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アメリカ当局、テスラの自動運転支援システムを正式調査 中国ではリコールも 好調な決算のその裏で何が起きているのか

アメリカ当局、テスラの自動運転支援システムを正式調査 中国ではリコールも 好調な決算のその裏で何が起きているのか

2021/08/18

テスラの好調が続いている。2020年もEV売り上げ世界一だったが、今年の車種別売り上げではテスラ・モデル3が目下の世界一の売り上げになっている。もちろん業績も好調。7月27日に発表された第二期決算の内容も非常に良かった。

飛ぶ鳥を落とす勢いのテスラだが、気になるニュースが入ってきた。アメリカ政府が、テスラの自動運転技術の安全性について公式調査に入る、というのだ。中国ではテスラのリコールもあった。テスラに何が起きているのだろうか。

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テスラの第二期決算をみてみる

TESLA Q2 2021 Updateより

まず、テスラの事業全体の総売上高(Total Revenue)から見てみよう。

2020年の第二期、第三期と売上が順調に伸び、第4期から100億ドルを超えている。今期は過去最高の119億5,800万ドルを記録。前年同期が60億ドル強なので、総売上高は約2倍に増えていることになる。電動化の波に乗り、急成長である。

一方、テスラは、売上はあるが収益率が伴っていない。ないしは、クレジット販売やビットコイン売却益で収益が支えられている部分があることも確かで、収益構図が脆弱だという指摘が依然としてある。営業利益(Income from operations)をみてみると、今期、第一期比で2倍以上に伸び、13億1,200万ドルを記録、過去最高となった。クレジット販売は前期の5億1,800万ドルから、3億5,400万ドルに減少。営業利益への寄与度も少なくなり、自動車を始めとするメインの事業からの収益がしっかりしてきたことが伺える。

こうした売上、収益のところの源泉はもちろん、自動車部門(Automotive Revenues)になる。その売り上げは102億600万ドル。利益率はなんと28.4%と非常に高い率を記録している。生産体制が整ったことで生産台数を増やせた結果、規模の経済が利くようになって、コストの低下を実現できたとイーロン・マスクCEOはオンライン会見で述べている。

このように7月下旬の時点では非常に好調だった状況に飛び込んできたのが、アメリカ政府によるテスラの自動運転技術への調査なのだ。

テスラの自動運転は現在どのような仕組みなのか

今回のアメリカ政府による公式調査の端緒は、テスラ車が停車中の緊急車両に衝突する事故が複数発生しており、テスラのオートパイロットなどに問題がないかどうかが焦点になっている。調査の詳細を紹介する前に、このテスラの自動運転とは何かを簡単に振り返っておこう。

周知の通り、テスラはEVの性能だけでなく、オートパイロットも含めた自動運転もその魅力の一つになっている。

この自動運転についてはテスラのCEOのマスク氏も様々な場でその性能をアピールしてきた。特にビジョン(視覚)のみでの自動運転を提唱してきたというのが特徴となっている。その主な理由はレーダーやライダーよりもカメラの方が速いからというわけだが、そうした考えを根底に持ちながら、現状では、センサーと車載コンピューターによる高度処理、独自開発のカメラ・センサー専用プロセッサを組み合わせて自動運転技術を構築している。

簡単にその特徴を紹介する。センサー能力については8台のサラウンドカメラが搭載され、これにより360度の視界と、最長250mまで先を視認できる。これに加え、12個の超音波センサーがカメラの視界を補完し、最先端のフォワード フェーシング レーダーで更に情報を取得。これにより豪雨、霧、塵や前方を走るクルマをも見通すことが可能になる。

これらのハードウェアにはテスラが独自開発したビジョン プロセッシング ツールが採用され、車両の周辺環境を分析。そしてすべてのデータを解析するため、新型車載コンピューターが視覚、センサー、レーダーなどのニューラルネットを管理する仕組みだ。

テスラ曰く、このシステムは全方向を同時に監視し、人間の感覚だけでは感知し得ない情報を取得し、ドライバー以上の視界から世界を捉えることができるということだ。テスラでは、こうしたハード、ソフトウェアを組み合わせて、オートパイロットを構築し、提供している。

 

TESLA ウェブサイトより

ただ、このオートパイロットは、あくまで運転アシスト機能だ。ドライバー自身が車を監視する必要があり、責任もドライバーにある。完全自動運転ではないことについてはテスラ自身も述べている。

ただ、このオートパイロットによって、同じ車線内であればハンドル操作、加速、そしてブレーキを自動的に行う、という機能がついており、テスラのかなり強力な売りになってきたことも事実だ。

