コロナ禍において台風などの災害が発生したとき、通常の避難とは異なる点がいくつか出てきます。避難所は「3密」の条件が揃いやすく、コロナ禍を意識せず行動すれば避難所内で感染が拡大してしまう危険性が高いです。
台風が発生したときに備え、命を守るための心得や避難のタイミングを事前に知っておくことが大切です。続いているコロナ禍の状況を踏まえ、準備しておく持ち物や避難所での過ごし方も工夫することが求められます。
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熱帯から亜熱帯の海上で発生する低気圧のことを「熱帯低気圧」とよびます。熱帯低気圧は海水温が26℃~27℃以上の海上で発生するといわれており、強い日差しが降り注ぐ熱帯の海はこの条件を満たしています。日常的によく耳にする「台風」とは、熱帯低気圧のなかでも低気圧域内の最大風速がおよそ17.2m/s以上で、北西太平洋あるいは南シナ海に在るものだけを指します。
まず太陽によって暖められた表面の海水は水蒸気となって渦を巻きながら上へ昇り、多くの積乱雲をつくります。発生した積乱雲が集まり、渦が大きくなったものが熱帯低気圧です。この熱帯低気圧がさらに大きく発達し渦中で空気の流れが速まることで、台風へと変化します。
日本では特に7月から10月にかけて台風の接近が多くなり、上陸すると大雨や暴風、高波などを引き起こします。また大雨によって川の氾濫や堤防の決壊といった水害が発生しやすくなり、人々の生活が脅かされる可能性が高まります。他にも土石流やがけ崩れなど、台風が甚大な被害をもたらしたケースはこれまでも数多くありました。
近年の研究で指摘されているのが、短時間で急激に増すようになった台風の威力です。台風の威力が増している背景には、地球温暖化の進行があると複数の研究によって明らかにされています。地球温暖化で海水温が上昇すれば、その分より多くの水蒸気が発生し大気中に蓄積します。すると熱帯低気圧が大きく発達しやすくなり、結果としてより巨大な台風の発生に繋がってしまうのです。
台風到来時の命を守る10箇条を以下で確認しておきましょう。
台風が発生した際は、自宅などの建物内で通過するまで待つのが基本です。心配だからといって家の近くを見回るのも絶対にやめましょう。
山や丘などの急斜面では、土砂災害が起こる危険性があります。台風が接近しているときは近づかないように注意し、もし近くにいる場合は離れましょう。
川や海では、洪水や高波などの水害が起こる危険性があります。急な増水の恐れがあるため、様子を見に行く行為も非常に危険です。
暴風や雷の影響で停電する可能性があります。避難する際はエレベーターを使用しない方法を選びましょう。
大雨による河川の増水で、道路が冠水する可能性があります。より安全な場所へ避難するためにも、周囲の状況から総合的に判断することが大切です。
台風の状況や避難情報など、台風発生時において気象庁・自治体からの情報はとても大切です。テレビやスマホ、PCから積極的にリアルタイムの情報を取得しましょう。また避難時にはスマホ・PCのバッテリー消費が想定されますので、モバイルバッテリーや手回し式充電池など停電時の影響を受けない充電機器を携帯することも大切です。避難所生活が長引く場合には、貴重な電力を維持するためにラジオによる情報収集が効果的です。
行政から避難準備情報が出た際は、高齢者や乳幼児を優先的に避難させます。速やかに安全な場所へ移動できるよう、事前に持ち物などを確認しておきましょう。
避難する際は、必ず周囲の状況を確認してからにします。冠水や浸水により水深が50cm以上ある場合は、無理に避難するとかえって危険です。
避難の際は単独行動を避け、家族や近所の人に声をかけて一緒に行動しましょう。
冠水した道路では、長靴よりも履きなれた運動靴の方が歩きやすいです。ヘルメットがある場合は着用し、両手が空いた状態になるリュックで避難しましょう。
台風により災害が発生するおそれがある場合、行政や市町村から5段階の「警戒レベル」が発表されます。災害のおそれがあるとされる警戒レベル3から一部の方の避難が必要となり、警戒レベル4のタイミングでは全員が避難する必要があります。
「早期注意情報」が発表されるものの、まだ災害が発生する危険性は低い段階です。しかし、最新の気象情報やハザードマップなどを確認し、災害への心構えをしておく必要があります。
