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「気候変動対応は中央銀行の使命」 各国中銀が脱炭素に本格化

「気候変動対応は中央銀行の使命」 各国中銀が脱炭素に本格化

2021年06月29日

各国の中央銀行による気候変動対策が本格化しつつある。脱炭素に向けた取り組みは欧州各国の中銀だけではなく、日本銀行、アメリカFRB(連邦準備制度理事会)などでも加速している。みずほグループの大手資産運用会社であるアセットマネジメントOneのレポートをもとに解説する。

気候変動対策に最も先進的なのが欧州だ。

オランダ中央銀行は2018年、気候変動や低炭素社会の移行によって、どれだけの経済損失が発生するのか検証するストレステストを世界で初めて実施した。イングランド銀行(BOE)も今年2021年、ストレステストの実施を発表するとともに、社債購入の条件のひとつに企業のCO2排出削減計画を加える方針を示した。さらにBOEの責務や政策目標に脱炭素社会への移行を追加する考えだ。

ドイツやフランスなどユーロ圏19ヶ国の金融政策を担うヨーロッパ中央銀行(ECB)も2021年半ばまでにストレステストの結果を公表する予定だ。また環境分野に資金の使い道を限った「グリーンボンド」の本格的な購入なども検討している。

一方、欧州に比べて気候変動対策に消極的だったアメリカでも、バイデン政権の発足に伴い、取り組みが強化されつつある。FRBは気候変動リスクを研究し、知見を深めるための監督・気候委員会や、金融システム上のリスク検討に向けて金融安定気候委員会を設置する方針だ。

気候変動は経済社会に甚大な影響を及ぼす

日銀も今年6月の金融政策決定会合において、気候変動対策への投融資を後押しするため、新たな資金供給の導入を決めた。

会合時の主な意見が6月28日公表されたが、政策委員からは「気候変動は自然災害の頻発などを通じて経済・物価・金融に甚大な影響を及ぼしうる。気候変動対応は、国民経済の健全な発展やマクロ経済の安定という中央銀行の使命に関連づけられるべきである」といった積極的な意見が相次いでいた。

気候変動対応を中銀の使命とする動きは欧州などでも広がっている。

BOEに続いて、ECBでも、近く明らかになる金融政策の戦略レビューにおいて、気候変動対応を政策目標に盛り込む可能性があるという。

一方、FRBのパウエル議長は、「気候変動問題は金融政策で直接的に考慮するものではない」という慎重姿勢を崩していない。ただし、「ECBやBOEの取り組みに具体的な進展や効果が見られれば、慎重姿勢から流れは逆転する可能性がある」と指摘する専門家もおり、中銀による脱炭素政策は今後も加速する見込みだ。

EnergyShift編集部
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