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CDM(クリーン開発メカニズム)とは

CDM(クリーン開発メカニズム)とは

2021年03月02日

温室効果ガスの排出削減・吸収のためのメカニズムである「CDM(クリーン開発メカニズム)」をご存知でしょうか?ここでは、CDM(クリーン開発メカニズム)の概要や手続きの流れ、現状や課題についてご説明します。

CDM(クリーン開発メカニズム)とは

CDMは、途上国に協力して温室効果ガスを削減し、先進国が自国の排出削減目標から「途上国における温室効果ガスの削減分」を差し引ける制度。京都議定書に規定される、温室効果ガス削減のための柔軟性措置です。

  • A:途上国に協力して削減した温室効果ガス
  • B:先進国における温室効果ガスの排出枠

上記Aの量に対して発行されるCER(クレジット)をBと相殺できるため、先進国は実質的に自国における温室効果ガスの排出枠を拡大できることとなります。

CDMプロジェクトが誕生した背景

CDMプロジェクトは、1997年に採択された京都議定書において、温室効果ガスの排出削減を達成するための柔軟性措置として規定されたものです。過去の発展にともない排出した温室効果ガスを、先進国が責任を持って削減するよう定めた京都議定書では、途上国に直接的に温室効果ガスの削減を課す規定はありませんでした。
そのなかでも、CDMプロジェクトは途上国が主体の一部となって温室効果ガスの削減・吸収に加担する唯一の枠組みです。また、CDMは温室効果ガスの削減・吸収だけでなく、先進国の環境対策テクノロジーを途上国へ移転させることも目的としており、途上国の持続可能な開発を助長する施策として取り組まれています。

手続きの流れ

CDMプロジェクトに投資国(途上国に投資する先進国)として参加し、途上国で温室効果ガスの削減・吸収を行ってCERを取得するまでの手続きは、以下の流れにもとづいて行われます。

  1. CDMプロジェクトの計画策定
    規定された条件・事項にもとづいて、まずはCDMプロジェクトの計画策定を行います。
  2. プロジェクト設計書(PDD)の作成
    CDMプロジェクトにまつわる技術的・構造的な情報を説明する「プロジェクト設計書(PDD)」を作成。プロジェクト設計書は、以降の手続きにおける判断の基準となります。
  3. 投資国・ホスト国など関係締約国の承認
    投資国は、途上国に協力して温室効果ガスの削減・吸収を図る先進国。ホスト国は、実際に施策を実施して温室効果ガスの削減・吸収を行う途上国を指します。CDMプロジェクトの実施にあたり、ホスト国や関係締約国のDNA(指定国家機関)から承認を得なければなりません。なお、承認のための手順は国によって異なっています。たとえば、日本の事業者が日本政府から投資国として承認されるためには、以下の手順を踏む必要があります。

    1.プロジェクト設計書を英語で作成
    2.日本政府に提出する申請書を作成
    3.申請書・プロジェクト設計書・財務状況にまつわる書類を提出
    4.プロジェクト支援担当省庁に必要事項を報告


    日本からプロジェクトに参加する事業者は、日本のDNAである京都メカニズム推進・活用会議と連携しつつ、上記のプロセスを経て承認を受けます。
  4. CDMプロジェクトの有効化審査
    作成されたプロジェクト設計書がCDMに適格であるのか、排出削減量の算出が正しい計算のもと行われているのかなど、DOE(指定運営組織)のもとCDMプロジェクトの有効化審査が行われます。
  5. CDMプロジェクトの登録
    作成したCDMプロジェクトが有効化審査を通過したのち、やっとCDM理事会によってプロジェクトが登録されます。この際、CDMプロジェクトの登録料として費用を負担しなければなりません。CDMプロジェクトの登録料は、CER発行時に支払うべき「CDM制度の運用経費に充てるための徴収分(SOP-Admin)」にもとづいて算出されることとなっており、その料金は予想年間排出削減量を基準に計算されます。

    ・15,000トンの二酸化炭素まではCERあたり0.1米ドル
    ・15,000トン以上の二酸化炭素はCERあたり0.2米ドル


    なお、登録されたCDMプロジェクト数が10件を下回る国が登録申請をしたケースなど、例外的に登録料が免除される場合もあります。
  6. モニタリング(経過観察)
    プロジェクト設計書に記載のあるモニタリング計画に則り、CDMプロジェクトによって削減される温室効果ガスの排出量を測定し、データ収集を行うプロセスです。
  7. CERの検証・認証
    モニタリング結果を踏まえて、DOEにより行われる排出削減量の事後的な決定を「検証」と呼びます。一方、検証結果にもとづいて排出削減量を書面により確約することを「認証」と呼び、こちらもDOEによって規定された手順通りに進められます。
  8. CERの発行
    DOEにより認証された排出削減量にもとづいて、削減量に相当するCERがCDM理事会から発行されます。なお、CERの発行は、CDM制度の運用経費として徴収される管理費用(SOP-Admin)が差し引かれたのち実施されます。