「洪水注意報」や「大雨注意報」などが気象庁から発表されます。次の警戒レベル3では避難する可能性もあるため、持ち物の準備や避難ルートの確認などが必要になります。
「高齢者等避難」が市町村から発令されます。高齢者や障がいのある方など避難に時間を要する方はこのタイミングで避難を開始しましょう。また水害や土砂災害などが発生する危険性のある地域に住んでいる場合も、同様にこのタイミングでの避難が望ましいです。
「避難指示」が市町村から発令されます。危険な地域にいる方は、全員速やかに避難を開始しましょう。避難所への道のりが危険だと判断した場合は無理に向かわず、山や丘から離れた高い場所へ避難してください。
「緊急安全確保」が市町村から発令される可能性があります。すでに災害が発生している、または切迫している「命が危険な状況」です。直ちに身の安全を確保し、命を守るために行動しましょう。災害の状況が確実に把握できるとは限らず、発令されない可能性もあるため、警戒レベル3・4で避難を終えていることが大切です。
災害の発生により避難所生活を余儀なくされた場合、日用品の不足や他人との距離などさまざまな問題を抱えながらも生活しなければいけません。ただでさえ過酷な避難所生活ですが、コロナ禍ではさらに感染リスクを避ける行動も必要になります。コロナ禍での避難所生活を乗り切るためには、事前の準備や避難所での過ごし方について知っておくことが大切です。
コロナ禍の避難所生活を乗り切るために、準備しておきたい持ち物をまとめましたので参考にしてください。
災害で住む家を失ったり住む地区が立ち入り禁止になったりした場合、一時的に避難所で生活することになります。災害を免れて命の安全が守れたとしても、災害直後は物資不足やライフラインの遮断などが起こりやすく、過酷な状況での生活になることが予想されます。避難所で少しでも健康的な生活を送るためには、事前に避難生活を想定した備えをしておくことが大切です。
またコロナ禍の避難所生活においては、生活に必要な準備物に加え「マスク」「体温計」「アルコール消毒液」が必要になります。大勢の人と共同生活を送ることになるため、マスクの着用やこまめなアルコール消毒など、感染拡大を防ぐための行動が欠かせません。体温は毎日チェックし、体調に変化があった場合は無理せず避難所の運営者に相談しましょう。
新型コロナウイルスの感染状況に関わらず、災害発生時は命を守るための避難が最優先です。一方、避難所では密閉された空間に多くの人々が集まるため「3密」の条件が揃いやすくなります。災害発生時における避難所での感染拡大を防ぐためには、避難のポイントを意識して行動することが求められます。
台風などで避難を考えるとき、まずはハザードマップや市町村からの発令を確認します。危険な地区にいる場合は速やかに避難することが求められますが、水害や土砂災害などの危険性が低い場所に自宅がある場合、自宅での在宅避難も視野に入れましょう。市町村によってはコロナ禍で避難所を増設している可能性もあるので、自身の状況を見極めて避難先を検討することが大切です。
避難所に入る前には、必ず体温チェックをするようにしましょう。避難所に入ったあとはこまめな消毒や手洗い・うがい・マスクの着用を徹底し、感染拡大を防ぐ行動に努めてください。
避難所には多くの人が集まるため密になりやすいですが、そのなかでも避難者同士は2m以上の距離を保ち、定期的に換気を行うよう意識しましょう。食事時間をずらす、段ボール等で衝立をつくるといった工夫も密集・密接を避けることにつながります。
台風などの災害が発生した際は、タイミングを見極めてしっかりと避難し、まずは命を守ることを最優先に行動しましょう。避難所での生活を余儀なくされた場合は、感染防止のために手洗い・うがいやこまめな消毒を徹底し「3密」を防ぐ行動を心がけます。
コロナ禍の台風避難では欠かせないのが、各々による事前の備えです。避難所で自身や家族、他人の安全を守るためにも、持ち物の準備や避難所の確認をしておくことが求められています。過酷な避難生活で少しでも安全な環境を整えられるよう、避難のポイントや避難所での過ごし方について知識を蓄えておきましょう。
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