「太陽光発電を始めたい」とは思うものの、具体的な設置費用が分からないままでは決断できません。また、太陽光発電システムの設置により得られるリターンの大きさ、収支のイメージも気になるところ。
ここでは、太陽光発電システムの設置費用の相場、よりお得に太陽光発電システムを設置する方法についてご説明します。
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太陽光発電システムを設置する目的は、主に2つ。
上記のいずれかを目的として、太陽光発電システムを設置するケースがほとんどです。もちろん、二酸化炭素排出削減によって、地球温暖化防止に貢献したい、という目的もありますが、それは大前提として考えていいでしょう。
それぞれ、太陽光発電システムにどういったメリットを期待して設置しているのか、順番にご説明します。
事業用の太陽光発電システムは、電力を一定の買取価格で電力会社へ売れる「FIT制度」の適用対象であるため、FIT制度の適用期間である20年のあいだ安定した売電収入が期待できます。
自宅の屋根に取り付けるタイプの太陽光発電システムも、FIT制度を通じて固定価格で売電できるものの、10kW未満の設備の場合は発電した電力すべてを売却する「全量買取」を選べません。
そのため、10kWを超える事業用の太陽光発電システムは、投資を目的として運用されているものがほとんどです。
なお、2020年度からは、新たに認定する設備の場合、10kW~50kW未満の太陽光発電システムについても、全量ではなく余剰の買取りとなりました。
自家消費を目的として太陽光発電システムを設置する場合、期待できるメリットは2つ。自家消費による電気代の節約、および停電時における非常電源として機能する点です。
自宅の屋根に取り付ける住宅用(家庭用)太陽光発電システム、および全量買取ではなく余剰買取を選んだ事業用の太陽光発電システムは、以下のような方法で節電方法として活用されています。
平時はこのように使用される一方、災害等により停電が発生した際は、パワーコンディショナーに備わった「自立運転機能」を使うことで非常電源として活用できます。
また、事業所の場合、太陽光発電の電気を自家消費することで、排出する二酸化炭素の削減が可能です。これは、事業所に省エネを義務付ける省エネ法に対応できますし、最近は積極的に二酸化炭素排出削減をして、将来のカーボンゼロを目指す事業者も増えています。
このほか、太陽光発電システムに関する詳細なメリットは、こちらの記事で解説しています。あわせてご参照ください。
太陽光発電システムの設置費用は年々下がっており、令和2年2月に公開された「令和2年度の調達価格等に関する意見(案)」によれば、事業用太陽光発電システムにおける設置費用の相場は1kWあたり26.6万円が平均値とのこと。
システム容量(出力)が50kWの太陽光発電システムであれば、単純計算で1,300万円程度のコストがかかる水準です。
*調達価格等算出委員会「令和2年度の調達価格等に関する意見(案)」
グラフからは、わずか7年のあいだに1kWあたり15.6万円の低コスト化が進んでおり、以前と比較して太陽光発電システムを導入しやすい環境にあることが読み取れます。
対して、自宅に取り付ける住宅用太陽光発電システムは、新築物件に設置する場合の費用が1kWあたり30.6万円、既築物件に設置する場合の費用は34.6万円。
事業用太陽光発電システムと同様に、設置費用は年々低下しています。
*調達価格等算出委員会「令和2年度の調達価格等に関する意見(案)」
なお、グラフはあくまで全体の平均値であり、太陽光発電システムが設置されるエリア・周辺環境によっては、平均値より上下するケースがあることに留意してください。
太陽光発電システムにおける設置費用の変動は、さまざまな要因が関係しています。
たとえば、豪雪地帯に太陽光発電システムを設置する場合、雪の重みに耐えられるよう求められる強度の水準は高くなります。そのため、太陽光パネルや架台に高価な製品を選ぶこととなり、設置費用が上がる可能性があるのです。
これと同様に、土地の状態が悪いために多くの造成費がかかったり、認定を受けた年度が以前であるために現状の単価とあわなかったり、設置費用を変動させる要因は決して少なくありません。
極論、性能の良い太陽光パネルを選ぶだけでも設置費用は平均値を超えるため、設置費用の相場はあくまで目安として捉えて、過剰に割高な案件を選ばないよう取捨選択の基準として活用しましょう。
「令和2年度の調達価格等に関する意見(案)」によれば、事業用・住宅用太陽光発電所における設置費用の内訳は以下の通り。
項目 | 1kWhあたりの費用 (事業用) | 1kWhあたりの費用 (新築住宅用) | |
工事費 | 6.4万円 | 6.5万円 | |
設備費 | 太陽光パネル | 14.1万円 | 19.5万円 |
パワーコンディショナー | 4.1万円 | 4.5万円 | |
架台 | 2.8万円 | 2.3万円 | |
その他 | 1.9万円 | 0.3万円 | |
合計 | 26.6万 | 30.6万円 |
*調達価格等算出委員会「令和2年度の調達価格等に関する意見(案)」を抜粋・改編
