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土地活用として太陽光発電は適しているか

土地活用として太陽光発電は適しているか

2021年03月09日

さまざまな空き地の活用方法がある中、どの手段が最もリターンのある活用方法なのか判別することは難しいものです。しかし、空き地の条件次第では、太陽光発電が有力な選択肢として挙げられます。なぜなら、空き地活用後の稼働率、およびリターンのバランスに優れているからです。

ここでは、太陽光発電はどのような土地が適しているのか、ほかの活用方法と比較してどういった優位性があるのかをご説明します。

空き地の活用方法

何にも使わない空き地であっても、固定資産税や都市計画税は課せられます。また、空き地は放置すれば雑草や枯れ葉で荒れるため、定期的に清掃する手間がかかります。 本来、土地は資産であるものの、空き地のまま放置している限りは負債として所有者にマイナスの影響を与えてしまうのです。 そのため、空き地は何らかの手段で活用することが推奨されます。代表的な空き地の活用方法には、以下が挙げられます。

  • 太陽光発電
  • 不動産経営(マンション・アパート・戸建の賃貸)
  • 駐車場経営
  • トランクルーム経営
  • コインランドリー経営
  • 自動販売機の設置
  • 土地をそのまま貸し出す(資材置場、貸農園)

それぞれ、運用中のイメージやリターンの安定感が大きく異なるため、どのような活用方法なのか具体的に解説していきます。

太陽光発電

空き地に発電設備を設置し、電力会社へ売電をしたり自家消費をしたりといった方法で、経済的なメリットを得られる選択肢が「太陽光発電」です。

売電を行う場合は、再生可能エネルギーの電気を決まった価格で一定期間にわたり電力会社が買い取るFIT制度(固定価格買取制度)の対象となります。 適用される期間は発電設備の要件によって10年、あるいは20年。中長期的に安定した価格で売電できることから、空き地を収益化する方法として有力な選択肢だといえます。

比較的日当たりの良い土地に適しており、複数ある土地活用と比較して交通に不便な場所であっても不利に働かない点が特徴です。

不動産経営(マンション・アパート・戸建の賃貸)

空き地に賃貸用のマンションやアパート、戸建住宅を建設して貸し出す「不動産経営」は、空き地活用の手段として代表的な方法の1つ。衣食住に密接した事業であるため需要がゼロになることはなく、賃貸のニーズが高い都市部に近いほど安定した利益を期待できます。

ただし、少子高齢化により今後は日本各地で過疎化が進むことから、徐々に不動産経営者にとっての逆風は強くなる見込みです。入居者がいなければ収入はゼロになるため、活用対象の土地が今後も需要の高い場所であることが大前提となります。 そのため、賃貸のニーズを見極めつつ、長期的に入居率を維持できる賃貸物件を用意できなければ、かえって投資費用・維持費用で赤字を抱える可能性もある選択肢です。

駐車場経営

空き地を駐車場にして料金を徴収する「駐車場経営」は、少額な初期費用で始められる空き地活用の1つ。用意できる資金が少ない場合、土地の形状が賃貸物件や太陽光発電設備の建築に適さない場合に候補となります。

  • 月極駐車場
  • コインパーキング

上記の方法により運営されるケースが多く、月極駐車場の場合は空き地の所有者が、コインパーキングの場合は専門業者に空き地を貸して賃料を得るケースが一般的です。いずれの場合も、住宅街や駅周辺、商業施設の近くであるほど展開先として適しています。

トランクルーム経営

「トランクルーム経営」には、屋内で展開するものと屋外で展開するものがあり、空き地活用の場合には屋外でトランクルームを運営することとなります。 太陽光発電や不動産経営に比べてリターンは小さいものの、設置費用は比較的少額。土地が造成されていなかったり、狭小であったりしても無理なく設置できる点が特長です。トランクルーム経営も駐車場経営と同じく、空き地の所有者自身が運用するパターンと、専門業者に土地を貸し出して委託するパターンに分けられます。

