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レアメタル

脱炭素化に向けて安定調達したい「レアメタル」とは

2021年10月22日

レアメタルという用語はよく耳にしますが、いざ「レアメタルはどのような素材ですか?」と聞かれても回答できないものです。しかし、脱炭素化を実現するうえで重要となる電気自動車や蓄電池に不可欠な存在であり、身近なところではすでにスマートフォン・パソコン・冷蔵庫・洗濯機などに使われています。

ここでは、脱炭素化と密接に関係するレアメタルについてご説明します。レアメタルとはどのような素材なのか、なぜレアメタルの安定確保が重要視されているのか、重要ポイントを順に確認していきましょう。

レアメタルの定義

レアメタルに世界共通の定義はありませんが、日本では一般的に「存在する量が少ない、または技術的・経済的な理由により希少性の高い非鉄金属」のうち、工業需要があり安定供給が重要なものをレアメタルと定義します。

2021年現在、定義の対象となる非鉄金属は以下の31種類です。

レアメタルに分類される非鉄金属
リチウム(Li)ベリリウム(Be)ホウ素(B)希土類(レアアース)
チタン(Ti)バナジウム(V)クロム(Cr)マンガン(Mn)
コバルト(Co)ニッケル(Ni)ガリウム(Ga)ゲルマニウム(Ge)
セレン(Se)ルビジウム(Rb)ストロンチウム(Sr)ジルコニウム(Zr)
ニオブ(Nb)モリブデン(Mo)パラジウム(Pd)>インジウム(In)
アンチモン(Sb)テルル(Te)セシウム(Cs)バリウム(Ba)
ハフニウム(Hf)タンタル(Ta)タングステン(W)レニウム(Re)
白金(Pt)タリウム(Tl)ビスマス(Bi) 

レアメタルのうち、希土類に分類される17種類は「レアアース」と呼ばれています。

レアメタルの産出国ランキング

米国地質調査所(USGS)が公開する「MINERAL COMMODITY SUMMARIES 2021」によると、レアメタルの産出国ランキングは以下のようになっています。なお、公式情報源がない項目は「-」としています。

レアメタル産出国ランキング
リチウム(Li)1位:オーストラリア、2位:チリ、3位:中国
ベリリウム(Be)1位:アメリカ、2位:中国、3位:モザンビーク
ホウ素(B)1位:トルコ、2位:チリ、3位:中国
希土類(レアアース)1位:中国、2位:アメリカ、3位:ミャンマー
チタン(Ti)1位:中国、2位:南アフリカ、3位:カナダ(イルメナイト)
1位:オーストラリア、2位:シエラレオネ、3位:南アフリカ(ルチル)
バナジウム(V)1位:中国、2位:ロシア、3位:南アフリカ
クロム(Cr)1位:南アフリカ、2位:カザフスタン、3位:トルコ
マンガン(Mn)1位:南アフリカ、2位:オーストラリア、3位:ガボン
コバルト(Co)1位:コンゴ民主共和国、2位:ロシア、3位:オーストラリア
ニッケル(Ni)1位:インドネシア、2位:フィリピン、3位:ロシア
ガリウム(Ga)1位:中国、2位:ウクライナ、3位:日本・韓国
ゲルマニウム(Ge)1位:中国、2位:ロシア、3位:その他
セレン(Se)1位:中国、2位:日本、3位:ドイツ
ルビジウム(Rb)
ストロンチウム(Sr)1位:スペイン、2位:中国、3位:メキシコ
ジルコニウム(Zr)
ハフニウム(Hf)
1位:オーストラリア、2位:南アフリカ、3位:中国
ニオブ(Nb)1位:ブラジル、2位:カナダ、3位:その他
モリブデン(Mo)1位:中国、2位:チリ、3位:アメリカ
インジウム(In)1位:中国、2位:韓国、3位:日本
アンチモン(Sb)1位:中国、2位:ロシア、3位:タジキスタン
テルル(Te)1位:中国、2位:ロシア・日本、3位:スウェーデン
セシウム(Cs)
バリウム(Ba)1位:中国、2位:インド、3位:モロッコ
タンタル(Ta)1位:コンゴ民主共和国、2位:ブラジル、3位:ルワンダ
タングステン(W)1位:中国、2位:ベトナム、3位:ロシア
レニウム(Re)1位:チリ、2位:ポーランド、3位:アメリカ
プラチナ(Pt)1位:南アフリカ、2位:ロシア、3位:ジンバブエ
タリウム(Tl)
ビスマス(Bi)1位:中国、2位:ラオス、3位:韓国

参考:USGS 「MINERAL COMMODITY SUMMARIES 2021」

複数の鉱種で産出国ランキング上位に入っている国が見られ、レアメタルの産出には地域的な偏りがあることを読み取れます。なかでも中国は多くのレアメタルを産出しており、とくにレアアースに関しては中国が市場の大部分を担っているのが現状です。

レアメタルの需要増大

デジタル機器や家電などの生活必需品に使われるレアメタルは、すでに私たちにとって不可欠な存在ですが、今後さらに活用場面が増えるため需要は増加の一途をたどると予想されています。

いま現代社会には「脱炭素化」が求められています。脱炭素化を実現するためには、実質的な温室効果ガスの排出量をゼロにしなければなりません。その際、電気自動車や蓄電池といった機器が不可欠となるのですが、これらの生産にもレアメタルが必要なのです。