事業用と住宅用の費用内訳は大差ないように見えるものの、狭い範囲で効率的に発電しなければならない住宅用は「発電効率の高い太陽光パネル」を選ぶため、太陽光パネルの価格は住宅用のほうが高価格な傾向にあります。
実際に、どの程度の設置費用を用意する必要があるのか、いくつかのケースを想定してシミュレーションしてみましょう。
ケース | 太陽光発電を始める目的 |
Aさん(個人) | 新築する自宅の節電、副収入を目的として始めたい |
Bさん(個人) | 資産形成のために投資として始めたい |
Cさん(法人) | 節税も兼ねて新事業として始めたい |
この章では、上記の3パターンを想定しつつシミュレーションを行います。
Aさんの場合、自宅の節電を行いつつ副収入を得られる、住宅用太陽光発電システムを導入することとなります。
設置するシステム容量は5kW前後が一般的であるため、2020年時点の最新の費用相場をもとに計算すれば、設置費用は150万円程度になるとシミュレーションできます。
なお、新築物件に太陽光発電システムを設置する場合、狭い範囲で効率的に発電するために高性能な太陽光パネルを採用するケースが多々。設置費用のうち太陽光パネルの費用が占める割合は、事業用太陽光発電システムに比べて高くなります。
住宅用太陽光発電システムの場合、自家消費を経て電力を売却することから単純な費用対効果を求めることは難しいものの、「節電」や「停電時の電力確保」といった側面で大きなメリットを得られます。
Bさんの場合、発電した電気をすべて売却できる、低圧(10kW〜50kW未満)の事業用太陽光発電システムが導入候補として挙げられます。
「令和2年度の調達価格等に関する意見(案)」によれば、10kW〜50kW未満における設置費用の相場価格は、1kWあたり26.8万円。49kWの太陽光発電システムを導入した場合、設置費用は単純計算で約1,300万円となります。
事業用太陽光発電システムの場合、一定価格で電力を売却できるFIT制度は20年続き、この期間中に得られる売電収入は「投資額に対して年間10%」が一般的。設置費用が1,300万円であれば、130万円程度の売電収入が見込めるのです。
ただし、売電収入のうち2〜4割は運用経費に充てるため、最終的に手元に残るリターンは投資額に対して年間6〜8%ほど。12〜14年目には設置費用の1,300万円を回収し、残りの6〜8年で800〜1,000万円程度のリターンを得られる計算となります。
Cさんの場合、発電した電気をすべて売却できる、50kW超の大規模な事業用太陽光発電システムが導入候補として挙げられます。
2020年時点の費用相場によれば、50kW〜500kW未満の設置費用は1kWあたり21.0万円。そのため、500kWの太陽光発電システムを導入する場合には、1億500万円の設置費用が必要です。
設置費用の1億500万円は一括で経費計上するわけではなく、「減価償却」と呼ばれる考え方にもとづいて17年のあいだ分割した金額を少しずつ計上します。これにより、毎年他の事業で得た利益から設置費用の一部を差し引いて決算を行い、法人税を抑えることが可能です。
Cさんのように節税をメインとして太陽光発電システムを導入する場合、減価償却がキーワードとなります。減価償却に関する詳しい解説は、「太陽光発電における減価償却・税について」をご参照ください。
なお、昨今では電気代削減や二酸化炭素削減のため、自社工場やオフィスに太陽光発電システムを導入するケースも増えてきました。工場やオフィスの電気使用量によっては、電力会社に売電するよりも経済的メリットがあるため、あわせて検討することを推奨します。
太陽光発電システムの設置費用の見積もりを行うとき、利用候補となるサイトは以下の4つです。
サイト名 | 特徴・実績 |
タイナビ | 住宅用太陽光発電システムに特化した見積もりサービス。2017年の調査において、同サービスは「見積価格・施工品質・アフターフォロー」の三冠を受賞しています。 |
タイナビNEXT | 事業用太陽光発電システムの特化した見積もりサービス。タイナビと同じく、イメージ調査にて三冠を獲得しており、ユーザーから多くの高評価を寄せられています。 |
ソーラーパートナーズ | 住宅用太陽光発電システムに特化しており、見積もりサイトのなかで依頼件数No.1を4年連続獲得。NHKやフジテレビで取り上げられた実績もあります。 |
グリエネ | 全国450社のうち、最適な5社を紹介。カスタマーサポートによる個別対応の体制があり、希望条件にもとづいて審査に通過した会社のみを手配してくれます。 |
いずれも、設置予定場所の郵便番号や設置場所、申込者の名前や住所を入力するだけで気軽に見積もりを出してもらえます。
太陽光発電システムの設置を考えているとき、少しでも設置費用を抑えつつ運用を始めるのであれば相見積もりは欠かせません。見積もりを取って詳細を比較すれば、施工内容は同じであるにもかかわらず、費用が大きく異なるケースもあるからです。
特に、住宅用太陽光発電システムの場合は、販売業者によって価格差がある点に留意してください。
野立てや屋根部分に設置するタイプのほかにも、太陽光発電システムを設置する方法があります。
