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食糧問題

世界中で食糧価格の高騰が問題に。異常気象などが起因。

いま世界各地では食糧価格の高騰が問題となっています。2021年8月時点において、FAO世界食料価格指数は前年同月比で34%近く高い数値となっており、一部地域では小麦粉や食用油が前年より200~400%も上昇しました。

何が原因となり、このような状況を招いているのでしょうか。また、食糧価格の高騰は各国にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。ここでは、異常気象などに起因する食糧問題にフィーチャーし、その背景と食糧問題の解決に向けた取り組みをご説明します。

現代における食糧問題

食料危機対策グローバルネットワークの報告書「Global Report on Food Crises」によると、2020年には少なくとも1億5,500万人が急性食料不安に陥りました。食料不安とは、安定して十分な量の食品にアクセスできない状況のことです。

1億5,500万人という人数は前年より2,000万人ほど増加した数値であり、同報告書の第1版が公表された2017年から上昇を続けています。食糧問題の具体的な背景は後述しますが、今回の食料不安は主に「食糧価格の高騰」と「コロナ禍における収入減」が重なることで起こっています。

どのくらい食糧価格は高騰しているのか

2021年8月時点において、国連食糧農業機関(FAO)が公開するFAO世界食料価格指数(FAO Food Price Index)は127となっており、これは前年同月比で34%近く高い数値でした。食品ごとの上昇幅は以下のようになっており、これらの高騰が食糧問題の一因になっていると考えられます。

項目2021年8月における各項目の指数
Meat(肉)112.5(前年同月比:22%上昇)
Dairy(乳製品)116.0(前年同月比:13%上昇)
Cereals(穀物)129.8(前年同月比:31%上昇)
Vegetables Oils(植物油)165.7(前年同月比:67%上昇)
Sugar(砂糖)120.1(前年同月比:47%上昇)

※前年同月比はすべて小数点以下を切り捨てて表記

2020年に上昇を続けた食料価格指数は2021年6~7月にいったん落ち着きを見せたものの、8月に再び上昇傾向に戻ったことから、さらなる食糧問題の深刻化が懸念されます。

より大きな変動幅が観測される地域もあり、国連WFPの最新データによるとレバノンでは2021年3~5月における小麦粉の平均価格が前年同月比219%、シリアでは食用油が440%の高騰を引き起こしているようです。

食糧価格が高騰する理由・背景

食糧価格の高騰は、以下が要因となって引き起こされます。

  • 異常気象(気候変動)
  • バイオ燃料化
  • 原油価格の高騰
  • 人口増加
  • 急激な経済成長

複合的に関係し、食糧価格の高騰を招くこれらの要因をそれぞれ解説していきます。

異常気象(気候変動)

台風や豪雨、気温上昇による干ばつなどの異常気象は、作物の生産量を低減させます。

異常気象による食糧問題の象徴ともいえる出来事は、いままさにマダガスカル南部で起こっています。マダガスカル南部では直近数年のあいだ干ばつが続いており、不作による飢饉が起こっているのです。

同地域では最大80%の人々がイナゴ・生のサボテンの実・野生の葉などを食べ、飢えをしのいでいる状況とのこと。国連WFPはこの状況を「戦争や紛争によるものではなく、気候変動によるもの」としてその異常性に言及し、気候変動による飢饉に目を向け行動を起こすよう世界に呼びかけています。

バイオ燃料化

二酸化炭素排出量を削減できる新エネルギーとして注目されるバイオ燃料は、主な原料として穀物を使用しています。原料にはトウモロコシやサトウキビなど、私たちが直接食糧としたり家畜の飼料としたりする穀物が用いられるため、バイオ燃料の使用が盛んになるほど食糧と競合する性質を持っているのです。

