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日本は石炭火力を延命したいのか 岸田総理のCOP演説、その落とし穴を徹底解説:COP26を振り返る

2021年11月17日

岸田スピーチに隠された問題点とは

岸田総理の演説を見ていくと、いま述べたとおり、基本的に、脱炭素の必要性を国際社会に訴えている。この基本基調は何も問題ない。

ただ、前回分析をしたように、このスピーチが化石賞につながった。何が化石賞受賞につながったのか。問題となった箇所がこれだ。

「アジアにおける再エネ導入は、太陽光が主体となることが多く、周波数の安定管理のため、既存の火力発電をゼロエミッション化し、活用することも必要です。日本は、『アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ」を通じ、化石火力を、アンモニア、水素などのゼロエミ火力に転換するため、1億ドル規模の先導的な事業を展開します」

ご覧のとおり、岸田総理はなにも、火力を推進するとは言っておらず、再エネが増えると、不安定になるので、そこにCO2排出をしない形の火力を組み合わせることも必要だ、と言っているに過ぎない。

CO2排出をしないことを前提にしているので、ここを批判され、化石賞受賞につなげるのは少し筋違いだ。

ただし、言及をしたアジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ、これが厄介だ。

アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブは、今年の5月24日から5月28日にかけて開催された「日ASEANビジネスウィーク」で発表されたイニシアティブになる。

5月といえば、まだG7で石炭火力の支援停止の外堀を埋められる前だ。経産省がまだ頑張って「アジアに対して火力を~!!」「脱炭素は一足飛びだから、低炭素化を~」と言っていた時期だ。

実はこのイニシアティブが発表をされたとき、筆者は頭を抱えた。「あぁ、脱炭素時代に、まだCO2を排出する技術を海外展開しようとしている」と。

なぜなら、このイニシアティブ、脱炭素ではなくて、炭素系の延命をしたい思いが非常に多く残っているからだ。文言からそれが見て取れる。

まず、日本政府がエネルギーについて化石燃料をスコープにいれたいときのうたい文句が「あらゆるエネルギー源」だ。脱炭素に絞りたくないため、この表現を使う。

これが、このイニシアティブのページにもしっかりと書かれている

そもそも、今回のCOPの演説で述べたように水素やアンモニアなど、ゼロエミッションにするならば、イニシアティブのタイトルも「アジア・ゼロエミッション・イニシアティブ」などにすればいい話だ。だが、実際はそうはならずに、使われた単語はエネルギー・トランジション。

実は、この表現も政府が「脱炭素」としたくないときに用いる文言なのだ。すぐに脱炭素にするのではなく、段階的に向かっていくのだ、脱炭素に向かうときはあくまで「移行」、すなわちトランジションだと。そのため、CO2を減らすものであれば、問題ない。移行期は、CO2排出はやむを得ない。なにも再エネなどの脱炭素手法じゃなくてもいい。高効率の石炭火力も「CO2を減らす」方向なのだから、そこでも読み込める、となっている。もちろん、これは外堀が埋まる前に作ったイニシアティブなので、結果的にそうなってしまったわけなのだが。

さすがに、このイニシアティブには「石炭の活用を!」とは書かれていないのだが、LNG(液化天然ガス)については記述がある。もちろん、LNGの方がCO2排出は少ないので移行期には重要なのだが、LNGも含む内容をわざわざ総理にCOPの場で言わせるというのは違和感を感じる

さらに、このイニシアティブが言及され、共同声明が出たのが6月に開催された日ASEANエネルギー大臣特別会合。この特別会合で、このイニシアティブを念頭にした具体的メニューが書かれているのだが、これを見て欲しい。

CCUSはいいとして、クリーン・コール・テクノロジーの記載がある。

これは石炭火力から排出されるCO2を減らすものの、あくまで石炭火力の使用とそこからのCO2排出は前提とする、いわば延命措置のための技術であり、さすがに昨今の脱炭素の潮流の中では、受け入れられにくい。もちろん、民間ベースでやるなら分かるが、政府が国際会議の場でこれを含めてアピールすることはむしろ、脱炭素のアピールにはならず、逆効果になる。

COPには岸田総理が紆余曲折ありつつ、「出る!」と意思決定したもの。しっかり花をもたせないといけないのに、「こんな不純物を混ぜるなよ」と思うが、果たして、これについて岸田総理は知っていたのだろうか。岸田総理は部下を信じる方だ。筆者は、こうした詳細背景まで知らなかっただろうと分析をしている。それでは次に、場合によっては岸田総理ご自身も気付いていない可能性について言及していきたい。

岸田総理自身も、気付いていないかもしれない落とし穴とは・・・次ページ

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

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