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CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)とは

CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)とは

2021年03月10日

企業に対し、環境にまつわる情報の公開を求める「CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)」をご存知でしょうか?
ここでは、CDPの活動内容や評価方法、賛同する企業についてご説明します。

CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)とは

CDPは、企業に対して温室効果ガスの排出量や、気候変動などに対する取り組みの情報公開を求める活動を行う組織。または、その活動を指して使われる言葉です。2000年にスタートして以降、企業がもたらす環境影響の計測・管理を行っており、2005年からは日本でも活動しています。

CDPの活動内容

CDPは1年に一度、調査対象となる企業に質問書を送付し、各企業から集計した回答内容を公開します。調査プログラムは5つの種類が存在しており、CDPは集計した各領域の回答内容を踏まえて企業の評価を下します。

  • 気候変動
  • ウォーター
  • フォレスト
  • サプライチェーン
  • シティ(都市)

集計した回答内容は4段階のレベルで評価されることとなっており、Aレベルを最高評価として企業の環境パフォーマンスに対するスコアリングが行われます。

*CDP「CDP 気候変動 レポート 2019:日本版」

CDPはこのような情報開示の取り組みを通じて、自らに起因する環境へのインパクトを把握するよう投資家・企業・自治体に促し、世界全体が持続可能性に優れた経済実現に目を向けるための啓蒙活動を行っています。

気候変動

CDPが行う調査プログラムのうち、最も歴史あるものが気候変動にまつわる調査です。「CDP 気候変動 レポート 2019:日本版」によると、気候変動のスコアリング対象となる企業8,000社のうち、最高評価となる気候変動Aリストに分類される企業の数は181社。この181社は全体の上位2%に相当し、このうち日本のAリスト企業数は世界で最多数となる38社となっています。

*CDP「CDP 気候変動 レポート 2019:日本版」

ウォーター

ウォーターは、水にまつわるリスクの情報公開を求める取り組み。自社における取水量や総排出量、処理方法などを集計し、水ストレスにまつわる情報の把握に役立てられています。
全世界にある72社のAリスト企業のうち、23社の日本企業がAリストに選出されており、気候変動と同じく世界一の水準を誇っています。

フォレスト

フォレストは、CDPにより発足された3つ目の調査プログラムです。企業が森林関連に与える影響、および森林問題によって被った影響をリサーチし、調査対象の事業活動における森林に対するリスクの実態を集計・評価しています。
「CDP フォレスト レポート 2019:日本版」では、投資先の企業が森林破壊のリスク管理を行わないことに対して、投資家が被るネガティブな影響には以下のようなものがあると言及しています。

  • 地元住民の生活に対する悪影響が懸念される
  • 生物多様性に対する悪影響が懸念される
  • 気候変動を招き、農作物の収穫に悪影響を与える
  • 関連領域に、事業の可能性を制限する制度が導入される懸念がある

*CDP「CDP フォレスト レポート 2019:日本版」

サプライチェーン

環境課題はサプライチェーン単位で解決すべきであるものの、環境意識の高い企業ばかりが具体的なアクションに踏み切り、それら企業のサプライヤー(仕入れ先)は抱える問題の認識・解決に向き合えていないといったケースは珍しくありません。
CDPは大企業のサプライヤーを対象として情報開示を促すため、サプライチェーンにフォーカスした調査プログラムを2007年にスタートしました。同プログラムでは、気候変動・ウォーター・フォレストに関する質問が行われます。
CDPが公開する「CDP サプライチェーンレポート 2019」によると、2019年度におけるサプライヤーの情報開示は、前年度比で1,400社ほどのプラスとなる約7,000社を記録。大手企業とサプライヤーが協働し、環境問題に取り組む傾向は拡大していることが同レポートから見て取れます。

シティ(都市)

ここまでにご紹介したプログラムが企業を対象とした調査である一方、シティは地方自治体を対象としています。質問書の回答を通じ、都市・自治体における気候変動対策の情報開示を求める取り組みです。

情報収集・分析・評価の方法

CDPは、持続可能な経済の実現というCDPが掲げるミッションのもと、「CDPが送付した質問書に対する企業の回答」にもとづいてスコアリングを実施します。質問書により収集された情報は、質問内容によって機械的に、あるいはスコアラーの判断のもと評価されていきます。
質問書の回答をもとに得点はパーセンテージの値に変換され、以下のように最終スコアが算出される仕組みです。


