーボンニュートラルで市場が縮小していくのか、と思われそうだが、そんなことはない。例えばCO2を回収することで、ブルー水素やゼロエミッション火力発電を実現できる。プラント業界の未来のビジョンについて、「エンジニアリングビジネス」編集長の宗敦司氏が解説する。

CO2回収は脱炭素エンジニアリングの核に

石油や天然ガス等の化石資源ベースのプラントの建設を事業の中心としてきたプラント・エンジニアリング業界だが、脱炭素化の加速によって市場が大きく変化。従来型のプラントビジネスは継続性が見込めなくなった。

この状況を受けてエンジニアリング業界は事業を根底から見直す必要に迫られ、新たな経営ビジョンを策定してきた。

将来ビジョンとして各社は石油・ガス、石油化学中心の事業ポートフォリオから、水素・アンモニア、カーボンリサイクル、再生可能エネルギー、ライフサイエンス、デジタルトランスフォーメーション(DX)などの分野での育成を打ち出し、具体化のための活動を活発化している。

この事業変革の中でカギとなる技術の一つがCO2回収技術だ。

CCS付きでLNG計画を推進

これまで日本が得意としてきた大規模LNGプラントでは新型コロナの影響などで2020年の最終投資決定はわずか1件にとどまった。今年はカタールの大規模LNGプロジェクトが発注となったものの、最終投資決定が予定されていた案件の約半分は先送り、もしくは中断となっている。

そうした状況の中でも、具体化に動き出そうとしているプロジェクトには、一つの共通点がある。CO2回収装置を付設する計画を付け加えていることだ。

実際、カタールのLNGプロジェクトでは、受注した千代田化工建設がCO2回収装置の設置を明らかにしている。また米国で計画中のリオ・グランデLNGプロジェクトもCO2回収装置を付けてCCS(CO2回収貯留)を行なうと発表した。同じく米国のベンチャーグローバルLNGもCCSを含めた計画として、いずれも今年中の最終投資決定を予定している。

逆にCO2回収装置の付設を表明していないプロジェクトが、最終投資決定を先送りしているように見える。

急速な脱炭素化の中で、今後通常のLNGは販売が難しくなる可能性がある。CCSを行なうことで、LNGサプライヤーは通常のLNGの供給に加えて、カーボンニュートラルLNGを販売することができる。つまりLNGの製品ポートフォリオを拡げることができる訳だ。

そうすることで、LNGの引取先を確保してプロジェクトの採算性を確保し、計画の具体化を急いでいる。脱炭素化の急速な進展は、LNGプロジェクトの具体化が遅れれば遅れるほど、LNGの長期引取先の確保が難しくなる、という見方がある。

この動きはエンジニアリング会社にとっては、通常のプラント建設に、CO2回収装置が加わることになるため、それだけ受注規模が大きくなる。今後さらにカーボンニュートラルLNGのニーズが拡大すれば、既設のLNGプラントにCO2回収装置を追加で設置する案件が出てくることもあり得る。

CO2回収装置を取り込んで行くことは、今後のLNG案件獲得のためには必須であり、それはエンジニアリング会社にとってチャンスとなる。

CO2原料化にも取り組み

とはいえ、LNGプラント市場そのものは長期的には失われていく。ただCO2回収技術はカーボンリサイクルに必須の技術であるため、LNGだけでなく、その先の脱炭素化のなかで一つの重要なメニューとなりうる

2050年カーボンニュートラルを宣言した日揮ホールディングスは、石油・ガス分野の中心がCO2回収となっていくと予想している。同社では化学吸収法による高圧再生型CO2回収技術“HiPact”やゼオライト膜を使ったCO2分離技術を商用化し、LNGの他に合成ガス経由で各種化学品などの製造も視野に入れている。

回収したCO2は水素と反応させることでメタン製造が可能となる。これについては日立造船と東北大学が1995年に実証を行なうなど、世界に先駆けて取り組んできた。日立造船は先般、民間企業(東京ガス)向けに初めてのメタネーション設備を受注。本格的な販売活動が開始されたところだ。


HiPact 実証実験をおこなったINPEX 越路原プラント 日揮技術ジャーナル Vol.1 No.3(2011)より

またCO2を電気分解して一酸化炭素を生成する技術を東芝が開発した。これによって発生した一酸化炭素と、水の電気分解による水素による合成ガスを原料とすることで、カーボンニュートラルな各種化学品や燃料が製造可能だ。

東洋エンジニアリングでは、東芝と連携して、回収CO2とグリーン水素を原料に、FT合成技術を使った石油製品や化学品原料の製造チェーンの構築に取り組んでいる。FT技術はメタネーション同様、歴史的に古い技術ではあるが、脱炭素化で脚光を浴びて、改良が急速に進んでいる。

カーボンマイナスへの展開

三菱重工エンジニアリングは、英国の発電事業者であるDraxが保有するバイオマス発電向けにCO2回収装置を供給することとなった。

同計画はBECCS(Bio Energy with Carbon dioxide Capture and Storage)プロジェクトと呼ばれているもので、世界で初めてとなる、商用規模でのカーボンマイナス発電の実現を目指すものとなる。

また日本国内でも、東芝エネルギーシステムズは、東芝グループ企業であるシグマパワー有明の三川発電所でバイオマスCCSプロジェクトの実証試験を昨年10月から開始している。


シグマパワー有明 三川発電所(東芝エネルギーシステムズ プレスリリースより)

これまではアイデアだけの存在であったカーボンネガティブが、いよいよ具体的な形を取ろうとしている。

このように、CO2回収が今後の脱炭素の中で主要な技術の一つとして位置づけられる。そのため、現状ではまだCO2回収は経済性が成立していないにも拘わらず、日本のみならず欧米企業もその開発と実用化を目指している。

炭素税などのカーボンプライシングが具体化すると、CO2回収は採算性が高まることになる。さらにCO2の原料化でカーボンニュートラル製品チェーンとしての付加価値が上がっていく可能性も十分にあり、そのチェーンの様々な部分でエンジニアリング業が活躍できる。

化石資源ベースのプロジェクトは今後シュリンクしていくことがほぼ確実となったエンジニアリング業界にとって、次世代のプロジェクトビジネスのコアの一つとしてCO2回収は期待されている技術だ。

宗敦司
宗敦司

1961年生まれ東京都東村山市出身。 1983年 和光大学人間関係学科卒業。 1990年 ㈱エンジニアリング・ジャーナル社入社。 2001年 エンジニアリングビジネス(EnB)編集長

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