GX(グリーン・トランスフォーメーション)とは? | EnergyShift

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GX(グリーン・トランスフォーメーション)とは?

GX(グリーン・トランスフォーメーション)とは?

EnergyShift編集部
2021/03/31

2020年10月、菅義偉首相が2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。この宣言を機に、日本でもグリーン・トランスフォーメーション(Green Transformation:GX)という言葉が注目され始めました。GXとは、「温室効果ガスの排出源である化石燃料から再生可能エネルギーへの転換に向け、社会経済を変革させる」という概念です。

今回は、日本でも浸透しつつあるGXについて解説します。

GX(グリーン・トランスフォーメーション)とは

GXとは、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーなどのグリーンエネルギーに転換することで、地球環境をトランスフォーメーション、変革させるという概念です。GXという概念が生まれた背景には、地球温暖化による脅威と、それを食い止めるための世界的な脱炭素機運の高まり、という2つの流れがあります。

地球温暖化による脅威

まず地球温暖化による脅威ですが、国連環境計画(UNEP)の2020年度版「排出ギャップ報告書」によると、二酸化炭素など温室効果ガスの排出量が増え続ければ、「世界の平均気温は今世紀中に、産業革命前と比べて3.2℃上昇すると予想され、気候面で広範囲な破壊的影響をもたらす」と指摘しています。世界の平均気温が3.2℃上昇すると、台風や豪雨、熱波などの自然災害がますます頻発し、大洪水や干ばつが全世界に及ぶ危険性があります。さらに気候変動は、食糧難や移民・難民の増加、健康被害、貧困、さらに内戦・紛争の原因となり、人類の存続を脅かします。

こうした破壊的な事態を回避するためには、石油や石炭などの化石燃料に依存した経済活動や、生活・移動手段といったライフスタイルを変革させる必要があります。地球温暖化を食い止めるために、国際社会は2015年、温暖化防止の国際的枠組み「パリ協定」において、今世紀末までに世界の平均気温を産業革命前より2℃未満、できれば1.5℃未満に抑える目標を定め、脱炭素への取り組み強化を求めたわけです。地球温暖化は、当然、日本の気候にも深刻な影響をもたらします。文部科学省と気象庁は2020年12月4日、パリ協定の目標が達成できなかった場合、今世紀末の日本の年平均気温が約4.5℃上昇し、深刻な事態を招くと科学的に明らかにしました。

世界的な脱炭素機運の高まり

地球温暖化を止めるには、温暖化ガスの排出そのものを減らす必要があります。そこで日本政府は2020年12月25日、2050年カーボンニュートラル実現に向け、「グリーン成長戦略」をまとめました。このグリーン成長戦略の中で、政府は「温暖化への対応を、経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも、成長の機会と捉える時代に突入」したと言及しています。これはどういうことでしょうか?

EUやアメリカ、中国などの世界各国は、気候変動対策は単なる環境問題ではなく、経済、外交、安全保障の中心になると考えており、すでに121ヶ国・1地域が2050年までにカーボンニュートラルを実現するとコミットしています。

2050年カーボンニュートラルに賛同した国

リンク:https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/green_innovation/pdf/gi_002_05_00.pdf

(※アメリカ・バイデン政権は2050年ネットゼロにする長期目標を公約済み。中国は2060年ネットゼロを表明)

GXが生まれた背景

たとえばEUでは、新型コロナウイルスによって深刻なダメージを受けた経済を復興するために、脱炭素化を実現する再生可能エネルギーなどに約35兆円もの投資を行うと表明しています。アメリカにとっても、異常気象や食糧難が「経済格差」や「人種問題」を深刻化させると危惧しています。さらに北極海の氷が溶けてしまうと、ロシアや中国の軍事活動を変化させると危機感を強めています。そのため、バイデン政権は経済を再構築し、成長を促進し、雇用を創出するため、クリーンエネルギーに2兆ドル規模(約210兆円)の投資を実施すると表明したわけです。中国もまた産業構造や社会経済を抜本的に転換させる脱炭素化が、国家間の産業競争力に大きな影響を及ぼすと考え、気候変動対策を進めています。

