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太陽光発電のメンテナンス(O&M)は必要?

太陽光発電のメンテナンス(O&M)は必要?

2021年03月03日

以前は「太陽光発電はメンテナンスフリーだ」といわれていました。しかし、実際のところ太陽光発電所はメンテナンスフリーではありません。それどころか、メンテナンスを怠れば多数の問題を引き起こし、太陽光発電を継続できない状態になってしまうのです。

ここでは、太陽光発電のメンテナンスの必要性や費用の目安、どういった業者に依頼すべきかについてご説明します。

太陽光発電のメンテナンスは必要です!

太陽光発電には設備機器が少ないため、費用や労力がかかる太陽光発電のメンテナンスは「やらなくていい」あるいは「できる限り避けたい」と思う人は、少なくないかもしれません。しかし、安定して発電を続けていくためには、太陽光発電のメンテナンスが必要です。 以前は、メンテナンスフリーだと思われていた太陽光発電ですが、実際には、メンテナンスを怠れば発電量の低下を始めとする様々な問題が起こります。

そもそも売電を目的として運用される太陽光発電所は、2017年に施行された改正FIT法によりメンテナンスが義務化されており、メンテナンスを実施するか否かは各々の裁量で判断するものではないのです。 仮に、メンテナンスを怠った場合は指導や改善命令、FIT制度の認定取り消しが行われる可能性があります。発電量維持の観点、およびルール上の観点のどちらから考えても、メンテナンスは必要だといえるでしょう。

なお、太陽光発電所の維持にまつわる保守点検の推奨案は、技術資料として「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」から閲覧できます。

メンテナンスをするメリット

太陽光発電所のメンテナンスをするメリットは大きく2つ挙げられます。

  • 内的要因・外的要因による発電量の低下を阻止できる
  • 太陽光パネルの焼損・火災を防止できる

内的要因とは、設備そのものに発生する初期不良や経年劣化、故障といったもの。一方、外的要因は落雷や強風、積雪、塩害、地震といった自然災害に加え、ほこり・落ち葉・鳥のふん・植物の成長・獣害・虫害・盗難・落下物などが該当します。これらは、いずれも太陽光パネルの発電量を低下させる原因となり、放置する期間が長くなるほど本来得られたはずの発電量を損失してしまう結果に繋がるのです。さらに、上記の事象を放置すると、後述する「ホットスポット」と呼ばれる現象を招き、太陽光パネルの焦げ付きを誘発します。
普段から定期的にメンテナンスを実施するメリットは、上記のような問題の前兆をいち早く察知して、早い段階から対応できることです。

メンテナンスを怠った場合の影響

太陽光発電所のメンテナンスを怠った場合、後々に大きなトラブルを招く以下の問題に気付けません。

  • 端子の接続不良・固定箇所の緩み
  • 太陽光パネルの表面部分に汚れが付着する
  • 設備周辺の雑草が伸びて、太陽光パネルに影を落とす

いずれも、太陽光発電の運用に支障をきたすトラブルに繋がるものばかり。放置すれば、金銭的な損失を被るだけでなく、近隣に迷惑をかける大事故を招きます。

端子の接続不良・固定箇所の緩み

メンテナンス時の点検に見落としがあり、端子の接続不良が放置された場合、ショートや漏電を招き火災の原因となります。

また、固定箇所の緩みに気付かず、強風によって設備の一部が飛散し、近隣住宅や歩行者に被害を与える可能性も考えられます。太陽光発電所は、ある程度の強風には耐えられるよう設計されているものの、メンテナンスを怠れば下記画像のように大破する確率は跳ね上がるのです。

今夏の「被災太陽光」集計、大阪・和歌山は台風21号で7%停止

*日経XTECH「今夏の「被災太陽光」集計、大阪・和歌山は台風21号で7%停止

こうして設備が吹き飛ばされる理由は、固定器具の緩みのほか、洗堀、複数種の金属が接している部分に電蝕(腐蝕)が起こり、ボルトを始めとする固定器具が脆くなる現象も挙げられます。いずれも、メンテナンスを実施していれば、早期発見・早期対応ができるものばかりです。

太陽光パネルの表面部分に汚れが付着する

太陽光パネルの表面部分に落ち葉や鳥のフンなどの汚れが付着すると、太陽光パネルに照射される太陽光を遮ることとなり発電量が低下します。 また、汚れが付着した箇所は、発電ができないことを原因として「電気抵抗」が高まり、電流を通しづらくなります。その結果、電流が通りづらい箇所は電気が熱に変換されて、局所的に高熱になる「ホットスポット」が発生するのです。ホットスポットがもたらす悪影響は、主に2つ。

  • 高熱部分を中心として発電効率が低下する
  • 太陽光パネルの焼損・火災が発生する原因になり得る

太陽光パネルは、パネル表面が高熱になるほど発電効率が低下します。そのため、ホットスポットによって太陽光パネルが高温状態にあるとき、本来持っているポテンシャルを発揮できないのです。
下記画像を見れば、モジュール(太陽光パネル)の温度に比例して、出力が変動する様子を読み取れます。