トランクルーム経営は、セキュリティ面の配慮を始め運営に求められる時間・コストが大きいため、収益は二の次で管理の容易さを優先するなら外部委託が有力。自身でトランクルーム経営を行う場合に比べ、収益性は低下するものの、土地を専門業者に賃貸することで手間をかけずに賃料を得られます。

コインランドリー経営

洗濯作業の時間短縮、あるいは旅行先での洗濯にもちいられるコインランドリーを運用し、収益を得る空き地活用が「コインランドリー経営」です。コインランドリー経営も所有者自身で運営するタイプ、および専門業者に土地を貸し出すタイプに分かれています。

昨今、夫婦共働きが一般的になったことで洗濯に割く時間がなくなったこと、宿を転々とする訪日外国人が増えていることから、衣服を自宅外で洗うニーズが増えると見込まれてコインランドリーは注目を集め始めました。
ただし、ほかの空き地活用に比べて競合・ニーズの精査は難度が高く、駐車場を併設できる面積がなければ利用客の獲得は困難。初期費用は1,000万〜2,000万円台にのぼるため、比較検討の対象は太陽光発電や小・中規模の不動産経営となるでしょう。

自動販売機の設置

ほかの空き地活用と並行して行われることの多い「自動販売機の設置」は、狭いスペースでも始められる空き地活用の1つ。人通りのある場所と相性が良く、不動産経営や駐車場経営の収益の足しにするため運用されるケースが多々あります。
多くの場合は設置や売上金の回収、空き缶の収集といった一連の業務を設置業者に一任できるため、リターンこそ大きくないものの手間を必要としない選択肢といえるでしょう。

土地をそのまま貸し出す(資材置場、貸農園)

空き地を資材置場や貸農園として貸し出せば、土地にほとんど手を加えることなく活用できます。ただし、初期費用として必要になる金額は少ない一方、大きな利益は望めません。
空き地活用に極力お金をかけることなく、遊休地となっている場所をひとまず何らかの方法で運用したいといった場合、こうして土地を安価で貸し出す方法も選択肢に入るでしょう。

空き地の土地活用に太陽光発電は適しているか

空き地活用の選択肢は数多くあるものの、いずれも一長一短。メリットとデメリットがあり、メリットばかりを見て始めれば失敗に繋がります。 空き地の土地活用として、どういった観点から太陽光発電が適していると評価できるのか、メリットやデメリットとともにご説明します。

土地活用として太陽光発電を行うメリット

土地活用として太陽光発電を行うことのメリットには、以下が挙げられます。

  • FIT制度により20年間の安定利益を得られる
  • 入居者・利用者がいなくても成立し、稼働率は一定に保たれやすい
  • 人的なトラブルが発生しづらく維持に手間がかからない

各メリットを順にご説明します。

FIT制度により20年間の安定利益を得られる

FIT制度は、再生可能エネルギーの電気を、決まった価格で一定期間にわたり電力会社が買い取る制度です。投資目的で空き地に設置される10kW以上の発電設備は「事業用太陽光発電」に分類され、FIT制度が20年間適用されます。つまり、20年のあいだは安定して利益を得られるということです。

2020年度に太陽光発電設備を設置し、認定を受けて売電を始める場合は、発電出力に応じて以下の買取価格が適用されます。

太陽光発電の買取価格(2020年度)
10kW未満の場合21円/kWh
10kW〜50kW未満の場合13円/kWh(税別)
50kW〜250kW未満の場合12円/kWh(税別)

なお、2020年以降にFIT制度の認定を受ける10kW~50kW未満の太陽光発電設備は、発電した電気をすべて電力会社に売却する全量売電ではなく、自家消費を行ったのちに電気を買い取ってもらう余剰売電の対象となります。

入居者・利用者がいなくても成立し、稼働率は一定に保たれやすい

不動産経営であれば入居者、駐車場経営やトランクルーム経営、コインランドリー経営や自動販売機は利用者がいなければ収益がゼロです。
一方、太陽光発電は太陽光を電気に変換して売却するといった特性上、設備利用者の有無が収益に関係することはありません。天気が良く太陽光さえあれば稼働率はほぼ一定であるため、収支の見通しが立ちやすく運用成績がシミュレーションから大きく外れることは稀だといえます。

