フランスのマクロン大統領は、11月9日のテレビ演説で、国内での原子力発電所の建設を再開すると発表した。マクロン大統領は、「フランスのエネルギー自給を保証し、わが国の目標、特に2050年までにカーボンニュートラルを達成するために、数十年ぶりに国内での原子炉建設を再開する」と表明したと報じられている。
ロイター通信によると、建設するのは小型原発ではなく通常の原発とされる。現在フランスでは56基の原発が稼働しているが多くは老朽化が進んでいる。新設予定の原発は最大6基で、建設する計画を数週間以内に発表するという。フランスでの原発新設計画は、2011年の福島第一原発事故後、初めてだ。
発電の約7割(2019年度で約69%)を原発で賄っている原発依存国のフランスだが、ここ数年は、原発への依存度を下げる立場を取ってきた。2020年12月には、2035年までに原発依存度を現在の75%から50%に削減する方針を示していたが、今回の表明によって、その目標が事実上、修正される形となった。
マクロン大統領は10月12日にも、10億ユーロ(約1,300億円)を投じて、発電規模の小さい原子炉「小型モジュール炉」を2030年までに国内で複数導入すると表明していた。「水素を作るには、電気分解が必要だ。フランスには原子力の強みがある。2030年までにグリーン水素の先駆者になりたい」として、脱炭素を目指す中での原発新設を強調したことが報じられている。
こうした、マクロン大統領の原発へ向けた取り組みの背景には、天然ガス価格の高騰もあるとみられる。欧州では9~10月で天然ガスの価格が急騰し、それに伴って電気料金も上昇。5ヶ月後に控えた大統領選を前に、国民から不満の声が上がる形となった。
世界的に進む脱炭素と、国民から届く原発活用の声の両立を狙って、今回の表明に至ったといえるだろう。
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ヘッダー写真:Stiftung Münchner Sicherheitskonferenz (gemeinnützige) GmbH, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
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