住宅用太陽光発電の設計と施工

*太陽光発電協会「住宅用太陽光発電の設計と施工

さらに、ホットスポットによる発熱箇所に、燃えやすい落ち葉や枯れ草が溜まることで、太陽光パネルの表面が焦げ付いたり発火したりといった事態を招きます。
多少の汚れは大丈夫だろうと放置した結果、太陽光発電所とその周辺に大きな被害をもたらす可能性は大いにあるのです。

設備周辺の雑草が伸びて、太陽光パネルに影を落とす

太陽光発電所そのものの点検だけでなく、設備周辺に生える雑草の処理も大切なメンテナンスの1つです。
背丈が高くなった雑草は、太陽光パネルに影を作る原因となって発電量を低下させるほか、前述したホットスポットによる火災の火種になることから、こまめに処理する意識が求められます。
また、雑草が隣家付近にまで伸びれば近隣トラブルの原因となり、周囲一帯の景観を損ねるとして批判の対象になりかねません。

メンテナンスの実施事項と費用相場

個人規模で運用されることの多い低圧物件(10kW~50kW未満)の場合、太陽光発電所におけるメンテナンスの実施事項、費用の目安は以下の通りです。

実施事項内容費用の目安
定期点検機器の損傷・劣化・異常を確認年間10~15万円
除草作業設備周辺の草木を処理1㎡あたり100円程度~
(草刈りの場合)
パネル清掃パネル表面の汚れを洗浄1kWあたり2,000~5,000円

上記は目安であり、これより依頼料が安くなるケース、高くなるケースは多々あります。たとえば、定期点検も点検を年に1回行うプラン、点検・巡回を複数回行うプランがあり、当然ながら回数が異なれば料金体系はまったく違います。

そのほか、除草作業も選ぶプランによって料金が変わりやすいメンテナンスの1つ。草刈り以外にも、除草シートを敷いたりコンクリート工事で埋めたり、雑草を抑えるカバープランツを植えたりなど、手段は多様です。ただし、広い範囲に除草剤をもちいる場合、近隣住宅の植物・農地に悪影響を及ぼす懸念があるため、事前に了解を得ておくべきでしょう。

年間でどのくらいのメンテナンス費用が掛かる?

低圧物件(10kW~50kW未満)の場合、年間のメンテナンス費用は10~20万円程度がボリュームゾーンです。 あくまで目安であり、メンテナンス費用は太陽光発電所の設置地域、あるいは発電設備そのものの状態によって数万円単位で変動するものの、これを基準として割高・割安を判断できるため「目安の1つ」として念頭に置いておくことを推奨します。

高圧・特別高圧(特高)の場合は、こちらからお問い合わせください。

機動力の高いスポット契約のメンテナンスも要検討 

太陽光発電のメンテナンスと聞けば「年間契約」をイメージしがちですが、依頼するメンテナンス業者によってはスポットで作業を依頼できます。単発で除草作業や除雪を依頼したり、ドローンを使用して目視では難しい点検を依頼したりといった、個別のニーズに応えてくれる機動力の高いメンテナンス業者が増えてきているのです。
スポットでメンテナンスを依頼するメリットは、以下の通りいくつかあります。

  • 長期契約ではないため導入のハードルが低い
  • メンテナンスを必要十分な回数にとどめてコストカットができる
  • 太陽光発電所の運用環境に応じて内容をカスタマイズしやすい

長期契約を結んでメンテナンスを依頼したとき、メンテナンス業者の仕事の品質に満足できなかったとしても、金銭的な問題や心理的抵抗から依頼先の切り替えが困難なケースがあります。スポットでメンテナンスを依頼すれば、いわゆる「お試し」に近いイメージで気軽に作業を任せられるため、仕事の品質に満足できなければ次回から別のメンテナンス業者に切り替えることが可能です。

また、継続的な契約ではなく単発で依頼することで、メンテナンスを必要十分な回数にとどめてコストを抑えられます。メンテナンスは必要であるものの、毎年何らかのトラブルが発生するわけではないため、スポットでメンテナンスを依頼する体制に切り替える形も有効でしょう。

以下は、メンテナンスのスポットプランを提供する企業が公表した、20年あたりのメンテナンス費用を試算したもの。

ケース20年間の総費用1年あたりの費用
毎年、継続して契約する場合240万円12万円
定期点検を2年ごとに行う場合95万円4.7万円

*ソーラーデポ

毎年継続して契約するケースと比較して、スポットでの依頼を活用したケースでは、1年あたりの費用が半額以下になる計算。 事業用太陽光発電のFIT期間である20年間で費用を比較すれば、メンテナンスの総費用は100万円単位で変わることから、スポットでのメンテナンスはコストカットの方法として検討する価値があるはずです。 こうして太陽光発電所の運用環境にあわせ、内容をカスタマイズしつつメンテナンスを実行できる点で、スポット契約によるメンテナンスの依頼はメリットがあります。

