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再エネの普及状況

国内外における再エネの普及状況。日本は進んでいない!?

2021年10月22日

太陽光発電や風力発電など、環境に優しいクリーンなイメージのある再生可能エネルギー。近頃は街中・住宅街どこでも目にできるものとなり、登場当初のような特別感や違和感などは感じず、もはや日常生活に溶け込んだ存在となっています。

順調な歩みを進めているかに思える再生可能エネルギーですが、実は欧米など世界諸外国と比べると日本での普及状況はまだまだ満足できるものとは言えません。

ここでは、日本の再生可能エネルギーの現在地を確認しつつ、今後より一層の普及に向けて乗り越えるべき課題と現状の取り組み、今後の見通しについて詳しく解説していきます。

再生可能エネルギーの普及状況

まずは、日本で再生可能エネルギーの普及がどれほど進んでいるのか、現在の状況を海外事情も踏まえてチェックしていきましょう。以下のグラフは、日本国内における発電電力量を電源別に示したものです。

発電電力量

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「国内外の再生可能エネルギーの現状と 今年度の調達価格等算定委員会の論点案」

2011年度に発電電力量のうち10.4%だった再生可能エネルギーの割合ですが、2018年度には16.9%まで増加しています。

また、水力発電を除いた再生可能エネルギーの占める割合を見てみると、2011年度の2.6%から2018年度に9.2%と、水力発電以外で大きく伸びていることがわかるでしょう。中でも太陽光発電は、2011年度に0.4%だった割合が2018年度には6.0%と、かなりの急成長ぶりを見せています。この急伸は、2012年に導入された固定価格買取制度、通称FIT制度の影響が大きいです。

以下のグラフは、年度別の再生可能エネルギーの導入量推移を示しています。

再生可能エネルギーの導入量推移

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「再生可能エネルギー 固定価格買取制度ガイドブック 2018年度版」

FIT制度のスタートした2012年度を境に、それまで5〜9%と一桁台だった成長率が26%と躍進、圧倒的な伸びを見せていることが一目瞭然でわかります。欧米諸国に目を向けても、2012年から7年間の再生可能エネルギー増加率は日本がトップクラスです。

「国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案」

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「国内外の再生可能エネルギーの現状と 今年度の調達価格等算定委員会の論点案」

 このように日本の再生可能エネルギーは、FIT制度の後押しもあって順調に普及が進んでいるように見えます。しかし、伸び率は大きいものの、日本は世界の主要各国ほど本当の意味で再生可能エネルギーが普及しているとは言い切れないのが現状です。

発電量に占める再生可能エネルギー比率、つまり電力をどれだけ再生可能エネルギーで賄っているか、という視点で日本と世界を比較してみましょう。

発電量に占める再生可能エネルギー比率

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「7.再生可能エネルギーの導入は進んでいますか?」

上記の欧米中を含めた主要9カ国のうち、日本は再生可能エネルギー比率が2017年度時点で最下位の16.0%となっています。30%前後の国が多い中、日本の16.0%はやはり物足りないと言わざるを得ません。このため、日本は世界よりも再生可能エネルギー普及が遅れており、さらなる普及拡大が急務となっているわけです。

逆に考えれば、欧米諸外国に比べて再生可能エネルギーを導入できる伸び代がまだ十分に残されているとも言えます。

再生可能エネルギーの普及を加速させる必要性・普及に伴う効果

ここでは、再生可能エネルギーの普及を加速度的に進めていく必要性と、普及に伴って得られるメリットについて解説していきます。

加速度的な再生可能エネルギーの普及が必要な2つの理由

日本で再生可能エネルギーの速やかな普及が求められる理由は、主に次の2つ挙げられるでしょう。

  • エネルギーの安定確保
  • 温室効果ガスの削減

それぞれの理由について、詳しく解説していきます。

エネルギーの安定確保

安定的なエネルギー確保は日本の大きな課題となっており、再生可能エネルギー普及が急がれる主な理由の1つです。

島口である日本は、地続きのヨーロッパなどと違って他国から電力を輸入することもできませんので、自国内で必要なエネルギーを確保しなければなりません。しかしながら、日本は石油や石炭などのエネルギー資源に乏しく、エネルギー源となる化石燃料のほとんどを海外からの輸入に頼っています。

結果として、エネルギー供給全体の実に85.5%(2018年度)が化石燃料、そしてエネルギー自給率は11.8%(2018年)とOECD主要各国と比べてもかなり低水準です。

