事業計画認定は、発電設備の法令に対する適合性、および事業計画の実現性について審査する手続きです。従来は「設備認定」と呼ばれていたのですが、2017年4月を境にして「事業計画認定」に変更されました。
手続きの名称が変更されるとともに、事業計画認定には新たな基準が設けられており、2020年以降はさらに2点の要件が加わっています。そのため、2020年度から適用される事業計画認定の概要を知らない場合は、新制度に対する認識をアップデートしなければなりません。
ここでは、太陽光発電における事業計画認定の概要、および手続きの流れ・基準についてご説明します。
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事業計画認定は、2017年4月1日に施行された改正FIT法より以前、認定設備という名称で設けられていた手続きの後継となる制度。設備認定は「太陽光発電設備」に対する認定であり、太陽光発電設備が法令の要件を満たしているか否かを確認するものでした。
一方、事業計画認定では認定設備に加えて、「事業内容は実現可能であるのか」といった事業性を考慮します。具体的には保守点検や維持、撤去に関する事業計画の提出が必要です。
設備認定が事業計画認定に変更された理由には、発電設備の規格のみ確認していた期間における以下の問題の顕在化が挙げられます。
採算性の低い太陽光発電設備は、電源として安定した電力供給を行えない点で問題があり、未稼働案件は国民の負担を減らす機会を奪う点で問題を抱えていました。
後者は、太陽光発電が、国民の負担する「再生可能エネルギー発電賦課金」によって成り立っていることに関係しています。認定を受けて電力の買取価格が決まったのち、設備を設置せず発電を始めなかった場合、設備を設置するまでのあいだ太陽光パネルの低価格化が進みます。
この状況は、再生可能エネルギーの電力買取を一定価格で行うFIT制度の、「認定年度が遅れるほど買取価格は低下する」という面を早期の認定により補いつつ、実際の設置を遅らせて太陽光パネルの低価格化による恩恵を不当に受けている状態だといえるのです。結果として、本来あるべき買取価格と設備費用のバランスが崩れ、国民の負担に対して発電事業者が大きなメリットを得られる点で問題があります。従来の設備認定では、これらの問題に対応できなかったため、事業計画認定への変更が行われました。
2020年4月以降、新規で認定を受ける太陽光発電設備のうち、10~50kW未満の発電設備は新たに「自家消費型の地域活用要件」が認定基準に加えられます。具体的には、下記2点を盛り込まなければなりません。
前者は、発電した電力の30%を自家消費に充てるよう規定するものです。
後者は、災害時に非常電源として活用できる体制整備を促すもので、パワーコンディショナーを電源として利用するための機能である「自立運転機能」が備わっていること、および蓄電池・非常時に使用するコンセントBOX等の併設が必要となります。
これらの新要件設定にあたり、自家消費が可能であることを確かめる目的で、自家消費計画の提出が求められます。また、運転開始後に自家消費量が低下し、要件として定められる30%の自家消費比率を下回ることは避けなければなりません。
そのため、自家消費比率をクリアできるか否かは、計画上の見通しだけでなく構造的にも確認されます。運転開始後の確認方法としては、買取電力量から自家消費比率を逆算する形で、実態が疑わしい場合に状況確認が行われる見込みです。
太陽光発電の事業計画認定は、おおよそ以下の流れで進めていきます。
住宅用、事業用太陽光発電の両方に対応しているので、いずれの発電設備を取得する場合にも参考になるはずです。
それぞれ、再生可能エネルギー電子申請の操作マニュアルを参考にしつつ、画像を交えて流れをご説明します。
なお、2020年度以降、10~50kW未満の発電設備は前述の通り要件が変更されるため、ここから解説する手続きの流れに新要件が加わる点に留意してください。
※本章の手順解説に用いる画像の出典は、いずれも再生可能エネルギー電子申請の「操作マニュアル」です。
太陽光発電の事業計画認定を始めるため、まずは「再生可能エネルギー電子申請」のページにログインします。
再生可能エネルギー電子申請にログインしたのち、マイページに表示される「認定申請入力」を選択します。