    ・15,000トンの二酸化炭素まではCERあたり0.1米ドル
    ・15,000トン以上の二酸化炭素はCERあたり0.2米ドル


    管理費用は、登録料の算出にも適用される上記の基準が使用されます。
  9. CERの分配
    発行されたCERの2%は、気候変動に対して脆弱な途上国の適応費用として支援に充てられます。そののち、投資国とホスト国の口座にそれぞれCERが分配される仕組みです。

CDMプロジェクトの種別

CDMプロジェクトは、温室効果ガスの排出削減を目指す「排出削減CDMプロジェクト」と、温室効果ガスの吸収を図る「新規植林/再植林CDM(A/R CDM)プロジェクト」に大別できます。

排出削減CDMプロジェクト

排出削減CDMプロジェクトは、温室効果ガスの排出削減を促進するCDMプロジェクト。規模に応じて大規模CDMと小規模CDMに分類されており、小規模CDMはさらに下記3つに大別されます。

  • 最大出力が15,000kWまでの再生可能エネルギープロジェクト
  • 年間削減エネルギー量が6,000万kWhまでの省エネルギープロジェクト
  • その他、年間の排出削減量がCO2換算6万トン未満のプロジェクト

これらの小規模CDMは大規模なCDMと違い、複数のプロジェクトの手続きを一括化して行うことが可能だったり、プロジェクト設計書の記載事項が減らされていたり、取引コストを下げるために手続きが簡略化されています。

新規植林/再植林CDM(A/R CDM)プロジェクト

新規植林/再植林CDM(A/R CDM)プロジェクトは、森林ではない場所に植林を施すことで、下記3つの基準を満たす森林地帯を作る活動です。

  • 最低林冠率:10~30%以上
  • 森林のまとまり:0.05~1.0ha(ヘクタール)以上
  • 成熟時の樹高:2~5m以上

新規植林/再植林CDM(A/R CDM)プロジェクトでは、実質的な温室効果ガスの吸収量を示す「純人為的吸収量」をもとにクレジットが発行されます。ただし、新規植林/再植林CDM(A/R CDM)プロジェクトは、排出削減CDMプロジェクトとは異なり「温室効果ガスの永続的な削減」には繋がりません。なぜなら、新規植林/再植林CDM(A/R CDM)プロジェクトによって吸収された二酸化炭素は、再び森林火災や枯死(こし)により排出される恐れがあるからです。このような温室効果ガス吸収の非永続性を解消するため、通常のCERではなく以下のような期限付きのクレジットが発行されます。

  • 短期期限付きクレジット(Temporary CER :tCER)
  • 長期期限付きクレジット(long-term CER :lCER)

CDMの現状と課題

2019年末時点では、CDMプロジェクトを通じて約20億トン分のCERs(CER・tCER・ICER)が発行されており、約8億トンに相当するCERsは使用されないまま残っていると算出されています。
2020年以降の、温室効果ガス削減における国際的枠組みとなっているパリ協定のうち、2ヶ国以上の協力により排出削減量を増やす「第6条」に対して、京都議定書のCDMにより発行されたCERsを適用可能とするか否か意見が分かれています。実は、CDMプロジェクトのなかには「CDMがなくても実施予定であった計画」が多数存在しており、約8億トンのCERsには本来発行すべきではなかったクレジットが含まれているのです。そのため、CDMにより発行されたCERsをパリ協定へ引き継げるものとして認めてしまうと、パリ協定下の削減・吸収量が不当に目減りしてしまうと危惧されています。
この件の議論が行われた2019年のCOP25では意見がまとまらず、決定は次回のCOP26に先送りとなっているため、パリ協定第6条におけるCERsの扱いを決定することが、CDMに関する目下の課題だといえるでしょう。

おわりに

京都議定書における柔軟性措置であるCDMは、CERsの発行に時間を要することやCDMプロジェクトの内容に偏りが出てしまったことなど、運用にともない多くの課題は見つかったものの、多くのCDMプロジェクト発足のきっかけとなりました。

2020年以降の新たな枠組みとなるパリ協定において、CDMプロジェクトを通じて発行されたCERsの扱いがどうなるのか、次回のCOP26(気候変動枠組条約締約国会議)に注目が集まります。

EnergyShift編集部
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