エネルギー問題

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「2020—日本が抱えているエネルギー問題(前編)」

エネルギー源の海外依存は、エネルギーの安定的な確保が難しくなることを意味します。国際情勢次第で、化石燃料の輸入価格や調達可能量が大きく左右されるからです。日本の経済活動への影響はもちろん、我々の日常生活も大きな打撃を受けるため、エネルギーの安定確保は日本喫緊の課題となっています。

とはいえ、エネルギー自給率改善を目的に推進した原子力発電も、2011年の東日本大震災によりそのほとんどが停止、火力発電所に依存した状況が続いています。つまり、海外の化石燃料依存を脱却しエネルギー自給率を高めるためにも、日本は化石燃料に頼らない再生可能エネルギーの普及拡大を急ぐ必要があるのです。

温室効果ガスの削減

再生可能エネルギー普及を加速すべきもう1つの理由として、地球温暖化や異常気象の一因と考えられる温室効果ガスの削減も挙げられるでしょう。

温室効果ガスは、自動車などの排気ガスだけでなく、化石燃料を使ってエネルギーを生み出す火力発電でも多く発生します。特に、東日本大震災で原子力発電所が稼働停止、石炭やLNGなど化石燃料を用いた火力発電の稼働が増え、結果的に温室効果ガスの排出量は増加傾向です。

そこで、化石燃料を用いず温室効果ガスを排出しないエネルギー源として、再生可能エネルギーの普及に改めて注目が集まっています。 

再生可能エネルギー普及に伴う8つのメリット

再生可能エネルギーの普及を進めることは、日本社会にとって多くのメリットをもたらしてくれます。

まずは、上記で挙げたエネルギーの安定確保、そして温室効果ガスの削減2つの効果があるでしょう。再生可能エネルギーの普及により火力発電への依存度が下がり、エネルギー自給率の改善と温室効果ガスの排出量低減が見込めます。

加えて、次のような6つのメリットも考えられます。

  • 化石燃料輸入による流出資金の低減
  • パリ協定目標達成による国際プレゼンス向上
  • 再生可能エネルギー関連企業による雇用創出
  • 再生可能エネルギー産業の国際競争力強化
  • 日本市場へのESG投資活性化
  • 非常時のバックアップ電源確保

化石燃料の購入で海外に流出する資金低減という直接的なメリットのほか、パリ協定の目標達成で日本の国際プレゼンスを向上させるなど、政治的な効果も期待できるでしょう。

また、日本経済に目を向けると、再生可能エネルギー産業が活発になることで雇用創出・国際競争力UP・海外からのESG投資増、といったメリットも生じます。

このほか、台風や地震など自然災害の多い日本では、非常時のバックアップ電源として再生可能エネルギーが活用できる点も大きいでしょう。

このように、日本の再生可能エネルギー普及はグローバルな視点に加え、国内視点でも経済・社会の双方でプラスに働きます。

普及に向けた4つの課題と対応策

再生可能エネルギーを日本でさらに普及させるために、現在課題となっているポイントは大きく以下の4つあります。課題1つ1つの詳細を確認していくとともに、その対応策も合わせてチェックしていきましょう。

  • 高い発電コスト
  • 天候に影響される不安定な供給量
  • 電力系統の接続許容量
  • 設備を設置する用地不足

高い発電コスト

日本の再生可能エネルギーはまだまだ発電コストが高く、普及を進める上でハードルの1つになっています。

もちろん、国も補助金やFIT制度などの施策を講じて発電コストダウンを図っていますが、世界に比べると日本は決して安いと言える水準に達していません。

そこで現在進められているのが、大規模な事業用太陽光発電や風力発電、バイオマス発電への入札制度の導入です。入札制度は、入札価格の低い事業者から順に設置許可が下りる仕組みになっています。あらかじめ募集容量が決まっているので、価格競争力が働きコストダウンを望めるというわけです。

このほか、発電コスト低減に寄与する対策として、革新的な新技術への研究開発支援も挙げられるでしょう。実際、2021年9月に東芝がフィルム型のペロブスカイト太陽電池で世界最高の変換効率15.1%を達成するなど、期待を持てる成果も出始めています。

天候に影響される不安定な供給量

再生可能エネルギーは、気象状況によって発電量が大きく変動するため、供給量が不安定で予測を立てにくい現状があります。

電力の需給バランスが崩れると、供給電力の品質が損なわれるだけでなく、最悪の場合はブラックアウトを引き起こしかねません。現在は火力発電所や揚水発電所で供給量を調整していますが、再生可能エネルギー普及を見据えて、調整の必要量を減らすべくさまざまな実証実験等が進められています。