スポットでメンテナンスを依頼したい方はこちらからお問い合わせください。

万が一のトラブルを懸念するなら年間契約がベター

スポットのメンテナンスは、活用次第で金銭的な負担を抑えられる選択肢であるものの、年間契約によるこまめな点検体制に比べてトラブル発見の機会は減少します。

そのため、点検体制を縮小化することなく、未然のトラブル回避を最優先とする慎重な姿勢を取るなら、年間契約がベターな選択肢だといえるでしょう。 すべてのケースにおいて、スポット契約が最適解となるわけではない点に留意してください。

メンテナンスを依頼する業者は慎重に選ぼう

ここまでご説明したように、入念にメンテナンスしているか否かが、太陽光発電所の「ポテンシャルを最大限活用しつつ運用できる期間」を決めます。つまり、メンテナンスのクオリティが、太陽光発電を用いた投資の正否を左右するのです。 これらの理由から、メンテナンスを依頼する業者選びは重要なポイントであるため、以下に注意しつつ慎重に進めることをおすすめします。

  • いきなり長期契約を結ばない
  • 実績を開示してくれる業者を選ぶ
  • 複数の業者を比較検討する

それぞれ、どういった理由があるのかご説明します。

いきなり長期契約を結ばない

依頼先のメンテナンス業者が、どれほどのクオリティでメンテナンスを行ってくれるのか分からないまま、長期契約を結ぶ行為はハイリスクです。
単発依頼に関する解説部分でも述べたように、長期契約を破棄して新たなメンテナンス業者へ依頼する選択は、スポットで依頼するよりもスイッチングコストが高いからです。
長期契約を結ぶことで得られる特典が用意されていたとしても、いきなり複数年単位で契約することは控えて、メンテナンス業者の技術力を見極める期間を設けることを推奨します。

実績を開示してくれる業者を選ぶ

メンテナンス業者にかかわらず、あらゆる業界で「目に見える実績」は信用力の高さとして評価されます。 迷うことなく実績を開示してくれる業者は、すでに多方から信頼を集めており、自社のメンテナンス業務に自信を持っていると考えられます。一方、実績を開示しない業者は、実績が乏しくメンテナンスのノウハウが成熟していないと考えられるのです。
実際のところ、実績を開示しないことで「メンテナンスのノウハウがない」と断定はできないものの、実績を開示しない業者より、実績を開示してくれる業者のほうが信頼できることは確かです。

複数の業者を比較検討する

優良なメンテナンス業者を探すのであれば、複数の業者に問い合わせをして比較検討することをおすすめします。メンテナンスの対応範囲、妥当な価格設定は複数社を比較しなければイメージしづらく、最初に問い合わせた一社がベストな選択である可能性は決して高くないからです。
太陽光発電所という高額な資産の管理を委ねるからこそ、許容範囲内の価格設定でありつつも、メンテナンス内容が充実している業者と契約できれば理想的です。

メンテナンスを自分でするのはおすすめしません!

太陽光発電所は繊細な機器の集まりであるため、知識がないままメンテナンスを行うことは困難です。それどころか、誤った方法でメンテナンスを実施し、かえってトラブルの原因を増やす結果に繋がりかねません。更に、太陽光パネルは想像以上にデリケートなので、自己判断でメンテナンスをするとメーカー保証の適用が受けられないケースもあり注意が必要です。

例えば、清掃をするため太陽光パネルの上に乗って清掃作業をすれば、場合によっては作業者の体重によって太陽光パネルにマイクロクラックと呼ばれる小さなヒビが入るのです。マイクロクラックは目に見えず、すぐに大きな異変をもたらす可能性は低いですが、後々に発電量低下を招く原因となります。 やむを得ないケースでは、ガラス面を踏まないよう注意して太陽光パネル上で清掃を行うことはありますが、これはプロであっても極力避ける行為です。

知識が乏しいにもかかわらず見よう見まねで清掃作業をすれば、太陽光発電所の性能を損ねる懸念があるため、メンテナンスの依頼料は必要経費と割り切って、専門業者に依頼することを強く推奨します。その際にも複数の専門業者に問い合わせて、相見積もりをとるといいでしょう。

おわりに

太陽光発電所は、メンテナンス業務を外注できる「手がかからない事業」ではあるものの、決してメンテナンスフリーではありません。ご説明したように、メンテナンスを怠れば発電力の低下や事故を招き、事業を継続できない事態に陥ってしまうのです。 発電所の所有者のなかには、知識を身に付けて自身でメンテナンスを行い、コストカットに励むケースもありますが、重要な作業であるだけにメンテナンス業者へ依頼することをおすすめします。

EnergyShift編集部
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