入居者・利用者に依存しない収益の仕組みは、過疎化が深刻視される「都市部から離れたエリア」であるほどメリットを感じられるため、人口減少がダイレクトに影響するほかの土地活用より安心して取り組めるのです。

人的なトラブルが発生しづらく維持に手間がかからない

太陽光発電以外の空き地活用は、いずれも入居者・利用者が存在する以上、人的なトラブルが発生します。特に、太陽光発電と比較されることの多い不動産経営は、入居者同士のトラブルを始め、オーナーと入居者間で揉め事が発生するケースも珍しくありません。
一方、太陽光発電は人的なトラブルが少なく 、管理運営に必要なメンテナンス業務はすべて専門業者に委託できます。太陽光発電を始めたからといって、太陽光発電の管理に大きく時間を奪われる可能性は低いため、本業と並行して取り組みやすいといえるでしょう。

土地活用として太陽光発電を行うデメリット

土地活用として太陽光発電を行う場合、FIT制度の適用期間が20年である点はデメリットとなります。
買取期間の終了までは安定した利益を得られますが、買取期間の終了後は設備の売却や電力の自家消費、FIT制度と入れ替わる形で導入される非FIT制度での売電、あるいは設備を廃棄して再び活用するなど出口戦略の考案が必要です。
このうち、>最も有力な選択肢となるのは、非FIT制度による売電になると考えられます。

土地活用として太陽光発電を行うリスク

多くのメリットを持つ太陽光発電も、決してノーリスクで運用できる投資対象ではありません。代表的なリスクとしては、以下が挙げられます。

  • 不良や落雷による設備故障のリスク
  • 天候不良による発電量低下のリスク
  • 悪意ある事業者に遭遇するリスク
  • 自然災害による設備損壊のリスク

いずれも、予想やコントロールはできませんが、なかには特定の方法で対策できるリスクもあります。

不良や落雷による設備故障のリスク

稀なケースではあるものの、初期不良による設備機器の異常、落雷時に誘導雷によってパワーコンディショナーが故障するリスクはあります。
製造過程で起こった初期不良であれば、設備機器のメーカーに製品保証として修理・交換で対応してもらえる場合がほとんど。ただし、落雷時に故障したパワーコンディショナーは、契約料を支払って加入する損害保険での対応になります。

天候不良による発電量低下のリスク

年度によっては、シミュレーション時に想定していた気象条件より悪天候が続き、予想よりも日射量が低下する可能性があります。日射量は太陽光発電設備の発電量に影響し、これらは利益の大きさに直結します。
そのため、期待していた利益に届かないリスクを念頭に置いておくべきです。発電量低下は対策できないリスクであるものの、発電量のシミュレーションをシビアに行うことで、実測値が大きく乖離する可能性を抑えられます。

悪意ある事業者に遭遇するリスク

太陽光発電を始めるにあたり、悪徳業者に遭遇したために損失を被るケースがあります。 年々、詐欺のような事例がニュースにあがる機会は減っているものの、「太陽光発電投資を失敗しないために、事前にリスクを理解しよう」の記事で解説したように、組織ぐるみで悪行を働く業者は過去に数件確認されました。
悪徳業者に騙されないよう、各自が下記のポイントを押さえつつ行動する意識が求められます。

  • 取引を行う事業者の評判・口コミを事前に調べる
  • 過去の実績を見せてもらい信頼に足る事業者か判断する
  • 提案されている内容を理解できない状態のまま、契約を締結しない

大きな金額が動くため、安易に商談を進めることは避け、信用して良い事業者か否かを慎重に判断することを推奨します。

自然災害による設備損壊のリスク

太陽光発電設備は実物資産であるため、自然災害による設備損壊のリスクが懸念されます。特に太陽光発電設備に甚大な被害をもたらすのは、下記の自然災害です。

  • 台風による強風や高潮
  • 豪雨による土砂災害や水没

いずれも、太陽光パネルの変形・飛散、パワーコンディショナー損壊の原因となります。 なお、前述した落雷のほか、上記を含むあらゆる自然災害が招く事故は、損害保険へ加入することで経済的な損失をカバーできます。損害保険にも複数の種類があり、それぞれ補償対象が異なります。