つまり、世界で進む脱炭素化とは、これまでの国家間のあり方や、政治・制度、社会全体のインフラをすべて脱炭素型につくり替えることであり、その際には企業経営や一般消費者のライフスタイルまで大きく変革させます。こうした背景からGXという概念が生まれたのでした。

GXで成長が期待される14分野

それでは日本は、どのような分野で社会経済を変革させ、次なる成長の源泉にしようとしているのでしょうか。日本政府が掲げた「グリーン成長戦略」には、成長が期待される14分野の産業が記載されています。

  • 洋上風力産業:風車本体・部品・浮体式洋上風力発電
  • 燃料アンモニア産業:発電用バーナー(水素社会に向けた移行期の燃料)
  • 水素産業:発電タービン・水素還元製鉄・運搬船、水電解装置
  • 原子力産業:SMR(Small Modular Reactor:小型モジュール炉)・水素製造原子力
  • 自動車・蓄電池産業:EV(電気自動車)・FCV(燃料電池自動車)・次世代電池
  • 半導体・情報通信産業:データセンター・省エネ半導体(需要サイドの効率化)
  • 船舶産業:燃料電池船・EV(電動推進)船・ガス燃料船など
  • 物流・人流・土木インフラ産業:スマート交通・物流用ドローン・FC(燃料電池)建機
  • 食料・農林水産業:スマート農業・高層建築物木造化・ブルーカーボン(海洋生態系に吸収される炭素)
  • 航空機産業:ハイブリッド化・水素航空機
  • カーボンリサイクル産業:二酸化炭素吸収コンクリート・バイオ燃料・プラスチック原料
  • 住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業(ペロブスカイト)
  • 資源循環関連産業:バイオ素材・再生材・廃棄物発電
  • ライフスタイル関連産業:地域の脱炭素化ビジネス

リンク:https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225012/20201225012-4.pdf

日本政府は、太陽光発電と並んで洋上風力発電を再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札だと位置づけています。2030年までに10GW、2040年までに30〜45GWの導入目標を掲げました。また、日本の産業界が技術的な強みを持つ水素・アンモニア分野の成長も期待されています。もうひとつ注目される分野が自動車・蓄電池産業です。政府は2035年までにガソリン自動車の新車販売禁止を表明しており、EVやFCVなどの成長を描いています。

日本政府によるGX戦略とは

GXを実現するには、莫大な資金が必要になります。そのため日本政府は、カーボンニュートラル実現に向けた革新的な技術開発に対して、継続的な支援を行う「グリーンイノベーション基金事業」を創設し、今後10年間にわたって2兆円を投資すると表明しました。さらに最大10%の税額控除、または50%の特別償却を可能とする「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」なども創設し、民間企業による脱炭素化投資を後押しすることで、10年間で約1.7兆円の民間投資を見込んでいます。菅義偉首相は、こうした予算、税制優遇、規制緩和など政策ツールを総動員することで、「民間企業に眠る240兆円の現預金、そして3,000兆円ともいわれる世界のESG投資を日本国内に呼び込む」と表明したのでした。

企業によるGXがなぜ必要なのか

地球温暖化の脅威は、企業の価値観も大きく変えました。その背景には次の3つがあります。

  • 地球温暖化が与える日本、世界への経済損失
  • ESG投資の拡大を背景とした金融機関からの圧力
  • グローバル・サプライチェーンから外されるリスク

地球温暖化が与える経済損失

まず地球温暖化が与える日本、世界の経済損失は近年、増加しています。

たとえば、イギリスの国際援助団体クリスチャン・エイドによると2019年日本を襲った台風19号による想定被害額は約1兆6,000億円にのぼったと報告されています。

また、国連国際防災戦略(UNISDR)によると、1998年から2017年の間の自然災害よる経済損失額は世界全体で2兆9,080億ドル(約330兆円)にのぼり、日本は3,763億ドル(約43兆円)もの損害を受けました。そのうち、気候変動に伴う自然災害による経済損失は2兆2,500億ドル(約252兆円)にのぼっており、その前の20年に比べて150%以上増加したといいます。