日本に立ちはだかるレアメタル問題

「レアメタルの産出国ランキング」の章からも読み取れるように、レアメタルの産出国には偏りがあります。1つの国が9割以上のシェアを有しているケースもあり、非鉄金属の種類によっては寡占状態が起こっているのです。

このような状況のなか、現状日本はレアメタル供給を海外輸入に頼っていますが、これは好ましい状況とはいえません。希少性の高いレアメタルは価格変動が大きいため、世界の需給状況によって資源獲得に多大なコストを要する可能性と隣り合わせだからです。

さらに、この先もレアメタルの需要は高まる一方と予測されるため、近い将来に資源獲得の競争へ巻き込まれる未来が懸念されます。

安定調達に向けた戦略とは

レアメタルを安定的に調達するため、日本は主に以下の戦略を講じています。

  • 海外資源確保の強化
  • レアメタルの備蓄
  • 代替材料・省電力化の技術開発
  • リサイクル推進
  • 排他的経済水域(EZZ)でのレアメタル採掘

海外資源確保の強化

レアメタルの産出国による輸出規制や増税は、日本のような海外輸入に依存する国にとって打撃を与えます。このような事態への対策として、日本はレアメタルの供給体制を強固なものとするために資源国の関係強化・多角化を行っています。

レアメタルの備蓄

レアメタルの短期的な供給途絶への対策として、設定した国内基準消費量にもとづいてレアメタルを備蓄しています。国内基準消費量の60日分を目標量として、国家備蓄・民間備蓄により指定鉱種を安定確保できる体制が構築されています。

代替材料・省電力化の技術開発

全世界におけるレアメタルの需給状況が安定しない以上、取引価格は変動しやすく経済的なリスクは解消されません。そのため、レアメタルの代替材料や省資源化に関する技術開発が進められてきました。

追跡調査が行われている直近の助成事例としては、2008~2015年度に実施された「希少金属代替省エネ材料開発プロジェクト」が挙げられます。124億円の総予算額を設けた同プロジェクトでは、37社が助成対象となり5社が上市(市場に進出)、7社が製品化を実現させておりレアメタル市場に貢献を果たしています。

リサイクル推進

流通量が乏しいレアメタルを無駄なく利用するためには、リサイクルの推進も重要事項となります。廃棄されるデジタル機器や家電などからレアメタルを回収し、鉱物資源を再利用することでレアメタルの輸入量を抑えられるからです。

日本ではリサイクルの難度や需要予測をもとに、レアメタル3種類・レアアース2種類を「リサイクル優先5鉱種」と指定し、再利用を推進しています。

排他的経済水域(EZZ)でのレアメタル採掘

2020年7月、日本の排他的経済水域にあたる南鳥島南方で、コバルト・ニッケルなどの金属を含む「コバルトリッチクラスト」の掘削試験が成功しました。石油天然ガス・金属鉱物資源機構の調査によると、国内年間消費量の約88年分に相当するコバルト、約12年分に相当するニッケルが存在すると見込まれています。

コバルトは電気自動車や蓄電池に使われるリチウムイオン電池の原料であり、現状では確保を海外輸入に依存しているため、コバルトリッチクラストの掘削によるレアメタルの安定確保が期待されます。

レアメタルの再利用を後押しする企業

レアメタルの再利用に注力している日本企業と、各企業による取り組みの一部をご紹介します。

住友金属鉱山株式会社

住友金属鉱山株式会社は、2021年に使用済み二次電池(リチウムイオン電池など)からニッケル・コバルトを回収し、高純度化することでリチウムイオン電池用正極材の原料として再利用できることを実証しました。

同社の技術により、回収後のニッケル・コバルト混合液原料から作られたリチウムイオン電池用正極材は、天然資源由来の既存原料から製造したものと同等の電池性能であると実証されています。

日立金属株式会社

鋼鉄メーカーである日立金属株式会社は、レアアースを回収する「炭素熱還元法」を開発し、2016年に一般社団法人産業環境管理協会から「資源循環技術・システム表彰(レアメタルリサイクル賞)」を授与されています。

炭素熱還元法により、従来のアルカリを多量に使った方法(湿式法)よりも環境負荷を抑えつつ、レアアースの効率的な回収が可能となりました。

日本重化学工業株式会社・本田技研工業株式会社

重化学工業メーカーである日本重化学工業株式会社、および自動車メーカーである本田技研工業株式会社は、2015~2016年度にかけて「リチウムイオン電池の高度リサイクル」を実施。その成果が評価されて、2018年に資源循環技術・システム表彰(レアメタルリサイクル賞)を共同受賞しています。

両社により確立されたリサイクル法は、従来法が抱えていた煩雑かつ高コストである課題を解消し、焼却工程を必要としないため処理設備を小型化できるといった点で優れています。

おわりに

レアメタルは電気自動車や蓄電池の必要素材となることから、世界的に掲げられている「脱炭素社会の実現」という目標の達成に不可欠な存在です。ただし日本はレアメタルを輸入に頼っているため、今後は輸入先の分散・レアメタルの再利用が重要となります。

私たちにできる取り組みは多くありませんが、レアメタルが含まれるデジタル機器を適切なリサイクル先に回収してもらうなど、現実的なアクションの実践を検討してみてください。

EnergyShift編集部
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