保険の種類各保険の特徴
火災保険火災・落雷・風災・水災など、基本的な災害による損失を補償する保険
動産総合保険
賠償責任保険発電設備の損壊・飛散により、他者に被害を与えた際の損害を補償する保険
休業補償保険発電設備が稼働停止をしている期間、収入を補填する機能を持った保険

火災保険と動産総合保険は、似たような特徴を持つ損害保険ではあるものの、以下のように盗難や電気的・機械的事故の部分で違いがあります。

 火災保険動産総合保険
火災・落雷・爆発
風災・雪災・雹災
水災
電気的事故・機械的事故 (ショート等による機械の損傷)補償範囲外
盗難補償範囲外
不測かつ突発的な事故 (飛来物等による損傷)補償範囲外

*雹災:大きな雹(ひょう)が降ることで起こる災害

一般的に、火災保険と動産総合保険は、それぞれ上記の自然災害による被害を補償しています。ただし、保険会社によっては細かい部分で違いがあり、上の図表とは補償されるケースが異なる場合もあります。

地震被害は火災保険・動産総合保険で対応できないケースがほとんど。別途、特約に加入する必要があるため、地震に備える場合は火災保険・動産総合保険単体ではカバーできない点に注意しましょう。

なお、損害保険料は火災・動産総合保険であれば年間1〜4万円程度、休業補償保険に関しては1万円未満が目安です。賠償責任保険の保険料は、周辺環境によりリスクが異なるため一概に断定できないものの、条件次第では年間1万円未満に収まるケースもあります。

太陽光発電に不向きな土地の特徴

太陽光発電に不向きな土地は、いくつかの特徴が挙げられます。

  • 日光を遮る木・建物が多い
  • 土砂災害が起こりやすい
  • 豪雪地帯である
  • 塩害が懸念される

大前提として日光を遮る木・建物が多い場所は、発電量が伸びづらく太陽光発電に不向きです。また、豪雨による土砂災害が多発するエリア、あるいは豪雪地帯である場合は災害に巻き込まれる懸念があり、何らかの対策を講じて運用しなければ多くの不安が残ります。

また、海岸に近い土地であれば、金属の腐食を招く塩害に悩まされる恐れがあります。具体的に海岸から500m以内は重塩害地域、日本海側以外では500m〜1、2km程度、日本海側では最大7km程度を塩害地域と分類しています。 塩害に強い設備は各メーカーが開発・提供しているものの、本来懸念する必要のないリスクを抱える点で塩害地域は太陽光発電に不向きな場所だといえるでしょう。

太陽光発電投資者に土地を貸すという手段も

空き地を太陽光発電に活用するとき、自身で太陽光発電を行う以外に、太陽光発電投資者に土地を貸すという手段もあります。 太陽光発電投資者に土地を貸すメリットは、賃貸料を得られることです。これにより、土地にかかる固定資産税の税負担を利益で賄えるうえ、土地に生える雑草の処理を任せられます。

ただし、太陽光発電投資者と契約を締結している期間中は、土地を自由に使用できません。事業用太陽光発電にもちいる場合、太陽光発電投資者とのあいだに20年間の契約を結ぶことが考えられるため、自身で何か別の土地活用を始めようと考えても困難です。

おわりに

空き地の活用方法は数多くあるものの、不動産経営や駐車場経営を始めとする「利用者ありきの手段」は、戦略部分が重要となり太陽光発電より運用難度が高いイメージです。
一方、太陽光発電は稼働率がほぼ一定に保たれて、かつ設置後はそれほど手間がかかりません。FIT制度による利益の安定性も相まって、高い水準でリスクとリターンのバランスが取れている土地活用だといえるでしょう。 間違いなく、有力な空き地活用の1つに挙げられるため、空き地の使い道を考えている場合はぜひご検討ください。

EnergyShift編集部
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