発電設備の区分・出力区分・設備利用者区分の選択項目が登場するので、発電設備の区分には「太陽光」、出力区分と設置利用者区分には認定を受ける太陽光発電の要件を入力してください。
なお、10~50kW未満の場合は、必ず設備利用者区分を「自ら太陽光発電設備を設置される方」に設定します。
つぎに事業者に関する情報を入力します。認定手続きを代理人に依頼せず、自身で入力している場合は入力者を「本人」に設定したうえで、以降の情報入力を進めていきましょう。
今回は、初めて新築の発電設備を設置する際の認定を想定しているので、2つある選択肢のうち「新たに事業者を登録します」を選択します。
新たに事業者を登録することとなるため、下記画像のように個人・法人の入力を求められます。個人で設置する発電設備であれば「個人」、個人ではなく自身の会社の資産として取得・設置する場合は「法人」を選択してください。
個人・法人の入力後、より詳細な事業者情報の入力に移行します。入力の際、判断が難しい情報の入力を求められることはなく、いずれのケースも事業者名・住所・連絡先・法人番号(法人の場合)といった基本的な情報が分かれば問題ありません。
事業者情報を入力したのち、下記画像のように発電設備の出力と発電設備の名称(任意)の項目があらわれるので、それぞれに情報を入力します。
発電設備の出力は、太陽電池(太陽光パネル)の出力とパワーコンディショナーのうち、「いずれか低いものの合計出力値」を小数点第2位まで切り捨てて、小数第1位まで入力してください。
つぎに、発電設備の住所を入力します。
仮に、設置する太陽光発電設備に郵便番号の表記がない場合は、郵便番号の入力欄に「000-0000」と入力し、町名・番地の入力欄に住所を入力してください。
10kW以上の太陽光発電設備は専有面積を入力、自宅やオフィス等の屋根に設置する場合は設置形態を「屋根設置」とし、野立てタイプの太陽光発電設備を設置する場合は「地上設置」を選択します。
下記画像にある通り、車庫や倉庫等に太陽光発電設備を設置する場合には、建物の種類のうち「その他」を選択して「建築確認済証」を添付する必要があります。
太陽光発電設備の設置場所・設置形態を入力したのち、太陽電池の型式・合計出力の記入欄があらわれます。
上記画像にある「型式リスト」をクリックすることで、型式検索画面が登場するので、型式番号と製造事業者名を入力。型式検索の検索結果から、今回利用する太陽電池に該当するものを選択してください。
型式検索を終えたあとは、選択した型式に間違いがないことを確認したうえで、太陽光パネルの枚数を入力します。
下記画像で入力している合計出力は、太陽光発電設備の出力ではなく「太陽電池の合計出力」である点に留意してください。
下記画像の①部分の「標準構造図」および「標準配線図」を確認し、それぞれ認定を受ける太陽光発電設備と同じ場合は「標準構造図と同じ」や「標準配線図と同じ」を選択。異なる場合には、「標準構造図と異なる」や「標準配線図と異なる」を選択してください。
①の欄に記載されているように、それぞれ異なる場合には「様式」から様式をダウンロードのうえ、後述する書類添付のタイミングで添付します。
その後、配線方法を選択のうえ、蓄電池などの「自家発電設備」を備えている場合には、自家発電設備を「有」に設定して種類を選択してください。
蓄電池がある場合には、蓄電池の押上効果(売電時に蓄電池の放電も加える効果)や蓄電池の位置といった、いくつか蓄電池周りの条件入力を求められます。
画像下部にある「電気事業者への電気供給量の計測方法」は、「単独計測」あるいは「他設備の増分として子メータ計測」から選択し、後者を選んだ場合には「他設備」に該当する設備のIDが必要です。
接続契約締結日は、接続の同意を証する書類を参照し、正確な日程を入力してください。
日程の入力後、太陽光発電設備の接続契約先となる電力会社を選択します。
接続契約締結先の入力を終えたのち、以下5つの項目の記入欄があるので、そちらも入力します。
保守点検責任者の項目は、責任者名や連絡先といった基本的な情報入力が大半ですが、「保守点検及び維持管理計画」として点検内容や実施スケジュールについての計画を入力・提出する必要があります。
そのほか、保守点検・維持管理費用について、および廃棄費用についての記載が求められ、具体的なコスト面の情報提出が必要です。
補助金を受給している場合は、受けた補助金の種類・金額を入力します。