そのため、バイオ燃料の生産量増加は食糧価格高騰の一因となります。

原油価格の高騰

原油価格が高騰すれば食糧の輸送コストが上がるため、結果として食糧価格も高騰します。

また原油価格が高騰すれば、原油の代替品となるエタノールの需要が高まります。そのため、原油価格の高騰に合わせて穀物はバイオエタノールの生産に充てられることになり、食糧としての流通がひっ迫して食糧価格の高騰を招くのです。

人口増加

食糧問題が起こる要因の1つとして、目まぐるしく世界人口が増加していることが挙げられます。

また、国際連合広報センターのプレスリリース「世界人口推計2019年版:要旨 10の主要な調査結果(日本語訳)」によると、2050年までに世界人口は100億人近くまで増加する見込みです。

この人数の食糧をカバーするためには、2013年比で50%ほど農作物を増産しなければなりません。さらに、人口増加にともない利用される燃料量も増えるため、バイオ燃料生産のための原材料も確保する必要があるでしょう。にもかかわらず、農作物の栽培に使える土地面積は伸び悩んでいるのです。

人口増加と食糧供給の関係性はいまに指摘されはじめた問題ではありませんが、食糧問題の深刻化を招いた根底にある要素の1つであることは明らかです。

急激な経済成長

多くの途上国が経済成長を迎えるなか、途上国における食生活には変化が起こっています。

従来の雑穀・芋類・豆類を中心とした食生活から、所得増加にともない途上国における食生活も肉食に変わりはじめました。肉食を選ぶ人口の増加により、食肉を確保するために家畜を多く育てる必要性が高まり、飼料用穀物の需要が高まっているのです。

しかし、飼料用穀物のなかには人間の食糧とできる農作物も含まれるため、これが「家畜を育てるための飼料用穀物」と「人間の食糧としての穀物」の需要の競合を招いています。飼料用穀物をトウモロコシで考えると、牛肉や豚肉などの畜産物を1kg生産するために以下の穀物量が必要です。

食料問題の現状と課題

出典:農林水産省「我が国における食料問題の現状と課題」

主な食肉を生産するために4~11kgのトウモロコシを要することから、穀物中心の食生活から肉食に移行することで増える、新たな穀物需要がどれほど大きな規模なのかイメージできます。

これに加えて、前述したバイオ燃料の普及にともなう穀物需要の高まりが重なるため、需要と供給の不一致がより顕著となり食糧価格の高騰につながるのです。

食糧価格高騰が与える影響

食糧価格の高騰は、各地で飢餓やデモ・暴動などの問題を引き起こしてきました。これらの深刻な問題は主に途上国で起こりますが、私たち日本にも影響はあります。

ここでは飢餓やデモ・暴動の実状、ならびに食糧価格高騰がもたらす日本への影響について解説します。

西アフリカでは飢餓が3割拡大

食糧価格の高騰により、途上国の低所得層は「販売されている食糧を購入できない」という事態が起こっています。国連WFPによると何百万人もの家庭が基本的な食事を手に入れられず、飢餓水準は前年度比で30%悪化し、過去10年でもっとも悪い数値になっているとのことです。

キューバではデモ・暴動により死者や行方不明者が発生

コロナ禍において、話題となった大規模なデモ・暴動の1つはキューバで起こっているものです。2021年7月、キューバでは食糧不足や感染症に対する対応への不満から、政府の許可を得ていない大規模な反政府デモがありました。このデモにより7月13日時点で1人の死者が確認されており、行方不明者も100人以上となった模様です。

キューバ政府はデモ情報の拡散を防ぐためかSNSへの接続を制限したものの、制限をかいくぐりデモ関連の動画が多くアップロードされました。市民がパトカーを倒したり、国営店舗を対象に略奪を行ったりなどの行為が共有されており、その様子から市民が抱く不満の大きさが読み取れます。

食糧価格高騰が私たちにもたらす影響

日本の場合、支出の大半を食費に充てている世帯は少ないため、食糧価格の高騰が与える日常生活への影響は途上国に比べると限定的です。しかし、コロナ禍で収入が減少している世帯にとって、日常的に購入する食材の値上がりは家計を圧迫する原因になります。

