原子力発電はグリーンな電源なのか、それとも環境を汚染する電源なのか。2022年1月から、持続可能な経済活動の独自基準である「EUタクソノミー」の本格始動を目指すEU(欧州連合)は、今夏にも原子力がタクソノミーに合致するのか、結論を下す予定だ。EUの評価いかんで、日本の原子力政策にも影響を与えかねないだけに、その動向に注目が集まっている。
多くの企業が脱炭素社会の実現に向けた取り組みを加速させている。しかし、企業の取り組みが本当に脱炭素につながるのか。グリーン性を客観的に評価する基準や枠組みが存在しないなか、うわべだけの環境配慮を装った「グリーンウォッシュ」ではないか。こうした批判は世界中で巻き起こっている。
「グリーンウォッシュ」排除に向けて、EUが策定を進めているのが「EUタクソノミー」だ。
EUタクソノミーとは、投資や経済活動が「グリーン」あるいは「環境的に持続可能」かどうか、分類する枠組みである。EUでは2018年から導入に向けた取り組みを進めており、2022年1月からの本格導入を目指している。グリーン基準を明確化することで、脱炭素社会に貢献する経済活動に資金を集中させたい狙いがある。
EUタクソノミーには4つの適格要件があり、すべてを満たす活動しかグリーンとみなされない。
また6つの環境目標のどれか1つ以上に貢献するだけでなく、例えば、気候変動の緩和には貢献するものの、環境汚染に悪影響を与えるような活動は対象外になる。
導入に向け、順調に進んでいるかに見えたEUタクソノミーだが、実は法案の素案採択が遅れている。原因は、一部の国が草案に反発したからだ。反対する要因のひとつが原子力だ。
フランスをはじめとする原子力への依存度が高い国々と、核廃棄物が環境影響上、課題があるとするオーストリアなどの国々との間で、原子力の取扱いをめぐって対立が再燃。そのため今年4月、欧州委員会が公表したタクソノミーに合致した企業活動リストから、原子力、そして天然ガス火力に関連する活動は外され、議論は先送りとされていた。
一部報道によると、天然ガス火力はタクソノミーに合致するよう基準を緩和される見通しだ。
一方、原子力に関しては、タクソノミー上、適格なのか、欧州委員会はその結論を今夏にも下すと見られている。
EUタクソノミーは、今はまだEU域内を対象とした枠組みだが、EUは当然ながら国際基準化を狙っている。それだけに、原子力に対する評価次第で、日本の原子力政策にも大きな影響を与える可能性がある。
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