アメリカ政府が行う公式調査の中身は

ではアメリカ政府の調査の内容を詳しく見てみよう。

前述の通り、テスラの車が停車中の緊急車両に衝突する事故が、複数生じるという事案がアメリカで発生した。今回、調査に乗り出した米運輸省道路交通安全局(NHTSA)によれば、11件の衝突および炎上が報告され、そのうち負傷者は17人に上り、1人死亡したとのことだ。これらを受けて8月16日にNHTSAは、テスラの自動運転支援システム「オートパイロット」の公式調査を始めたとウェブサイトで発表したのだ。

NHTSAは発表文で「事故の大半は日没後に起きており、衝突現場には緊急車両のライトや発煙筒、電光矢印板、円すい標識などがあった」と指摘。「事故を起こした車両は全て、事故が発生するまでオートパイロットもしくは交通量感知型クルーズコントロールのどちらかが作動していたことが確認された」とのこと。

同様の事故はテキサス州でのテスラ車両の炎上事故の際にも論点となり、そのときにはCEOのマスク氏がこのようにツイートしている。

オートパイロットを作動させたテスラ車が事故に遭う確率については、平均的車両の「10分の1」に近づいているとマスク氏が応酬するなど、ここ最近の論点になっていた。一方、今回のNHTSAの発表によると、11件の事故については、オートパイロットないしクルーズコントロールが作動していたという。

もちろん、こちらは前述のように運転アシスト機能であるので、運転手がしっかり責任をもって運転をしないといけないことは自明なのだが、自動運転機能について、どこまで信頼に足るのか等が、今後、アメリカ政府によって調査が行われることになる。今後の発表いかんでは、テスラが売り出している強みがどこまで今後も売り出せるのかが関係してくるため、要注目だ。

なお、今回調査の対象となるのは2014-2021年の「モデルY」「モデルX」「モデルS」「モデル3」で推定で76万5,000台。かなりの台数になる。

さらにこのテスラの自動運転システムの問題、何もアメリカだけではないのだ。

中国でのテスラのリコールもオートパイロットが原因

6月26日の中国・国家市場監督管理総局の発表によると、テスラからリコールの実施計画について届け出があったので、リコールを直ちに実施することとなったとのこと。何が問題だったのかというと、自動運転システム、オートパイロットの不具合だ。

中国政府によれば、対象車両のオートパイロットシステムが自動的に稼働する可能性があり、急加速に伴う衝突につながる恐れがあるとのこと。対象となるのは、中国で2019年以降に販売したEV、約28万6,000台で、この期間に販売した台数の9割を超える。

もちろん、リコールを届けているので、テスラはこの件について非を認めている。今回の件について、テスラは中国の短文投稿サイト「微博(ウェイボー)」の顧客サポート用の公式アカウントで、「今回のリコールで生じる不便について全ての車両所有者に謝罪する」とし、「当社は国家の要件に厳密に従い、安全性の向上を今後も継続する」と表明。リコールについては、対象車のアクティブクルーズ・コントロール機能をオンラインで更新するため、主に遠隔で実施するとのことだ。

中国ではこのように自動運転に関する瑕疵を認めていることもあり、アメリカでの調査も、おそらく旗色が悪いように見受けられる。

テスラの好調は続くのか

中国でのリコールは確定した事実だが、アメリカも行政の調査がはいるとなると、やはりこれは、テスラにとっては痛手であり、短期的な逆風は避けられないだろう。

中国はこうしたところの対応は堅く、徹底をするきらいがあり、さらにはテスラが外資企業であるということも関係をしてくるとみられる。つまり、テスラは今後、主戦場にもなりつつある、中国市場で苦戦することも考えられる。

冒頭の決算分析で、数字の上ではテスラは順調と紹介したが、一方で、EVのライバルが増えてきている状況もある。

数字を見てみよう。今年のEVセールスのランキングで一位はテスラのモデル3。だが、4月単体の売上台数では中国の激安EV、宏光MINI EVが売上台数首位になっているのだ。

いかに中国市場で宏光MINIが売れているのかが分かるが、これは中国におけるテスラの苦境を表しているのかもしれない。つまり、中国勢の台頭と、テスラの伸び悩みだ。同じくEVの大きな市場である欧州では、VWが一番の売り上げになっている。


米CleanTechnicaより

世界売り上げをみると、日産リーフも伸びてきている。昔のリーフに比べ、性能は段違いに上がっていることも評価されつつあるのかもしれない。

いずれにしても、アメリカの政府による調査は今後に影響を与えるだろう。調査結果として「大きな問題はない」という結論が出るのか、重大な瑕疵が確認されたとなるのか、この辺りでもテスラの今後の躍進が左右されそうだ。

今日はこの一言でまとめよう。

『テスラの強みの自動運転 今後、どうなるかを要注目』

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボール出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。