これらの問題による事態の深刻度は、感染症流行と世界的な食糧高騰がどのくらい長期化するかに左右されるでしょう。当然ながら、それぞれの問題が長期化するほど、より多くの世帯が苦しい状況を強いられることになります。途上国に比べて影響は限定的といっても、決して無縁の出来事ではないため引き続き注目すべきです。

食糧の安定調達に向けて

食糧の安定調達に向けて、各地域がそれぞれに対応を講じています。ここでは日本国内における施策に着目し、どのような動向が見られるのか解説します。

新バイオ燃料の開発

バイオ燃料は生産に穀物類を使用するため、燃料生産が食糧問題の原因になることが危惧されてきました。飢餓問題を差し置いて燃料生産が行われる状況から脱却するため、食糧と競合しない非可食部を利用した「第2世代」、さらにジェット燃料の代替として機能する「第3世代」の開発が進められています。

農業生産力の強化

農業生産力の強化、ならびに持続性の両立を目的として、日本では2021年5月に「みどりの食料システム戦略」が策定されました。以下は、みどりの食料システム戦略が「2050年までに目指す姿」として掲げる方向性と取り組みの一部です。

  • 化学農薬の使用量(リスク換算)を50%低減
  • 輸入原料・化石燃料由来の化学肥料使用量を30%低減
  • 耕地面積における有機農業の面積を25%(100万ha)に拡大
  • 2030年までに食品製造業の労働生産性を3割向上(2018年基準)

また農業生産力の強化のみならず、環境保全や林業・漁業等の観点からも具体的な目標を掲げており、日本国内の食糧供給において重要な役割を担う戦略となることが期待されます。

食品ロスの削減

食べられる食品であるにもかかわらず廃棄される「食品ロス」の解消は、主に先進国の課題となっています。

2021年に公表された食品ロス量(平成30年度推計値)によると、2018年の食品ロスは前年度比で2%マイナスとなりました。しかし、なお600万トンの食品ロスが発生していることから、より積極的な食品ロスの解消が不可欠です。

日本国内で実施されている食品ロス削減の主な取り組みとしては、フードバンク活動や飲食店による啓発活動が挙げられます。

フードバンクとは、食べられる食品でありながら商品として扱えない食糧を引き取り、食事を必要とする人々へ無償で届ける活動です。会員やボランティアスタッフが中心となり、福祉施設・子ども食堂・共同生活ホームなどに食品が届けられることで、廃棄される食糧と満足に食事を取れない人を結び付けています。

飲食店による啓発活動は自治体との協力によって行われている例も多く、たとえば京都市では「京都市食べ残しゼロ推進店舗」、福井県では「おいしいふくい食べきり運動協力店」といった活動に1,000以上の店舗が参加しています。

備蓄

食糧生産量の減少や外部からの供給途絶に対応できるよう、日本では食糧の備蓄が行われています。農林水産省の情報によると、令和元年度における農産物備蓄の状況は以下の通りです。

  • 政府備蓄米を100万トン程度
  • 食糧用小麦を外国産小麦の需要量の2~3か月分
  • 飼料穀物を100万トン程度(民間備蓄)

また、上記の備蓄を消費するような緊急事態下において、その緊急度と対策を講じるための指針となる「緊急事態食料安全保障指針」が策定されています。

おわりに

世界各地では、異常気象をはじめとする複数の要因によって食糧問題が深刻化しています。いまのところ日本への影響は限定的ですが、すでに途上国の貧しい世帯では十分な食事が得られず苦しい思いをしているのです。

この不合理な状況は途上国だけの問題ではなく、世界全体で考え解決していくべき事案です。まずは世界の現状を把握し、小さくても実践できることから取り組んでみませんか?

EnergyShift編集部
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