具体的には、個々の再生可能エネルギー発電所を大規模な1つの発電所とみなして統合的に制御するバーチャルパワープラント(VPP)、蓄電池やPower-to-gasなどの電力貯蔵技術の活用などです。

電力系統の接続許容量

再生可能エネルギーの導入量増加とともに顕在化している問題が、電力系統の接続許容量です。

実は、すでにエリアによっては再生可能エネルギーの接続許容量を超えたパンク状態となっており、新規での設置が難しい状況にあります。

都市部は人口が多くエネルギー需要も大きいため問題になっていませんが、すでに九州や四国ではエネルギー需要よりも供給量が上回るという異常事態です。再生可能エネルギーが増えたとしても、その電力を消費する先がなければ発電した電力は意味がないどころか害でしかありません。実際に九州電力や四国電力では、再生可能エネルギーの発電を停止させる出力制御も実施されています。

この状態を解消すべく、国と電力会社で進めている取り組みが地域間連系線の強化です。地域間連系線は、各電力会社間でエリアを跨いで電力をやり取りする送電線のことを言います。これにより、再生可能エネルギー供給量のエリア内需要量オーバーを見越して、需要量の多い他エリアへ電力を融通して解決を図れるというわけです。

設備を設置する用地不足

周りを海に囲まれる日本は決して面積が広いとは言えず、山間部も多い地形特性も相まって再生可能エネルギー設備を設置できる用地が不足してきています。平地あたりの再生可能エネルギー発電量でいうと、実はすでに日本が世界トップです。

平地あたりの再生可能エネルギー発電量

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「今後の再生可能エネルギー政策について」

なお、再生可能エネルギーの用地は、主に次のような条件を満たしていることが望ましいです。

  • 容量を確保できる十分な面積
  • 整地・造成され設備を安全に設置できる土壌
  • 太陽光や風などが強くて発電しやすい環境
  • 周辺住民の理解を得られる場所

全てを満たす土地は設置済みのことが多く、今後の普及を狙う上では設置に必要な土地面積の縮小、もしくは今まで設置の難しかった場所の開拓が必要です。

実際に、設備のサイズダウン・設置場所を工夫する目的で、新素材や新技術によってエネルギー変換効率を高める研究が推進されています。

具体的には、洋上風力発電や営農型太陽光発電、薄膜太陽電池のビル・壁面設置などがあり、現在進行形で新たな再生可能エネルギーの可能性を模索している状況です。

今後の見通し

日本は2050年にカーボンニュートラルを目指すことが宣言され、今後より一層の再生可能エネルギーの普及が必要となります。

まずは、2050年において再生可能エネルギーが主力電源とできるよう、2030年までの足元10年間でできることを優先して進められるでしょう。

現在のペースで再生可能エネルギーの導入が進むと、2030年に再生可能エネルギーの比率は25%前後になる見込みです。これをベースにさらなる普及拡大を図れるか、再生可能エネルギー電源ごとに対策が検討されています。

太陽光発電は、事業用の年間1,000万kWほどの増加ペースをキープすることに加え、ZEH等の施策で住宅用も普及を進めつつ、営農型で未利用土地の開拓を狙う考えです。

風力発電は、洋上風力発電をメインに導入量拡大を狙っており、2030年までに1,000万kW、2040年までに3,000〜4,500万kWを目標に掲げています。

このほか地熱発電や中小水力発電は、導入ペースこそ太陽光や風力と比べると小さいですが、ポテンシャルは非常に大きい再生可能エネルギーです。

地熱発電は世界3位、中小水力発電は技術面だけで言えば約12GWのポテンシャルを秘めており、経済性や地域理解、技術開発などの課題解決が普及拡大の鍵となっています。

おわりに

日本の再生可能エネルギーは、普及が進んできたとは言えど、まだまだ道半ばの状況です。普及拡大の歩みをさらに加速させることで、国際社会の一員としての責務を果たすとともに、国内の経済・社会へのプラス効果も期待できます。発電コストや用地不足などクリアすべきハードルはあるものの、普及拡大に十分な再生可能エネルギーのポテンシャルは残されています。

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、当事者意識を持ちながら今後の取り組みを見守っていきましょう。

EnergyShift編集部
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