ソーラーカーポートは、簡易的な車庫として利用されるカーポートに、太陽光パネルを設置して発電できる状態にしたものです。2台用のカーポートに太陽光パネルを設置するのであれば、設置費用の目安は200〜250万前後。3台用であれば250〜300万円、4台用であれば300〜400万円と、カーポートの大きさに比例して価格は高くなります。
対するソーラーシェアリングは、農地の上部に太陽光パネルを設置して発電する、以下画像のような設備を指します。
*農林水産省 食料産業局「営農型太陽光発電の優良事例」
農林水産省が公表する「営農型太陽光発電の優良事例」から、発電容量49kWのシステム導入に1,500万円前後の資金を充てていることが分かります。そのため、設置費用は事業用太陽光発電システムと大差ないものの、ソーラーシェアリングを始めるためには「農地転用(一時転用)」と呼ばれる手続きが必要となり、日射量の関係から育てられる作物も制限が加わります。
また、支柱の存在により農耕機の可動域が狭まる懸念もあるため、ソーラーシェアリングの導入が適切か否かは慎重に判断しなければなりません。
ここまで設置費用に関する情報を一通り解説したものの、太陽光発電システムの導入時に検討することとなるソーラーローンや補助金など、まだ気になる点は多くあります。
この章では、よくある質問をいくつかピックアップし、それぞれに回答していきます。
太陽光発電システムは高額であるため、ソーラーローンを利用して導入するケースがあります。特に、投資目的で設置する事業用の太陽光発電システムは、ローンにより借入をして始める場合が大半です。
しかし、ローンといえば「借金」のイメージがあり、人によってはネガティヴな印象を抱くもの。数百万円、数千万円の借金を抱えることに抵抗を覚えることは容易に想像できます。
ですが、ソーラーローンは自動車や自宅の購入にもちいるローンとは異なり、経済的なメリットを得るための借金であり、借りた金額以上の効果を見込めるからこそ利用するものです。
長い期間をかけて自己資金を用意するプロセスを省略し、いきなり大きな資金を利用して太陽光発電システムを導入できるため、ソーラーローンは前向きに検討すべきだといえます。
太陽光発電システムの導入にあたり、借入先の候補となる金融機関は主に3つ。
金融機関 | 金利の目安 | 審査基準 |
銀行 | 1〜2% | 非常に厳しい |
日本政策金融公庫 | 1〜2% | 厳しい |
信販会社 | 2.5%前後 | 易しい |
基本的には、金利が低い金融機関ほど審査基準は厳しく、金利が高くなるにしたがって審査基準は易しくなる傾向にあるのです。そのため、ローンの利息をできる限り抑えるのであれば、まずは審査基準が厳しい銀行・日本政策金融公庫から検討するといった考え方ができます。
一方、時間に余裕がなくいち早く借入を行いたい場合は、審査基準の易しい信販会社が利用候補に挙がります。
信販会社は審査基準が易しいほか、ローンに申し込むための手続きが容易。かつ、数日のあいだに審査結果が分かるため、ローンの利用に手間と労力をかけたくない場合に選ばれることが多々あります。
「この金融機関が正解」といった基準はないため、利用者が優先するポイントにあわせて使い分けることをおすすめします。なお、上記の表に記載した金利・審査基準は目安であり、実際の金利・審査基準は利用時の状況に応じて変動する点にご注意ください。
太陽光発電システムの導入にあたり利用できる補助金・給付金は、以前に比べて減少しているものの、各自治体が独自に太陽光発電システム導入の支援制度を設けています。たとえば、最近では蓄電池と太陽光発電システムをセットで設置することを条件とし、適用できる補助金も登場しています。
環境ビジネスオンラインの補助金検索サービスを利用することで、現時点で利用可能な補助金を都道府県別に検索可能です。
ネット検索を利用して手作業で補助金を検索する場合、過去の情報が混ざっているケースが多く最新情報の収集が難しいため、上記のような検索サービスの利用をおすすめします。
太陽光発電を始めるにあたり、スキルや資格は必要ありません。点検や修理など、専門性の高いメンテナンス業務は、専門の業者に委託するケースが一般的だからです。
しかし、設置費用以上のリターンを得るためには、成り行きではなく「自身で費用対効果を見極める力」が欠かせません。顧客の知識が乏しいことにつけ込み、割高な提案をする販売業者も少数ながら存在するのです。そのため、太陽光発電の技術的な知識に加えて、投資に関する知識として、設置費用が相場価格を大きく上回っていないか、設備導入による費用は何年程度で回収可能なのか、慎重に見極める必要があります。
投資や自家消費を目的として導入される太陽光発電システムは、登場以降ずっと「リターンの大きな投資先」として注目されてきました。
選択肢は住宅用・事業用にとどまらず、カーポートに取り付けるパターンや農業と並行して営むパターンなど、始め方はさまざま。 目的をクリアしつつ希望するリターンを得られるよう、本記事を参考に理想的な太陽光発電のスタイルを探してください。
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