*CDP「スコアリングイントロダクション 2019」

情報収集にもちいられる質問書の内容は、以下のような内容となっています。

質問のカテゴリー設問の一例
ガバナンス組織内における監督機関の有無気候関連問題の管理に関する従業員へのインセンティブ
リスクと機会自社の短期・中期・長期視点における戦略内容自社の財務・戦略に影響を及ぼす気候関連リスクの有無
事業戦略事業戦略のなかに気候変動課題が組み込まれているか気候変動課題を組み入れていない理由はなぜか
目標と実績排出量目標の有無自社製品における低カーボン製品の有無、第三者の温室効果ガスの排出量削減へ貢献する効果の有無
排出量算定基準年における二酸化炭素の排出量排出量計算に使用した基準、プロトコル、方法論について
排出量データスコープ1(自社が直接排出する温室効果ガス)の排出量スコープ2(間接的に排出される温室効果ガス)の排出量スコープ3(スコープ1・2以外の間接排出)の排出量
排出量内訳国・事業・スコープ別の温室効果ガス排出量の内訳について
エネルギー事業支出におけるエネルギー支出額の割合
追加指標自社の戦略・リスク管理にもちいる指標の情報開示、変化の推移
検証排出量データを提出しているか否か提出している場合、第三者による検証・保証を行ったか
カーボンプライシング自社の事業がカーボンプライシングによる規制を受けているか自社における社内カーボンプライス(炭素価格)の使用について
協働気候関連問題に関してバリューチェーンと協働しているか気候変動問題に対して影響を及ぼす活動に携わっているか
その他の土地管理影響※農産物、食品・飲料・タバコ、製紙および林業のセクターに当てはまる組織のみ対象となる項目
最終承認自社のCDP気候変動の回答を承認した人物について
サプライチェーン自社における温室効果ガス排出量の顧客に対する割り当て排出量割り当てに関する課題、計画の有無

*CDP「CDP Climate Change 2019 Questionnaire

上記は、2019年に行われた気候変動に関する質問書の設問一例です。CDPウォーターやCDPフォレストも、類似の設問が用意されています。
なお、CDPの回答には「回答事務費用」が発生し、ベネフィット(特典)に応じて価格が異なります。

Subsidized contribution
費用9万7,500円(+消費税)
特典CDPコーポレートダッシュボードページ等を通じた回答の評価内容の通知CDPツールの利用(レポーテイングフレームワークとガイダンス)CDPを通じた情報開示により(投資家・顧客等のステークホルダーとの)対話の機会獲得
※CDPウェブサイトからの他社回答閲覧無料回数20回(CDPアカウント登録者)
Standard contribution
費用27万2,500円(+消費税)
特典CDPコーポレートダッシュボードページ等を通じた回答の評価内容の通知CDPツールの利用(レポーテイングフレームワークとガイダンス)CDPを通じた情報開示により(投資家・顧客等のステークホルダーとの)対話の機会獲得【CDPサポーターマーク】ロゴデーターの付与CDPジャパンイベントの優先的参加権限
※CDPウェブサイトからの他社回答閲覧無料回数20回(CDPアカウント登録者)
Enhanced contribution
費用65万円(+消費税)
特典CDPコーポレートダッシュボードページ等を通じた回答の評価内容の通知CDPツールの利用(レポーテイングフレームワークとガイダンス)CDPを通じた情報開示により(投資家・顧客等のステークホルダーとの)対話の機会獲得【CDPサポーターマーク】ロゴデーターの付与CDPイベントでの企業名紹介企業サスティナビリティレポート等へのCDPディレクターからのコメント無料CDPベンチマークレポート作成CDPウェブサイトからの他社回答閲覧無料回数100回(通常は20閲覧回数まで)1社1名の人数制限があるCDPイベントに2名までの参加権限
※CDPウェブサイトからの他社回答閲覧無料回数20回(CDPアカウント登録者)

どのような企業が賛同している?

2019年は、世界の時価総額の半分以上に相当する8,400社を超える企業がCDPに賛同し、CDPを通じて環境データを開示しています。
また、CDPは運用資産総額が95兆米ドルにものぼる525の機関投資家、運用費用総額3.6兆米ドルを誇る125の企業・団体の代表でもあるため、すでに非常に多くの賛同を得ているといえるでしょう。

CDPに参加する企業の多さは、以下のグラフからも見て取れます。

*CDP「CDPスコア(回答評価)

おわりに

活動初期こそ一部の団体にのみ注目される活動でしたが、いまや業種・規模を問わず多数の組織がサステナビリティ(持続可能性)を重要な要素だと認識しているため、持続可能な経済を実現するためのCDPには注目が集まる一方です。 今後の経済活動を創る「影響度の高い取り組み」だといえるので、経済・環境に関心を寄せるなら目が離せない領域だといえるでしょう。

EnergyShift編集部
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