ひとまずの最終工程として、上下画像の通り遵守事項・確認事項の確認が求められます。
また、認定にあたり書類の添付が必要となる場合には、下記のページより添付してください。
なお、事業計画認定にともない提出する必要書類は、以下をご参照ください。
画像添付を終え、申請ボタンをクリックすることで下記ページが表示されるとともに、承諾コードが発行されます。
発電事業者のメールアドレスに、再生可能エネルギー電子申請からメールが送付されるので、メールを開封して記載されているURLを展開。新しいパスワードの設定を求められ、パスワードの設定完了とともにユーザー登録が完了します。
その後、再び再生可能エネルギー電子申請からメールが送付されるため、先ほどと同様にURLを展開。同メールに含まれていた申請IDを、下記画像のオレンジ枠内に入力し、ここまで申請を進めてきた認定対象の太陽光発電を検索します。
認定対象の太陽光発電設備の情報があらわれるので、「参照」と記されたボタンをクリックし、以下のページの承諾コード入力欄にメールに含まれる承諾コードを記入してください。
ここまでの作業で、事業計画認定は完了します。
※本章の手順解説にもちいた画像の出典は、いずれも再生可能エネルギー電子申請の「操作マニュアル」です。
何らかの事情により電子申請ができない場合、再生可能エネルギー電子申請のページ「申請様式のダウンロード」より、様式をダウンロードして記述のうえ郵送することで申請できます。
提出先の住所・宛先、注意事項に関しては下記画像、あるいは「申請様式のダウンロード」のページよりご参照ください。
*再生可能エネルギー電子申請「申請様式のダウンロード」 ※2020年3月時点の情報です。
事業計画認定は、太陽光発電設備の規格を重視していた設備認定に加えて、複数の新たな認定基準が盛り込まれています。事業計画認定で追加された主な項目について、順番にご説明します。
適切な保守点検・維持管理を行うための体制整備
保守点検・維持管理における責任者の明確化、および保守点検・維持管理の具体的な内容・スケジュールの策定が必要です。
事業者情報を記載した標識の掲示
認定の対象となる太陽光発電設備が20kW以上の場合、あるいは屋根に設置するタイプではない場合、発電事業者の名称等を記載した標識の掲示が必要です。そのため、設備配置図で標識の掲示場所を明示しなければなりません。
設置費用・運転費用・発電量などの情報提供
経済産業大臣から設置費用・運転費用・発電量に関する情報提示を求められた際、発電事業者は各情報を提示する必要があります。
設備廃棄時の適切な設備の取り扱い計画
事業終了後に太陽光発電設備が適切に廃棄されない、あるいは放置される懸念から、事業計画認定では事業計画の一部として廃棄費用を盛り込むことが求められます。
電気事業者から接続の同意を得ていること
以前設けられていた設備認定では、電気事業者(電力会社)から接続の同意を得るまえに認定取得を行うことが可能でした。一方、事業計画認定は、あらかじめ電気事業者から接続の同意を得ていなければ認定を取得できません。
運転開始が認定取得から一定期間内であること
事業計画認定では、認定取得から運転開始までの期限が定められており、期間内に運転を始めなければペナルティの対象となります。
期限は太陽光発電設備の出力によって異なり、住宅用太陽光発電(10kW未満)の場合は認定取得から1年、事業用太陽光発電(10kW以上)の場合は認定取得から3年がタイムリミット。なお、ペナルティの内容は、住宅用太陽光発電が認定失効、事業用太陽光発電が買取期間の短縮です。
10~50kW未満の太陽光発電設備のうち、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)と呼ばれる農業と発電事業を両立しているものに関しては、自家消費の要件が免じられています。
そのため、災害時に電力を活用できる構造となっていれば、地域活用要件を満たすものとして認定取得が可能です。
設備認定に比べて、事業計画認定では新たな要件が複数盛り込まれており、内容はより「事業計画」を重視するものとなりました。ただし、事業計画認定の手続きそのものは、マニュアルが充実しており難度の高い作業ではありません。事業計画認定の際は、ここまでに解説した情報をご活用ください。
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