カーボンニュートラルの産業イメージ

ESG投資拡大を背景にした金融機関からの圧力

気候変動に伴う自然災害は、日本企業にも大きな損害を与えています。

たとえばJR西日本は、2019年の台風19号によって浸水した北陸新幹線すべてを廃車せねばならず、118億円の特別損失を計上しました。また、東京電力ホールディングスは、台風19号によって送電線や電柱が倒壊し、118億円の特別損失が発生しています。

気候変動が企業経営に大きな損失を与える、と真っ先に危機感を抱いたのが金融機関でした。金融機関にとって、投融資する企業の財務状況が悪化すると、貸し倒れリスクが高まります。そのため、世界最大の資産運用会社である米・ブラックロックなどは、投資先に対して気候変動対策を強く訴えかけています。すでに世界の投資市場の約3分の1はESG投資となっており、今後、気候変動対策に取り組まない企業は、「世界での資金調達が困難になるおそれ」があるわけです。

グローバル・サプライチェーンから外されるリスク

気候変動は大手グローバル企業の価値観も変えました。

アップルなどのグローバル企業の多くは、自社だけではなく、2030年をめどにサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル実現を目指しており、日本企業に対してもGXを要求しています。

RE100の日本事務局を務めるJCLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)によると、GXを求められる日本企業とグローバル企業との取引額は、年間725億ドル(約7.5兆円)にのぼるといいます。そのため、国内製造業を中心に、「グローバル・サプライチェーンから外される」というリスクが顕在化したのでした。

世界的な金融機関やグローバル企業が加速させるGXに対して、日本企業だけが距離を置くことは、産業競争力を低下させるだけで、許されません。そのため、日本企業もGXに対する取り組みを強化させています。

日本企業によるGXの先行事例

企業成長と脱炭素を両立させようと、日本企業もGXを積極的に進めています。その先進事例を紹介します。

NTT

NTTは、日本全体の総電力消費量のうち、約1%を消費する大需要家です。しかも、デジタル化の大きな流れの中で、電力消費量はさらに増加する傾向にあります。

その一方で、2019年の台風15号による千葉県内の停電、北海道胆振東部地震によるブラックアウト(電源喪失)など、自然災害による大規模停電が続いています。澤田純NTT代表取締役社長は、経済産業省の諮問委員会において、「このままでは、私どもの事業が継続できないと考え、経営方針を転換させた」と述べ、「再生可能エネルギーに投資し、現在4%の再エネ比率を2030年までに30%に増やす10年計画を策定」したと表明しました。

NTTは全国に約7,300もの通信ビルを所有しています。このビル内に大容量の蓄電池を設置し、「蓄電所」になれば、天候などで発電量が変動する再エネの需給調整役が担えると考えています。さらに全国に1万台強ある社有車をEVに切り替え、蓄電所やEVに貯めた再エネ電力を病院や企業、自治体に供給することで、災害時におけるレジリエンスの向上も目指しています。

おわりに

GXという概念は、地球温暖化の脅威を食い止めるために、社会経済すべてを脱炭素型につくり変えるというものです。そしてGXに向き合わない国や企業は、国際社会から地球温暖化対策に後ろ向きだと判断され、国際信用力、国際競争力を失うことになります。

さらにGXは、エネルギー消費のあり方や移動手段など、ライフスタイルまで一変させるため、私たち一般消費者に対しても、意識の変革を求めています。私たち一人ひとりがGXを意識し、行動を変えなければ、人類の存続を脅かす地球温暖化を防ぐことはできない、そんな時代に突入したとGXは示しているのです。

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