国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)とソフトバンクは12月15日、リチウムイオン電池の重量エネルギー密度を大きく上回る500Wh/kg級「リチウム空気電池」を開発し、室温での充放電反応を実現したと発表した。同リチウム空気電池は、エネルギー密度ならびに、サイクル数の観点で世界最高レベルだという。
リチウム空気電池は、理論重量エネルギー密度が現行のリチウムイオン電池の数倍に達する「究極の二次電池」と呼ばれる。軽くて容量が大きいことから、ドローンや電気自動車、家庭用蓄電システムまで幅広い分野への応用が期待されている。重量エネルギー密度は、単位重量当たりの電池の容量(Wh/kgの単位)で、この値が大きいほど、より多くのエネルギーを電池に蓄えることができる。
これまで試作されたリチウム空気電池では、セパレータや電解液といった電池反応に直接関与しない材料が重量の多くを占めており、重量あたりの蓄電性能を高めることが難しかった。2018年にNIMSとソフトバンクは共同で「NIMS-SoftBank先端技術開発センター」を設立し、リチウム空気電池の共同研究を進めてきた。
研究チームは充放電の反応効率が高い独自の材料や、電解液をセル内に均一に注入する技術などを確立することで、現行のリチウムイオン電池のエネルギー密度を大きく上回る500Wh/kg級リチウム空気電池の室温での充放電反応を世界で初めて実現したという。
ただ試作した電池は、充放電のサイクル寿命が約10回しかない。加えて新材料などを使うため、製造コストも高くなる。今後は、現在開発中の改良型材料を500Wh/kg級リチウム空気電池に搭載することで、サイクル寿命の大幅増加を図り、リチウム空気電池の早期実用化につなげる方針だ。
ニュースの最新記事