夏になると気温・室温ともに上がり、冷房機器を使うため電気代が高騰しがちです。冷房機器を使うとき、どのような点に注意すると節電につながるのでしょうか?
ここでは、夏に消費電力が多くなる家電、および各家電の具体的な節電対策をご説明します。
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いまや、節電や省エネルギーといった言葉に珍しさはありませんが、節電対策の意義を考える機会はそれほど増えていないように思われます。また、節電や省エネルギーの言葉の響きが、どこか節約や倹約をイメージさせるにとどまっていることは否めません。しかし、節電対策は世界レベルで大きな意義を持っており、ひいては私たちの将来に多大な影響をもたらすのです。節電対策をすることの意義は、家計の最適化だけでなく以下のような領域にも反映されます。
*資源エネルギー庁「「令和元年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2020)」
上記のグラフから分かる通り、いまも国内のエネルギー供給は化石燃料に頼っています。このまま化石燃料の利用を続ければ限りある資源は失われ、地球温暖化の問題に悪影響を及ぼします。これを解消するため、電力消費を抑えてエネルギー需給を最適化し、化石燃料に依存しない世界を目指すためには各人の節電意識が重要なのです。
総務省統計局が公表する「家計調査(家計収支編)時系列データ(二人以上の世帯)」によると、2019年7月の電気代の平均値は8,307円、8月は9,636円となっています。
*経済産業省「夏季の節電メニュー(ご家庭の皆様)」
資源エネルギー庁の統計をもとにした資料によれば、夏季の消費電力は上記のような内訳となっており、特にエアコンと冷蔵庫が占める電気代が多くなっています。そのため、夏季の節電対策は、エアコンと冷蔵庫の使い方を工夫することがカギとなります。
ここでは、夏季に使用することの多いエアコンと冷蔵庫の節電対策をご説明します。
夏季はエアコンの使用比率が高くなるため、いかにエアコンを節電するかが重要となります。資源エネルギー庁が公表する「省エネ性能カタログ2019年版」では、以下のような利用方法が推奨されています。
外気温度が31℃と仮定し、2.2kWのエアコンを1日あたり9時間使用する場合、28℃の室温設定にすることで年間30.24kWhの節電につながります。お金に換算すると約820円の節約になり、15.12kgのCO2削減となるのです。
このほか、冷たい空気は床付近に滞留する特性があるため、エアコンの風向きは水平方向に設定し、サーキュレーターや扇風機をもちいて冷気を循環させるよう工夫することで部屋全体が涼しくなります。また、エアコンは経年により消費電力に対する冷房効果が低下してしまうため、冷房効果が弱まったり運転音の大きさが気になったりした際は、買い替えの検討を推奨します。
なお、冷房を必要なタイミングでのみ利用すると節電効果が見込めるものの、夏は熱中症の危険があるため「暑さを感じているにもかかわらず我慢する」という行為はすべきではないでしょう。
エアコンに次いで電力消費の多い冷蔵庫は、以下のような方法で節電することをおすすめします。
「家庭の省エネ徹底ガイド 春夏秋冬 2017」によると、ものを詰め込んだ状態から半分に量を減らすことで、年間で43.84kWhの節電になるとのこと。金額にして約1,180円の節約となり、25.7kgのCO2削減効果が期待できます。
缶詰や調味料のうち常温保存ができるものは冷蔵庫に入れず、食材も一度あたりの購入量を少なくするよう心がけることで、詰め込んだ状態を解消することが可能です。
また、熱いものをそのまま冷蔵庫に入れると庫内の温度が上昇し、再度庫内を冷やすまでに大きな電力を消費することとなるため、熱いものは冷ましてから保存するよう心がけることを推奨します。
エアコンや冷蔵庫の使い方以外に挙げられる、手軽な節電対策をご紹介します。すでにエアコンと冷蔵庫の使い方に配慮している場合は、こちらの節電対策を実践してみてください。
ZEH(ゼッチ)は、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(Net Zero Energy House)と呼ばれるエネルギー消費量の収支ゼロを目指した住宅、あるいは補助金をめぐる政府の定義を指す言葉です。
住宅としてのZEHは、窓やドアに断熱材を使用して断熱性能を向上させ、省エネ家電や再生可能エネルギーを実装することで、電力消費を抑えつつエネルギーの消費量をゼロにすることを目標としています。
優れた断熱性能は外気による室温上昇の防止に役立ち、室内の冷気が外部に逃げることを阻止するため、消費電力に対して快適な室温の維持が容易になります。ZEHの詳しい情報は以下の記事で解説しているので、本記事とあわせてご参照ください。
例年、省エネ家電の性能は高くなっており、新型であるほど大きな節電効果を得られます。「省エネ性能カタログ 2019 年版」のような、省エネ性能を比較できる一覧表を参照し、予算の範囲内で省エネ性能が優れたものを選択することが好ましいでしょう。
なお、一度にすべての家電を省エネ家電に取り換えることは難しいため、まずは消費電力の大きな家電から省エネ仕様のものに交換していくことをおすすめします。
ピークカットは、最も電気の単価が高くなる昼間の時間帯に電力消費を抑え、効果的に電気代を節約する方法を指します。たとえば、昼間の時間帯は室内に自然光が差し込むため、これを利用して照明の電源をオフにすることも立派なピークカットです。
一方、ピークシフトは電気の単価が高くなる時間帯を避けて、別の時間帯に電力を使用する方法を指します。ノートパソコンを夜間に充電し、日中はバッテリーに蓄積された電力をもちいるといった行為も、ピークシフトの一種だといえるでしょう。蓄電池を導入している家庭・企業であれば、夜間に蓄電池へ電力を貯めておき昼間に放電することでピークシフトを実践できます。
水に濡らしてすぐに使える冷感タオルを活用したり、寝室のマットレスや布団を冷感素材の製品に変えたりすることで、エアコンに頼らず自宅で快適に過ごす工夫も節電につながります。また、職場が節電を心がけている場合は、ミストタイプの冷感スプレーや首元にあてられる保冷剤など、気軽に持ち運べるアイテムを常備して通勤することをおすすめします。
勤務先の社風により基準はさまざまであるものの、節電状況下の職場ではクールビズを取り入れたいところです。環境省が以下のような基準を設けているため、これを参考にオフィスではTPOに応じて積極的にクールビズを取り入れていくよう推奨します。
*環境省「環境省におけるクールビズの服装の可否」
また、クールビズは家庭にも取り入れるべきといった意見は多く、オフィスだけでなく家庭でも室温設定が28℃前後になるよう意識し、服装の工夫や扇風機などをもちいて体温調節を図ることが勧められています。特に、子どもは冷えた部屋にばかりいると汗腺が退化し、体温調整機能が適切に働かなくなる懸念もある点に注意が必要です。
夏季は電気代の内訳がエアコンに偏りがちであるため、エアコンにかかる費用をいかに節約するかが重要となります。まずは服装を見直して設定温度を28℃付近に固定し、熱中症を患わないよう注意を払いつつ節電することを推奨します。
また、夏場は食材の保冷が必要となるため冷蔵庫にものを詰め込みがちですが、常温でも保存できるものは庫内から取り出して別途保管するなど、冷蔵庫内を整理して保冷に必要なエネルギーを最小化する工夫を意識してみてください。
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